SixTONES|オリジナル曲のみで挑んだ初のアルバムツアー「on eST」、6人が作り上げた世界基準のステージとは

SixTONESのデビュー2作目となるライブDVD / Blu-ray「on eST」(オン エスト)がリリースされた。

「on eST」には1stアルバム「1ST」のリリースツアーより、6月7日の神奈川・横浜アリーナ公演の模様が収録されている。SixTONESがオリジナル曲のみでツアーに臨んだのはこれが初。コロナ禍といういまだかつてない逆境の中、6人はいかにしてSixTONESらしいステージを作り上げたのか。グループの多彩な音楽性が如実に表れた「on eST」をレビューしていく。

文 / 寺島咲菜

延期中止を乗り越え、念願の有観客ライブへ

アルバム名「1ST」を分解し、状態を表す前置詞“on”と、最上級を表す英文法“est”をかけ合わせた「on eST」。タイトルには、SixTONESにとってライブが最上級のひとときであるというメッセージ、パフォーマンスによって最大限の力を発揮するという決意が込められている。デビュー日の1月22日をまたいだ昨年のツアー「TrackONE -IMPACT-」では敬愛する先輩グループの楽曲のカバーも含むセットリストが組まれたが、「on eST」はオリジナル曲のみで構成するツアーということもあり、当然ファンからの期待も大きかった。

「on eST」ツアーは当初、有観客を視野に1月4日から3月28日にかけて開催が予定されていた。しかしながら新型コロナ第3波に伴う緊急事態宣言により、3月21日までの公演が一旦中止に。ツアーの幕開けを飾る横浜アリーナ公演は急遽、無観客での配信ライブに変更された。その後、万全の感染対策が施されたうえで、SixTONESは3月の北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ公演を皮切りに有観客ライブを敢行。「on eST」には、観客のマスク着用義務や歓声禁止というルールがありながらも、6人が来場者を楽しませたいという一心でアイデアを出し合った、こだわりのステージの様子が記録されている。

6人組ユニット・SixTONESにとってグループ名にもある“6”は特別な数字。今年5月に結成“6”周年を迎えた彼らは同月を“スペシャル月間”と定め、森本慎太郎を中心にInstagramを毎日更新したり、ゲリラでの生配信を行ったりして、ファンとの結びつきを再確認した。ここからは、祝福ムードが色濃く残る6月に行われた横浜アリーナ公演を詳らかにしていく。

意表を突くオープニング

ライブのオープニングを飾ったのは「1ST」通常盤のボーナストラック「Mad Love」。メインステージを覆い隠す紗幕には、煙や水彩画のようなビジュアルとともにメンバーのシルエットが次々と浮かび上がる。大きく映し出された6人の影は、ヘビーなビートに合わせて妖しく揺れ動いた。こうしてメンバーが姿を見せないまま、1曲目は終了。面食らうオーディエンスたちを前に幕が下ろされるが、ステージにメンバーの姿はない。代わりに「the time has come」というアナウンスが場内に響き渡った。ライブの開幕が告げられ、ファンが彼らの登場を今か今かと待ち構える中、昇降式のステージにはマネキンかのごとく微動だにしないサングラス姿の6人が。ジャニーズJr.時代からSMAP「Battery」やKAT-TUN「THE D-MOTION」をカバーしてきたSixTONESは、グループのお家芸とも言えるEDMチューンの1つ「Dance All Night」で無機質なダンスを繰り広げる。1枚1枚仮面を脱ぐようにサングラスを外して素顔をさらけ出すと、続いてはSFチックな「NAVIGATOR」を熱量高くパフォーマンス。“6人6色”の自己紹介後には、無数の照明がサイレンの音に合わせて場内の四方八方を照らす。不穏なムードが広がる中、会場にはアリーナ席を分断するように可動式の花道が出現した。メインステージの斜面を勢いよく滑り降り、花道に移動した6人は「S.I.X」「Special Order」といったエキゾチックなライブアンセムを連発。SixTONESを象徴するようなシャープかつダイナミックなパフォーマンスに観客の熱視線が注がれた。

