SixTONESが“こっから”新たなフェーズへ、10thシングル「こっから」を“熱”を手がかりにレビュー

SixTONESがニューシングル「こっから」をリリースした。

4月に大阪・京セラドーム大阪、東京・東京ドームで単独公演「慣声の法則 in DOME」を成功に収めたSixTONES。最終公演から2カ月足らずで発売された「こっから」の表題曲は、ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹が熱いマイクリレーを展開するヒップホップチューンだ。キャリアハイを更新し続けるSixTONESの記念すべき10枚目のシングルはどんな作品に仕上がったのか、音楽ナタリーでは“熱”を手がかりに本作をレビューする。

文 / 寺島咲菜

ほとばしる情熱

表題曲「こっから」(※全仕様共通)
[作詞・作曲・編曲:SAEKI youthK]

2020年1月のメジャーデビュー以降、シングル9枚、アルバム3枚をコンスタントにリリースし、充実した日々を送っているように見えるSixTONES。年々活動の場を拡大している彼らが2023年1月に発表したヒップホップチューン「人人人」(2023年1月発売の3rdアルバム「声」収録曲)はシングル曲ではないものの、メンバー6人が巧みなマイクリレーで繰り出す、エンタテイナーの苦悩が描かれたリリックが多くのリスナーに衝撃を与えた。そんな「人人人」と同様にメンバーが本格的なラップに挑んでいる「こっから」。2曲のつながりを示すように、この曲には「人人人」という言葉がさりげなく登場する。

「こっから」はメンバーの森本慎太郎が山里亮太(南海キャンディーズ)役、King & Princeの髙橋海人が若林正恭(オードリー)役で出演しているドラマ「だが、情熱はある」の主題歌の1つだ。キャスト陣は第一線で活躍する芸人という難役を見事に演じ、その憑依ぶりがお茶の間をにぎわせている。芸人2人の物語を彩る「こっから」は「人人人」やシングル曲「わたし」「共鳴」「僕が僕じゃないみたいだ」なども手がけるSAEKI youthKが制作。RHYMESTERを敬愛し、日本語ラップに造詣の深いSAEKI youthKがブラックミュージックのテイストも盛り込みながらトラックを構築した。生バンドが織りなすキャッチーなサウンドとは裏腹に、冒頭で表現されているのは「産声オギャー 行く先は荒野」「ノーマル以下が如何にして 地下深く眠る鉱脈掘れますか?」という現実を突き付けるような辛辣なリリック。さらに、「本当の自分なんて居やしねぇ」という一節は俗に言う“自分探し”へのカウンターパンチともとれる。誰もが凡人であることを受け入れ、研鑽を積むことで道が拓ける──そんな普遍的なメッセージ。一時は「燃料自体はすっからかん」の状態にまで陥った“俺”が、劣等感や嫉妬といったネガティブな気持ちをバネに情熱をたぎらせるさまは、本作で一番の共感ポイントと言えよう。福沢諭吉が「学問のすすめ」で説いていた恨みや嫉みの感情を否定する「怨望の人間に害あるを論ず」という教えをなんとなく信じていた筆者は、「劣等も嫉妬も叱咤なる燃料」という歌詞に大いに救われた。

引き続きリリックを追うと、「明日ありと思う心の仇桜」という言葉が目に留まる。人の世も明日はどうなるかわからないという意味が込められた、親鸞の歌の一部だ。ほかにも、一聴しただけでは聴き逃してしまいそうだが、「よりどりみどりの一生」「生きてることが青天の霹靂」などリスナーを鼓舞する言葉の数々がちりばめられている。

振付は9thシングル曲「ABARERO」に続き、ヒップホップダンスを極めるSAYA YAMAMARUが担当。ニュージャックスウィングの要素が取り入れられており、サビを象徴するブレイクダンスの多彩なステップからは目が離せない。また、メロディの展開が一変する「俺、悪くない。なんも間違ってない」からのフォーメーションダンスを見て、「Rosy」(2022年1月発売の2ndアルバム「CITY」収録曲)の振付を思い出した人も多いだろう。

「人人人」と同様に6人が繰り広げるめまぐるしいマイクリレーは職人芸の域。アップテンポなビートに乗せてエッジィなラップとダンスを披露する彼らを生放送の番組で観たとき、その人間離れしたパフォーマンスに度肝を抜かれた。

熱愛の果て

初回盤Aカップリング曲「雨」
[作詞:Katsuhiko Yamamoto / 作曲:Katsuhiko Yamamoto、Takashi Fukuda / 編曲:Naoki Itai、Takashi Fukuda]

雨は、YOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)提供の「Imitation Rain」でデビューしたSixTONESにとって縁の深い言葉だろう。物悲しげなピアノの音色で始まる「雨」は、断ち切れない“君”への思いが描かれた悲哀に満ちたロックバラードだ。シリアスなピアノを基調としたAメロ、Bメロを経て、サビに突入するや否やギターやベース、ドラム、ストリングスが壮大なサウンドスケープを描く。叙情性あふれるアンサンブルに、憂いをたたえた6人の歌声が重なる。

急上昇する熱気

通常盤カップリング曲「FIREWORKS」
[作詞:ONIGASHIMA / 作曲:P3AK、Tommy Clint / 編曲:P3AK]

「PARTY PEOPLE」の制作にも携わったONIGASHIMA、P3AKが再びタッグを組んで新たなサマーチューン「FIREWORKS」を完成させた。フォルクローレのテイストが盛り込まれたこの曲からは、全編にわたって猛烈な熱気が感じられる。エキゾチックなビートに乗せて歌われる刺激的な恋が、熱帯夜を一層盛り上げる。

冷めない熱

通常盤カップリング曲「Tu-tu-lu」
[作詞・作曲:YUUKI SANO、YUKI / 編曲:Takashi Yamaguchi、YUUKI SANO]

ボサノバやヒップホップの要素が取り入られた失恋ソング。「雨」ほど深刻なムードはないが、“君”との生活を懐かしみ感傷に浸るさまが軽やかに描かれている。アコースティックギターを軸にしたオーガニックなサウンドによって、6人の無垢な歌声がより引き立つ。


10thシングルには既発曲のライブ音源やリミックスバージョンも収録。初回盤Bにはアリーナツアー「慣声の法則」より1月の神奈川・横浜アリーナ公演で披露された「S.I.X」「Special Order」「フィギュア」「RAM-PAM-PAM」「WHIP THAT」「Outrageous」のメドレー音源が、通常盤には9thシングル曲「ABARERO」の“Dark Electro Rock Remix”が収められている。

4月に大阪・京セラドーム大阪、東京・東京ドームで単独公演を終えた彼らは表題曲「こっから」を通じて、新たなフェーズへ突入したことを宣言しているようにも感じる。SixTONESにはどんな未来が待っているのか、想像するだけで胸が高鳴る。

SixTONES

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。ジャニーズJr.時代の2018年3月より公式YouTubeチャンネル・ジャニーズJr.チャンネルで金曜日を担当し、10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた。4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。2023年1月に3rdアルバム「声」を発表し、同月から3月まで全国アリーナツアー「慣声の法則」を実施した。4月に9thシングル「ABARERO」をリリースし、大阪・京セラドーム大阪と東京・東京ドームで単独公演「慣声の法則 in DOME」を行った。6月には10thシングル「こっから」を発表。