SixTONES「Good Luck!/ふたり」をレビュー、新曲3曲に込められたポジティブで温かなメッセージ

SixTONESの8thシングル「Good Luck!/ふたり」がリリースされた。

「Good Luck!/ふたり」はSixTONES初の両A面シングル。表題曲はメンバーのジェシーが単独初主演を務めるドラマ「最初はパー」の主題歌「Good Luck!」と、同じくメンバーの京本大我にとって単独初主演ドラマ「束の間の一花」の主題歌「ふたり」だ。SixTONESが本作でたどり着いた新境地とは。音楽ナタリーでは表題の2曲と、通常盤のみ収録されている新曲「Sing Along」の聴きどころを紹介する。

文 / 寺島咲菜

SixTONESが歌う愛と平和

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹の6人で構成されるSixTONES。彼らの音楽と言えば、「RAM-PAM-PAM」「NEW ERA」「Special Order」「共鳴」などエネルギーを撒き散らすようなハードな楽曲……そんなイメージを持つ人も多いだろう。過去にYOSHIKI(X JAPAN)や常田大希(King Gnu、millennium parade)からの楽曲提供も受けているSixTONESは、今やジャニーズファンのみならず音楽マニアからも厚い支持を集めている。尖った個性を示してきた6人だが、8thシングルには、棘を削ぎ落としたような彼らのニュートラルな魅力が詰まっている。

光GENJI「勇気100%」、SMAP「がんばりましょう」、KinKi Kids「フラワー」などジャニーズグループの応援ソングはいつの時代も混沌とした世の中を明るく照らし、人々に希望を与えてきた。「Good Luck!」もそれらに並ぶような、夢を追う人をまっすぐに後押しするポップチューンで、ジェシーの主演ドラマ「最初はパー」の主題歌だ。本作でジェシーは政治家を父に持ちながらも世襲を拒んでプロの芸人を目指す主人公を演じている。

「Good Luck!」は華やかなホーンサウンドで幕を開け、サトウカツシロ(G / BREIMEN)をはじめとするバンドメンバーの織りなすアンサンブルが祝祭感を演出する。歌詞には「カッコ悪くてもいいんじゃない?」「何回だって It's OK!」「0点も100点でも 自分らしけりゃ満点だろ? 信じる道をゆけ」などリスナーを勇気付ける肯定のメッセージが多数連なる。6人のハツラツとした歌声も相まって、聴き進めるうちに幸運を引き寄せるようなポジティブなムードが増幅していく。極めつけは「最後は Love & Peace!」というラストのフレーズ。ジェシー曰く「SixTONESのシングル史上最も笑顔で元気な作品」は人類普遍のテーマとも言える大いなるスローガンで締めくくられる。

作詞はYUUKI SANO、作曲はYUUKI SANOとTaishi Noguchiが担当。YUUKIは、2017年に「第59回日本レコード大賞」で新人賞を受賞した男性ボーカルユニット・UNIONEのメンバーとして活動しながら、近年はHey! Say! JUMP「恋をするんだ」、King & Prince「Lovin' you」、Snow Man「Movin' up」といったジャニーズグループの楽曲を手がけ、作家としても脚光を浴びている。Taishi Noguchiはアカペラバトル企画「全国ハモネプリーグ」で優勝経験を持ち、Hey! Say! JUMP、King & Prince、Task have Fun、ナオト・インティライミ、≠ME、乃木坂46、日向坂46などさまざまなアーティストの楽曲に携わってきた作編曲家だ。振付を担当したのは、SixTONESとは切っても切り離せない関係の11人組ダンスクルー・GANMI。「PARTY PEOPLE」のミュージックビデオに続いて今回のMVでもメンバー11人が勢ぞろいし、振りコピのしやすいダンスで楽曲のにぎやかな世界観を引き立てている。

