ナタリー PowerPush - sleepy.ab

2年半ぶりアルバムでやんわり攻撃開始 4人が紡ぐ“眠れるロック”の最新型

メジャー移籍が決まったのは制作が終わってから

──今回、新機軸を打ち出そうという考えがあったとのことですが、それは、結成10周年を迎えたこと以外に、メジャーへ移籍するからという気負いもありましたか?

田中 いや……。

成山 制作が始まった時点ではそういう感じではなかったですね。

インタビュー写真

──では、メジャー移籍の話はいつ頃決まったんですか?

田中 CDを作った後ですね。

──そうなんですか。じゃあ、このタイミングでメジャーというのは関係ないんですね。

山内 関係ないといえば、関係ないですね。

津波 まったく気にしてなかったです。

成山 札幌在住であることや、制作の仕方がこの後も変わるわけではないので。ただ、聴いてくれる人が増えるだろうから、それはすごく単純にうれしいですね。

リーダーがいないから、みんなで考えることで形が見えてくる

──それぞれバックグラウンドや、聴いてきた音楽、好きなミュージシャンが違う4人ですが、自分たちで「なんでこいつらと一緒にやってるんだろう」って感じることはありますか?

田中 そんなにないですね。

津波 演奏面ではないですね(笑)。

──演奏面では?

一同 (笑)

山内 アレンジを考えるとき、「こうだろうなぁ」って自分が持ってたイメージが、人に頼むと変わるのが面白いんです。今回だと、音を入れたファイルを送って返ってきたときに「ここにこういうフレーズを入れるんだ」とか、意外なこともあって。

成山 「そうきたか!」みたいなね。

山内 うん、そういうのがうれしいし。例えば「ドラムは多分こういう感じで入れるんだろうな」っていうイメージがあっても、あえてそれを入れないでファイルを渡したりするんですよ。「ベースが入ってくるとこういう風になるのか、じゃあ自分もギターのフレーズを変えてみようかな」とか、どんどん展開していく感じが面白かったです。

──プリプロの段階では、それぞれバラバラに作業してるんですか?

山内 今はだいたい成山から歌とボーカルが入ったファイルが来て。

田中 歌とボーカルは同じもんだよ?

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山内 あ、そっか(笑)。歌とギターが入ったファイルですね。で、それに基本的な和音感とかをどんどん入れていって、じゃあドラムとベース入れてみようとか。そういう状態になったらみんなに渡すんですけど、それで何周かしてどんどん形が変わっていくというか、整えられていくんです。

成山 それも、発信が誰からかで全く違うんですよね。僕始まりがオーソドックスなんですけど、ドラムから始まった曲に対してとか、ギターの雰囲気だったりフレーズから始まった曲に対してとか、順番によってすごくバリエーションが出てくる。そこが面白かったですね。

津波 成山が作る曲だと、成山自身が歌を作ってメロディが決まってくる。A、B、Cだったりサビだったり。その核となる歌に対して僕らがアレンジしていくって感じなんですけど、僕発信だとドラムとベースだけこんな感じでやりたいと。で、みんなで一緒にセッションして、こんな感じにしたいって口で説明して、家で練って個々で送ってきて、みたいに進めるんです。

──きっと曲を作った人の個性がにじむんでしょうね。

成山 みんな曲が作れるので、そこはもっと出していきたいなと。

津波 僕ら、リーダーがいないんですよ。バンドをこういう方向にしたいとか、アルバムをこうしたいって決める人がいないというか。例えば、曲を作ってる段階でも、みんなで考えてみることでなんとなく形が見えてくる。こういう方向にしようってあまり決めないでいることで「あれ? こんな風になっちゃったね」みたいなうれしい誤算があるんですよね。それが僕らの特徴でもあるのかなと。

ニューアルバム『paratroop』 / 2009年11月25日発売 / 2100円(税込) / PONY CANYON/ROCKER ROOM / PCCA-03041

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CD収録曲
  1. ダイバー
  2. メロウ
  3. ドレミ
  4. ナハト・ムジィク
  5. unknown
  6. アクアリウム (album extended)
  7. さかなになって
  8. flee
  9. インソムニア
  10. メトロノーム
  11. mori

※表示価格は2010年2月出荷分までのスペシャルプライス

sleepy.ab(すりーぴー)

アーティスト写真

札幌を拠点に活動する、成山剛(Vo,G)、山内憲介(G)、田中秀幸(B)、津波秀樹(Dr)の4人からなるバンド。抽象的で曖昧なことを示す接頭語「ab」が示すように、やわらかく浮遊感あふれる音楽で多くのリスナーを魅了。その独特の音楽性はアーティストからの支持も高く、草野マサムネ(スピッツ)、山口一郎(サカナクション)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)らもファンを公言している。
1998年に音楽専門学校の仲間で結成され、2002年に1stアルバム「face the music」でインディーズデビュー。その後もライブ活動と並行してリリースを重ね、2008年2月にそれまでのバンドの集大成となる初のベストアルバム「archive」を発表した。2009年にポニーキャニオンに移籍し、同年11月にアルバム「paratroop」をリリース。