3ユニットがオリジナリティを求めて

京本大我はロック、松村北斗はボカロ、田中樹はラップ……と音楽的嗜好が異なり、加えて普段からダンスがそろわないと自虐するSixTONES。そんな個性の強い彼らにとって初のユニット曲が「1ST」には収録されており、各ペアのパフォーマンスからどんなケミストリーが生まれるのだろうとファンは心待ちにしていた。神奈川県横浜市育ちの髙地優吾と森本は、波の音と軽やかな口笛に誘われるように花道に登場。地元の友人に思いを馳せながら「My Hometown」を歌い、ノスタルジックなムードを作り出した。京本と松村はスタンドライトの明かりに照らされながら「ってあなた」で艷やかなハーモニーを披露。ソファに深く腰かけたジェシーと田中は、重低音が響くダンスチューン「EXTRA VIP」で空間を支配した。

白い光に包まれながら、
「Lifetime」で迎えた感動のフィナーレ

各ペアがオリジナリティを追求したステージングでオーディエンスを魅了したあと、6人は舞台に再集結。Jr.時代からのキラーチューン「RAM-PAM-PAM」や和テイストのラウドロック「NEW ERA」でライブ終盤を駆け抜け、「TrackONE -IMPACT-」でも披露された唯一のシングル曲「Imitation Rain」へ。前回ツアーでの「Imitation Rain」にはファンへの惜しみない感謝やデビューに対する強い覚悟などさまざまな感情があふれていたように思うが、「on eST」では結成から6年、デビューから1年半以上が経ち、アーティストとして進化を遂げたグループが純粋に楽曲と向き合う姿が見てとれる。また最後のサビで“炎の雨”を浴びながら歌い続けるたくましい姿には、熱くこみ上げるものがあった。静かな余韻を残しながら迎えたラストの「Lifetime」。SixTONESとファンの強いつながりを示したような珠玉のバラードソングで、メンバーが一切出演しない出光興産のCMソングとしても話題を呼んだナンバーだ。白い光に包まれながらひたむきに歌を届ける6人。温もりと優しさにあふれたユニゾンは、多くの観客にとって忘れがたい響きとなった。感動的なフィナーレのあと、アンコールでは、SixTONESリスナーのみならず音楽ファンからも愛される「うやむや」、SixTONES初期のオリジナル曲として知られる「この星のHIKARI」と新旧の人気曲が披露された。すべての曲目を終えた6人は横一列となり、ジェシー考案のギャグにしてSixTONESの合言葉でもある「ズドン」でライブを締めくくった。

グローバルアーティストを目指して

ライブDVD / Blu-ray「on eST」には初回限定盤と通常盤が用意され、いずれの種類にもライブ本編とともに異なる内容の映像を収録。初回限定盤には6人が「on eST」を振り返るビジュアルコメンタリー、YouTubeで公開された「うやむや」「Strawberry Breakfast」「Lifetime」のミュージックビデオ、このうち本人が出演した「Strawberry Breakfast」「Lifetime」のMVのメイキング映像が、通常盤には「DOCUMENT "on eST"」と題されたツアーのドキュメンタリーがそれぞれ収められている。「DOCUMENT "on eST"」には本編には収録されていない5thシングル曲「マスカラ」のライブ映像の一部が記録されているので、ぜひチェックしてみよう。

改めて本編のセットリストを振り返ると、ライブで披露された全25曲中、全編英語詞の楽曲は5曲。そのほかにも英語詞をメインとする曲が多数組み込まれていたのは、ジャニーズの新人グループのライブとしては異例だったように思う。世界へと照準を合わせたSixTONESの躍進は止まらない。

SixTONES(ストーンズ)
ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人組ユニット。ジャニーズJr.時代の2018年3月より公式YouTubeチャンネル・ジャニーズJr.チャンネルで金曜日を担当し、10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。同年11月には滝沢秀明プロデュースによる「JAPONICA STYLE」のミュージックビデオを公開し、話題を集める。2020年1月にSnow Manとそろって1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN)が手がけた。4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。6月に2ndシングル「NAVIGATOR」、10月にライブ映像作品「TrackONE -IMPACT-」、11月に3rdシングル「NEW ERA」をリリース。2021年1月に初のフルアルバム「1ST」、2月に4thシングル「僕が僕じゃないみたいだ」、8月に5thシングル「マスカラ」を発表した。10月には「1ST」を携えて行った全国ツアーより神奈川・横浜アリーナ公演の模様を収録したライブDVD / Blu-ray「on eST」をリリース。