SixTONESドームツアー、「音楽でかかってこれんのかい!」“バイブス”最高潮の東京公演レビュー

SixTONES初の4大ドームツアー「VVS」のライブDVD / Blu-rayがリリースされた。

SixTONESはロックスピリッツあふれる4thアルバム「THE VIBES」を携え行ったこの「VVS」ツアーで、京セラドーム大阪、福岡PayPayドーム(現:みずほPayPayドーム福岡)、バンテリンドーム ナゴヤ、東京ドームにて計10公演に挑み51万5000人を動員。ライブDVD / Blu-rayにはツアーファイナル4月22日の東京ドーム公演の模様が収録されている。

2023年4月に行われたキャリア初の単独ドーム公演「慣声の法則 in DOME」から1年の間、10thシングル「こっから」の大ヒットや結成10年目を迎えるなどさまざまな転機を迎えたSixTONES。そんな出来事を経て彼らが表現したかったエンタテインメントとは? “バイブス”が最高潮に達した千秋楽を振り返る。

文 / 寺島咲菜

デビュー当時からの思いをステージに込めて

いつだって先鋭的なSixTONESのライブに、これまで何度驚かされてきただろう。ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹が“炎の雨”を浴びながら歌い上げた「on eST」(2021年開催)、S字型の巨大な舞台装置“Sカレーター”に乗って登場した「Feel da CITY」(2022年開催)、巨石人頭像のようなオブジェ“フェS”や大胆に改造されたジープで観客の視線をさらった「慣声の法則 in DOME」(2023年開催)──型破りなステージを体験して目の肥えたファンは、常にそれを上回る衝撃をライブに求めるはず。

グループでライブを行う際、特定のメンバーが演出を担うケースも多い。しかし、SixTONESは演出担当を立てずに全員で話し合いを重ね、個々のアイデアをステージに反映させてきたという。6人のイマジネーションがさく裂した「VVS」の目玉となったのは、オーディエンスが360°を囲むセンターステージ。2020年のデビュー当時から実現させたかったという“360°ステージ”が、4年越しに形となってドームに現れた。数万人の視線をあらゆる角度から向けられるプレッシャーは想像をはるかに超えるものだと思う。SixTONESは頭からつま先まで徹頭徹尾アーティストでいることを、自らに課したのだ。

生バンドとの共演も、SixTONESのツアーでは初の試みとなった。「VVS」に主に同行していたのはSixTONESの作品に参加してきた有賀教平(G)、佐々木秀尚(G)、櫻井陸来(B)、髭白健(Dr)、岸田勇気(Key, Bandmaster)。バンドの存在によって「THE VIBES」を貫くロックな世界観をより純度高く再現することに成功した。

SixTONES「VVS」通常盤ジャケット

SixTONES「VVS」通常盤ジャケット

「音楽でぶつかり合う準備はできてんのかい!」「覚悟しろ」

トーチを模した“360°ステージ”はドームの天井に向かってそびえ立っている。そこから6本の花道が延び、先端付近には6つのクレーンがスタンバイ。その名も“ロックレーン”だ。SixTONESが熱心に取り組んできた音楽ジャンル・ロック、グループ名の由来である石を表すロック、構成人数を示す6(ロク)の意味を込めてメンバーが命名した。ロックレーンを介せば、スタンド席にいるファンにも近い距離で歌声を届けることができる。

“バイブス”を高めるオープニングSEと連動して360°ステージに取り付けられたライトが明滅を繰り返し、上部の巨大ビジョンではSixTONESや「VVS」の文字が躍る。これに呼応するように激しく揺れるペンライト。その多くがヘッドフォン型をしているのも「VVS」ならではで、イヤーパッド部分が光る京本発案のツアーグッズだ。SEの終わりには、トーチに聖火が灯るように360°ステージの上部から炎が噴き上がった。バンドメンバーが爆音を鳴らし始め、いよいよSixTONESのお出ましかとステージに視線を注いでいると、ロックレーンにある金属板を張り合わせたような箱が崩壊し、中からメンバーが姿を現した。

1曲目は「THE VIBES」のリード曲である重量感たっぷりのスタジアムロック「アンセム」。彼らは上昇するクレーンの上から5万5000人に向けて「Wow…」とシンガロングを煽り立てる。グループの団結やステージに立つ喜び、ライブ成功への確信を示すように天高く突き上げられた6つの拳。広大なドームに「Take it to the top!」というリリックが響くと、がむしゃらに突き進んできたSixTONESの道のりが思い出され、一層胸打たれるものがあった。デビュー前から歌ってきたの荒々しくノイジーなロックチューン「Rollin'」につなげる展開も心憎い。京本は「明日に向かう 廻る世界」という歌詞を「明日に向かう SixTONESの世界」にアレンジする。演奏隊に絡みながら熱唱する6人の衝動に突き動かされるようなボーカルに客席が大いに沸き立った。その後も「Outrageous」「ABARERO -Dark Electro Rock Remix-」とパワフルなダンスナンバーが続き、6人は肉体の限界を試すかのようにパフォーマンスと真摯に向き合った。

