澤部渡のソロプロジェクト・スカートがメジャーデビューアルバム「20/20」をリリースした。
2010年12月に1stアルバム「エス・オー・エス」を発表して以来、DIYな活動でコンスタントに音源を発表し続けてきたスカート。メジャー初作品となる今作にはテレビ東京系「山田孝之のカンヌ映画祭」のエンディング曲「ランプトン」や、映画「PARKS」の挿入歌「離れて暮らす二人のために」といったタイアップソングのほか、澤部がキャリア初期の頃に作った楽曲「魔女」など計11曲が収められている。
音楽ナタリーではスカートのメジャーデビューを記念して、澤部と藤井隆の対談をセッティング。藤井の主催イベント「Youth Banquet!!!」で共演したり、スカートが藤井に楽曲提供したりするなど交流を深めている両者に、お互いの出会いのきっかけや新作「20/20」にまつわるトーク、またそれぞれの魅力について語り合ってもらった。
取材・文 / 松永良平 撮影 / 南阿沙美
河原で立ってる青年がすっごい印象に残った
──澤部くんと藤井さんの最近の熱い交流についてはスカートのファンはよくご存知かと思うんですが、改めて2人の関係がどう始まったのか紐解いていきたいと思います。まずは澤部くんにお聞きしますが、藤井隆さんの存在をどういうふうに見てましたか?
澤部渡 僕の世代だと、知った時点ですでに最初から“テレビに出てる人”でした。
藤井隆 澤部さん、おいくつでしたっけ?
澤部 今29歳です。
藤井 くー(笑)。
澤部 藤井さんはテレビで観ていても存在感が特異でした。めちゃくちゃ破天荒なんだけれども上品さがあったし、子供心に直感で「この人は何かおかしい」みたいなものを感じて惹かれてましたね。さらに、ミュージシャンとしても松本隆さんや筒美京平さん、キリンジの堀込高樹さんと一緒に音楽をやってるのを見て、「やっぱりこの人何かが違う!」という思いがさらに強まりました。
──とは言え、その思いはずっと片思いでしかなかったわけですよね。そこで青天の霹靂と言うか、2人が舞台の上で遭遇するタイミングが訪れるわけですが、そこをつないだのはtofubeatsさんということになりますか?
澤部 そうです。2015年の12月にtofubeatsくんのイベント(2015年12月に行われた「藤井隆 “AUDIO VISUAL” & tofubeats “POSITIVE”after party!」)でご一緒しました。
藤井 澤部さんをつないでいただいた存在としてはtofuさんもそうですし、あと「申し訳ないと」のDJミッシェル・ソーリーさんですね。あの方が澤部さんにすごい注目されてて。「自分がこういうイベントをしたいです」っていう話をしたときに、「絶対(澤部は)いいですよ」って教えてくださったことがありました。あと、別のタイミングでtofuさんのMV(「No.1」)に澤部さんがワンカットだけご出演されてたのを観ていて。河原で立ってる青年がすっごい印象に残ったんですよ。
──その青年が目の前に現れた(笑)。
藤井 さらに「ミュージックステーション」への出演(2016年4月、スピッツ「みなと」のバックに口笛とタンバリンで出演)があった。そのそれぞれの衝撃が短い期間にあったんで、もう澤部さんに夢中になりました。
澤部 本当にあっという間だったんですよ。そこから矢のようにカラオケのイベント(2016年6月に行われたイベント「Youth Banquet!!!」)に呼ばれて。
藤井 「澤部さんがいいです!」って、もうすごい一途でした。
澤部 ありがとうございます。
いい意味で全部がちぐはぐだった初対面
──MVに登場したのが印象に残ったという話もありましたが、藤井さんは澤部くんの音楽面についてはどう感じていますか?
