ナタリー PowerPush - sleepy.ab

2年半ぶりアルバムでやんわり攻撃開始 4人が紡ぐ“眠れるロック”の最新型

sleepy.abが5枚目のフルアルバム「paratroop」を11月25日にリリースする。結成10年目の2008年にベストアルバム「archive」を発表し、それまでの活動に明示的に一区切りをつけた彼ら。満を持して完成した新作には、メンバー4人で1つひとつ丁寧に作り上げた11曲が詰め込まれている。また、今作からメジャーレーベルへ移籍。異なる環境に移り、さらなる活躍が期待されている。

ナタリーではこれを記念して、成山剛(Vo, G)、山内憲介(G)、田中秀幸(B, Cho)、津波秀樹(Dr, Cho)にインタビューを実施。現在も北海道・札幌市を拠点に活動を続ける彼らに、新作を作り上げていく過程について話を訊いた。冬の広大な大地を思わせる、きらきらしたアルバムを聴くお供にしてほしい。

取材・文/野口理香 撮影/中西求

1曲できるごとにパズルがどんどんハマっていった

──オリジナル作品としては間が空きましたね。その間ベスト盤やライブ盤はリリースされてましたが。

成山 はい、2年半ぶりくらいですね。オリジナルとしてはひさびさだなという感じはしてます。

──間を空けたのはなぜでしょう?

成山 そうですね……。アルバムをどこから始めようか、とか、そういうものも含めてなかなかできなかったんです。どういう風に作ろうかとか。去年、結成10周年で「archive」っていうベストアルバムを出して、その後第2期sleepy.abへみたいなつもりでいたんですけど。

──「archive」を出されたのは、次が見えてきたから一区切りをつけようというわけではなかったんですか?

インタビュー写真

成山 なかったですね。自分に対してプレッシャーをかけるというか、1回まとめるという意味で出しました。次に何をやるかは決まってないけど、こう、プレッシャーを与えて次のステップへ行こう、と。

──では、このアルバムは次に鳴らしたい音を模索しながら制作してた?

成山 うん、なかなかテーマみたいなものを見つけられなくて。テーマを探してるうちに迷宮に迷い込んじゃった感じなんです。今までは特にテーマを決めないで曲を作ってて、テーマは後から見つかるものだったなって今ならわかるんですけど、そのときはすごく迷ってて、そういう入り口を見つけられなかった。それで時間がかかったっていうのもあるんです。

──入り口はどうやって見つけたんですか?

成山 今回のアルバムは、曲ができるごとにパズルがどんどんハマっていったっていう経緯があるんです。1曲目にできたのが「アクアリウム」っていう曲で。次に「さかなになって」っていう曲ができたときに、海みたいなイメージが見えた。さらにそこに付随して、例えば「アクアリウム」っていう曲だったら、海の中だと思ってたら実は水槽だったみたいな、そういうトリックみたいなイメージが浮かんで。水槽があって、部屋があって、外の世界があってっていうマトリョーシカみたいな迷宮があって。けど、デカイ世界は水槽だったっていうトリック。そういうものが生まれてきて、だんだん広がっていったんですよね、世界が。

クラゲが海に浮かんでるパラシュートみたいに見えて

──では、その初めの鍵になった「アクアリウム」ができたきっかけを教えてください。

成山 曲自体はアコースティック的な感じで作っていったんです。それはいつもの作り方と同じなんですけど、今回は新しいステップっていう意識も4人の中にあったので、音を入れていくうちに、違うエッセンスとしてすごく激しくおおげさに音を鳴らしてみようみたいな気持ちもできて。その中でバランスのいいところを見つけながら作っていきました。

──印象的な楽曲ですよね。ライナーノーツにも「男気的力強さで」って書いてありますけど。

一同 あはははは(笑)。

成山 そんなこと書いてあるんだ。

田中 でも、確かにそうですね。「アクアリウム」は、浮遊感とか歌メロとかギターのほわんとした感じもあるんですけど、それだと今までどおりになっちゃうし。ぱっと思いつく感じで演奏すると普通のゆったりしたドラムだったりベースだったりになるんですけど、それだと新しい挑戦にならないし。男気をね。

成山 もともと僕らの背景にあるジャンルがバラバラなんですよ。メタルだったりファンクだったり、フォークも好きだったりして。曲に表れた、そういう力強さみたいなものも俺たちはあるし。そういうところをもっと出しても新しい形になるんじゃないかなって。

インタビュー写真

津波 例えば「インソムニア」という曲だったら、今までであればこういうロックっぽいアレンジをしなかったんですけど、今回はあえて70年代ロックを意識したようなリズムパターンを考えたりしましたね。

──なるほど。ちなみに、アルバムタイトルの「paratroop」とは「落下傘部隊」って意味だそうですが、どなたがつけたんですか?

成山 えっと、僕っすね。

──その心は?

成山 もともと「アクアリウム」を配信シングルとして出したときのジャケットがクラゲだったんですけど、そのクラゲが海に浮かんでるパラシュートみたいに見えて。その後「ダイバー」っていう曲ができて「降下する」っていうイメージがわいたんです。それから、俺たち北海道にいるから、ツアーを回ると南下することになるんで、そういうのも含めて落下傘部隊って言ってるんです。だから、上陸作戦的な意味で(笑)。やんわり攻撃開始って感じですね。

ニューアルバム『paratroop』 / 2009年11月25日発売 / 2100円(税込) / PONY CANYON/ROCKER ROOM / PCCA-03041

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CD収録曲
  1. ダイバー
  2. メロウ
  3. ドレミ
  4. ナハト・ムジィク
  5. unknown
  6. アクアリウム (album extended)
  7. さかなになって
  8. flee
  9. インソムニア
  10. メトロノーム
  11. mori

※表示価格は2010年2月出荷分までのスペシャルプライス

sleepy.ab(すりーぴー)

アーティスト写真

札幌を拠点に活動する、成山剛(Vo,G)、山内憲介(G)、田中秀幸(B)、津波秀樹(Dr)の4人からなるバンド。抽象的で曖昧なことを示す接頭語「ab」が示すように、やわらかく浮遊感あふれる音楽で多くのリスナーを魅了。その独特の音楽性はアーティストからの支持も高く、草野マサムネ(スピッツ)、山口一郎(サカナクション)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)らもファンを公言している。
1998年に音楽専門学校の仲間で結成され、2002年に1stアルバム「face the music」でインディーズデビュー。その後もライブ活動と並行してリリースを重ね、2008年2月にそれまでのバンドの集大成となる初のベストアルバム「archive」を発表した。2009年にポニーキャニオンに移籍し、同年11月にアルバム「paratroop」をリリース。