“ふたり”を温かく包み込む

今作のもう1つの表題曲「ふたり」は、余命宣告を受けた大学講師と生徒の恋を描く京本の主演ドラマ「束の間の一花」の主題歌。そのタイトルから6月にリリースされた前作「わたし」からのつながりを想像した人も少なくないはず。どちらも繊細なラブバラードだが、「わたし」では“あなた”に思いを募らせながらも恋に溺れまいとする心情が表現されているのに対し、「ふたり」では時の流れを意識しながら“あなた”を慈しむ“わたし”の姿が描かれている。また、未来への推進力を感じる「Good Luck!」「Sing Along」と比べ、「ふたり」は記憶をたどるような描写が多い。だからこそ、ラストの「歩いていこう ずっとふたりのまま」という前向きなフレーズは聴き手に鮮烈なインパクトを与え、温かな余韻を残すのかもしれない。

「わたし」を聴いたときも感じたことだが、SixTONESにはバラードがよく似合う。「ふたり」の導入のソロパートからサビのユニゾンにかけて叙情性を帯びていくボーカルはシンプルなアレンジによって際立ち、6人それぞれの“寂しさ”を含んだ湿り気のある歌声はいつまでも耳に残り続ける。さらに特筆すべきは、「Good Luck!」と同じくYUUKI SANOが作詞作曲で関わっているという点。彼はHey! Say! JUMP「恋をするんだ」、King & Prince「Lovin' you」でもタッグを組んだHaruka Yanagawaとともに「ふたり」を共作し、SixTONESのアーティストとしての二面性を引き出した。

音楽を謳歌する6人

本作の通常盤で「ふたり」の次に収録されているのが「Sing Along」。アメリカ人の父を持つジェシー、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で英語が堪能な大学生を演じた松村の2人が出演する英会話学習教室「ECCジュニア」のテレビCMソングだ(参照:SixTONESジェシー&松村北斗「ECCジュニア」CM出演、未来のホームティーチャーに勇気与える)。「Good Luck!」と同じく夢を追う人々に捧げる応援ソングだが、「Good Luck!」以上に英語詞の要素が多い。聴き心地はスムースで、弾むようなシンセサウンドと「感じた時 それがタイミング 遅すぎることなんてないし」「心のまま進もう」「Never give it up」などのボジティブなメッセージがさわやかなグルーヴを生み出している。作詞を担当したのはSixTONESの「Odds」「Cassette Tape」をはじめ、大原櫻子、ゴスペラーズ、TWICE、NiziUなどの楽曲も手がけるMayu Wakisaka、作曲はSixTONESの「Life in color」「Lemonade」や、嵐、少女時代の楽曲で知られるスウェーデン出身のクリス・メイヤーと、近年ではSnow Man「君の彼氏になりたい。」「僕の彼女になってよ。」、King & Prince「You are my Princes」も制作したこちらもスウェーデン出身のジョセフ・メリン。ジャニーズゆかりの作家陣から受け取ったこの曲を通じて、SixTONESは純粋に音楽を楽しんでいるように感じる。

新曲「Good Luck!」「ふたり」「Sing Along」を聴いて、SixTONESはひと言では形容しがたいグループだと実感した。さまざまなジャンルを自在に歌いこなし、表現力を磨き続ける6人。才能あふれる彼らの今後に期待は膨らむばかりだ。

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

2015年に結成されたジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなるジャニーズの6人組グループ。ジャニーズJr.だった2018年にジャニーズグループ初となるYouTube公式アーティストチャンネルを開設。YouTubeが世界で展開している「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」というキャッチコピーのもと日本人で初めて抜擢される。2020年1月にYOSHIKI(X JAPAN)プロデュースの壮大なロックバラード「Imitation Rain」でCDデビュー。最新作として、メンバーのジェシーが初主演を務めるドラマ「最初はパー」の主題歌と、京本の初主演ドラマ「束の間の一花」の主題歌を収録した初の両A面シングル「Good Luck!/ふたり」を11月2日にリリースした。