藤井 まず歌に清潔感がある。もちろん歌詞の中には悲しみがあったりするんですけどね。僕は、映画にしろ本にしろ、救いのないものとかあまり好きじゃないし、音楽は特にそうなんです。澤部さんの曲は、影を持った暗い部分はありながらも救いがあるところがすごく好きですね。
澤部 うれしいです。初めてお会いしたときは、3rdアルバム「ひみつ」をお渡ししました。
藤井 それが、いい意味で全部がちぐはぐだったんですよ。「スカートです。澤部です。CDどうぞ」って、CDを渡されて。澤部くんの見た目、スカートって言葉、かわいいジャケット、そういう全部がちぐはぐ(笑)。でも家に帰って聴かせていただいたら、不思議としっくりきた。すごくそれは覚えてます。
──藤井さんの主催イベント「Youth Banquet!!!」は、次から次にその場で藤井さんや桂三度さん、黒沢かずこさんの歌いたい歌に応じてカラオケをギターで弾くという、かなりハードルの高い現場だったと思うんです。藤井さんから見て、澤部くんに「この人だったらなんでも対応できそうだ」という印象があったんでしょうか?
藤井 そこは自分を褒めてあげたいんですけど、やっぱり僕はそこの勘がすごいんですね。「この人絶対すごい」とか「この人好き」って思う人に対して、自分の勘があんまり外れることないんですよ。僕は、自分が好きな人は歳下だろうが自分と絶対に同等だと思ってるんですね。でもスケジュールをもらうときはちょっと大きい顔をしています(笑)。
澤部 「次は岡山でお願いします」とかでしたね(笑)。
藤井 あと「魚食べなさい」とかね。そういうところは先輩風吹かしちゃうんですけどね、先に生まれた特権で。
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澤部くんは顔
- スカート「20/20」
- 2017年10月18日発売 / ポニーキャニオン
-
[CD]
2808円 / PCCA-4583
- 収録曲
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- 離れて暮らす二人のために
- 視界良好
- パラシュート
- 手の鳴る方へ急げ
- オータムリーヴス
- わたしのまち
- さよなら!さよなら!
- 私の好きな青
- ランプトン
- 魔女
- 静かな夜がいい
- 藤井隆「light showers」
- 2017年9月13日発売 / SLENDERIE RECORD
-
[CD]
3000円 / YRCN-95284
- 収録曲
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- Going back to myself~再生のリズム~
- mode in the end
- DARK NIGHT
- AIR LOVER
- 守ってみたい
- くちばしは黄色
- 踊りたい
- カサノバとエンジェル
- ドライバー
- プラスティック・スター
- スカート
- シンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト。昭和音楽大学卒業時よりスカート名義での音楽活動を始め、2010年12月に自主制作による1stアルバム「エス・オー・エス」をリリースした。以降もセルフプロデュースによる作品をコンスタントに制作し、2014年12月にはアナログ12inchシングル「シリウス」をカクバリズムより発表。2016年4月にはカクバリズムよりオリジナルアルバム「CALL」、11月には初のCDシングル「静かな夜がいい」を発売した。2017年8月にはロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演を果たす。同年10月、ポニーキャニオンよりメジャーデビューアルバム「20/20」をリリースした。澤部はスカートでの活動のほか、ギター、ベース、ドラム、サックス、タンバリンなど多彩な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしても活躍しており、yes, mama ok?、川本真琴ほか多数のアーティストのライブでサポートを務める。またトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴withゴロニャンずには正式メンバーとして所属している。
- 藤井隆(フジイタカシ)
- 1972年3月10日生まれ。1992年に吉本新喜劇オーディションを経て、お笑い芸人として吉本興業入り。2000年にシングル「ナンダカンダ」で歌手デビューし、同年「NHK紅白歌合戦」に初出場する。数々のシングルのほか、2002年発売のアルバム「ロミオ道行」、2004年発売のアルバム「オール バイ マイセルフ」などで高い評価を得ながらも、2007年8月発売のシングル「真夏の夜の夢」以降はしばらくアーティストとしての活動を休止。2013年6月にニューシングル「She is my new town / I just want to hold you」で6年ぶりにアーティスト活動を再開し、2015年6月におよそ11年ぶりとなるオリジナルアルバム「Coffee Bar Cowboy」を自身のレーベル「SLENDERIE RECORD」から発表。2016年8月には早見優21年ぶりの新作「Delicacy of Love」のプロデュースを担当した。2017年7月には藤井隆の楽曲を多彩なクリエイターがリミックスしたアルバム「RE:WIND」、9月には2年3カ月ぶりのオリジナルアルバム「light showers」をリリースしている。