ライブ序盤の挨拶で京本が観客に勝負を挑むように「音楽でぶつかり合う準備はできてんのかい! 音楽でかかってこれんのかい!」と投げかけたのも印象的だった。森本の「体感時間はあっという間だぞ。覚悟しろ。このライブ、ハンパないからね」という発言からも、ライブに対する期待や自信が感じ取れた。ジェシー、松村、髙地、田中の言葉にも自然と力がこもった。

アコースティックバージョンに生まれ変わった「Call me」「マスカラ」

エネルギッシュなロックチューンが多く並ぶ中で、叙情的なバラードは強いインパクトをもたらした。物悲しげなキーボードサウンドで始まった「House of Cards」で6人はスタンドマイクの前へ。はかなくも力強い歌声を重ね、ダイナミックに踊る姿には凛とした美しさが宿っていた。SixTONESライブ初のアコースティックパートで披露されたのは、痛みをはらんだ大人のラブソング「Call me」「マスカラ」。このときばかりはオーディエンスも着席し、6人のボーカルを引き立てるような繊細なアコースティックアレンジにじっと耳を傾けた。

各ユニット曲には個性がはっきり表れた。京本と森本の「希望の唄」はドームに似合う壮大なロックチューン。パワフルなドラミングをきっかけに放たれたみずみずしいバンドサウンドに、2人の清らかなボーカルが重なる。松村と田中は自然な会話から「スーパーボーイ」へとシームレスに移行し、スローなテンポでラップする。ステージに腰掛け、リラックスしたムードで掛け合いを見せる2人の姿は、誰もが経験するであろう夢中で無駄話をした青春時代を想起させた。「スーパーボーイ」とは毛色の異なるラップソング「Blue Days」を歌唱したのはジェシーと髙地。聴く人の心に寄り添う普遍的なメッセージと温もりに満ちたボーカルが、穏やかなひとときを演出した。

改造ジープの次は

「慣声の法則 in DOME」で楽曲「Drive」にちなんでカスタムされたジープが登場したのは記憶に新しい。ちなみに改造ジープには4月21日公演の特別ゲスト・YOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)、23日公演の特別ゲスト・常田大希(King Gnu、MILLENNIUM PARADE)もメンバーとともに乗り込み、広いドーム内を1周した。

「VVS」ではさらにグレードアップして、ド派手な電飾が目を引くSixTONES専用のデコトラがドーム内を走行。6人はその上で飛び跳ね、車体を大きく揺らしながら「DON-DON-DON」「RAM-PAM-PAM」「Bang Bang Bangin'」というキラーチューンを繰り出す。「Bang Bang Bangin'」の途中で下車すると、花道を経由して360°ステージへ。勢いにブーストをかけるようにハイテンションなパフォーマンスを見せ、乱発されるファイヤーボールや花火、忙しなく駆け巡るレーザー光線も相まって狂喜乱舞のステージとなった。

SixTONESは“こっから”始める

ヘッドバンギングあり、デスボイスありのラウドロック「Something from Nothing」が投下され、ライブはラストスパートへ。グループ結成当時の楽曲「BE CRAZY」“Rock Rearrangeバージョン”では、6人が「運命を賭け 心燃やして 常識なんて 蹴散らして」「後ろを絶対 振り向かないで 前だけを見つめて行く」などメッセージを喉がちぎれんばかりに伝えていく。泥臭く歌う彼らの姿からは、内から湧き出てくる熱い魂を感じた。ライブの規模は大きくなれど、アーティストとしての信念は結成初期から変わらず確かにそこにあった。

360°ステージを強く踏みしめ、大ヒット曲「こっから」では穏やかな笑顔も浮かべた6人。最後のフレーズ「こっから始まんだ」で彼らがステージを指差す姿にもジーンときた。デビュー後のライブでドラマチックな場面を作ってきたデビュー曲「Imitation Rain」はツアーファイナルでは披露されなかったが、日替わり曲としてセットリストに組み込まれ、魂が震えるような瞬間を何度も作り出していた。ラストソングは最終公演で初披露となった「音色」。ツアーを振り返りお礼を述べる長尺のMCはなかったものの、6人は「音色」を通じて大切なファンへの思いや今後も進んでいく決意を歌っているようだった。すべての曲目を終えると、6人はリラックスした様子で会話しながらステージを去っていく。髙地は「いつか5大ドームやれたらいいよね」、ジェシーは「いやいやもっと上いくでしょ!」、森本は「のちにスタジアムだな」と少年のように夢を語り合っていた。

ライブDVD / Blu-ray「VVS」にはライブ本編に加え、異なる内容の特典映像を収録した初回盤と通常盤が用意される。初回盤は「VVS」のビジュアルコメンタリー、SixTONES視点でライブを体験できる「メンバーによる『VVS』目線カメラ」、各公演のMCダイジェスト、そして初の野外フェス出演を果たした5月の「ごぶごぶフェスティバル2024」のライブ映像と盛りだくさん。通常盤には「VVS」の日替わり曲「Imitation Rain」「僕が僕じゃないみたいだ」のパフォーマンス映像、ツアードキュメンタリーが収められる。

SixTONES

SixTONES

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。2018年10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた。同年4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。最新アルバムは2024年1月にリリースした「THE VIBES」、最新シングルは同年7月リリースの「GONG/ここに帰ってきて」。10月にはライブDVD / Blu-ray「VVS」をリリースした。