湘南乃風が新作EP「2022 ~Time to Shine~」をリリースした。
本作には既発曲「風乃時代」や「茶柱立つ」に加え、極楽とんぼの山本圭壱が出演するミュージックビデオが話題を呼んでいる「夢物語」や、新たなアプローチで作られたというレゲエチューン「真夏のキラーチューン」など全9曲を収録。バラエティ豊かな楽曲群で夏のさまざまな光景を彩ることで、グループとしての表現の幅や音楽性の広さを再認識させる仕上がりとなっている。
夏から秋にかけては本作を引っさげて多数のフェスに出演することも決定している湘南乃風。2023年に迎えるメジャーデビュー20周年に向けて旋風を巻き起こさんとたくらむメンバー4人に、本作の制作について話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 草場雄介
肩の力が抜けた湘南乃風になってきた
──いよいよ夏本番、湘南乃風の季節が来ましたね。
RED RICE いやー、どうですかね。年々クーラー族になってきてるんで(笑)。
若旦那 歳を取ってくるとだんだん暑いのがキツくて。春と秋がいいよね、なんて言ってる感じだから。
RED RICE 今年もそうだけど、俺らの知ってる夏を毎年超えてきてますから。
──あははは。でも、今回リリースされるEP「2022 ~Time to Shine~」を聴くと、今年の夏を思いきり盛り上げようという湘南乃風の気概を感じます。来年のメジャーデビュー20周年に向けたキックオフ作品でもありますしね。
RED RICE そうですね。言わば、これを皮切りに20周年イヤーへのカウントダウンが始まるぞっていう。そういった位置付けの作品になっています。
SHOCK EYE 20周年は僕らにとってはすごく大きな節目なんですよ。10周年のときに出したアルバムに「湘南乃風~2023~」ってタイトルを付けたぐらいなので。
──その段階で20周年を見据える思いがあったわけですね。
SHOCK EYE 正直、20年続けられるかどうかはまったく見えてはいなかったけど、でも2013年の段階で2023年にはどうにかたどり着きたいよね、とみんなで話していたんです。その年がいよいよ目前に迫ってきているので、そこを強く意識して今回のEPのタイトルに“2022”という数字をあえて入れてみたりもしたんですよね。
──EPの内容に関してはどう定めていったんですか?
RED RICE 特に全体的なテーマのような決め事を作ることはせず、今の自分たちが作りたいものというか、みんながイメージする今の湘南乃風を形にするのがいいんじゃないかということになって。メンバーそれぞれが曲を持ち寄り、それを1枚にまとめていった感じですね。「Knock It Down」や「風乃時代」は自分らが一番自分らしくあるために、改めて決意表明する意味を込めてずっとやってきたサウンド感、テイストを意識的に出した部分はあったけど、ほかに関してはけっこう自由度高めに作っていきました。
若旦那 作っていく過程で、「こういうEPになっていくんだな」と自分たちで感じられたのが面白かったですね。それぐらい型に縛られず作ることができたと思います。やっぱりね、活動を続けてきた中で湘南乃風という1つの型みたいなものができあがっちゃってた部分はどうしてもあるんですよ。
──アッパーな楽曲で熱く背中を押してくれるグループ、といったパブリックイメージは確実にありますよね。それが1つの湘南乃風らしさであることも間違いないとは思うのですが。
若旦那 うん。世間が思う型もあったし、同時にスタッフやメンバーにも固まっていた型はあったと思うんで、そこをぶち破りたい気持ちと守りたい気持ちがせめぎ合う中でずっと活動してきたんだと思う。ただ、ここ最近どんどんみんな自由になってきた感覚もあって。守りたいとか攻めたいとかではなく、ラフに自分らの今思ってることを自由に出せるようになってきた。その1つの結果が今回のEPなんじゃないかな。ようやく肩の力が抜けた湘南乃風になってきたなって俺は感じてますね。
──本作を聴けば幅広い音楽性を持ったグループだということは明白ですよね。
若旦那 俺らは楽器を弾いてるわけじゃないからね。音楽性はどこまでも幅広くやれる利点がある。いろんな楽曲に無限にチャレンジしていけるわけなので。
──今年は5年ぶりにさまざまな夏フェスに参戦することが決まっています。そのことがEPの仕上がりに影響したところもありましたか?
HAN-KUN 現場で、ステージで歌うイメージをしながら楽曲を作るというのは活動を始めた当初から心がけているところではあるので、そこはいつも通りではありましたね。ただ、さっき旦那が言ったように、型に縛らない自由な曲作りが今まで以上にできていたので、あえてステージの上で歌うことをイメージしない「真夏のキラーチューン」という曲を作ってみたりもしたんですよ。ここ数年はコロナ禍で楽曲を作ってもすぐ歌えない、有観客でパフォーマンスできない状況が続いていたから、だったらそこをイメージしないでやってみようかなという。それはかなり新しいチャレンジだったかな。
──「真夏のキラーチューン」はタイトルからするとアゲアゲな楽曲かと思いきや、ゆったりとしたレゲエナンバーになっていますからね。
RED RICE アッパーなチューンで俺ららしい夏を表現する曲はいっぱいあったけど、だんだんお年も召してきたんでね(笑)。まったり楽しめるサマーチューンがあってもいいのかなと。
HAN-KUN かなり肩の力を抜いた感じの曲だからね。ドライブであったり、ビーチであったり、そういう場所でラフに聴いてもらえたら気持ちいいと思う。とはいえ、できあがってみれば、これはこれで新しいステージ用の曲になったような気もするんですよ。サンセットを感じながら自分らが歌う画も浮かぶし。ステージを意識して作りはしなかったけど、セットリストに入ってもおかしくない曲ができたのはなかなか面白い経験でしたね。
──今回のEP自体、ゴリゴリのアッパーチューン満載で攻めてくるのかと思いきや、緩急のついた楽曲群で夏のさまざまな景色を感じさせてくれる内容になっていますしね。すごく心地よく楽しめる1枚だと思います。
HAN-KUN それはすごくうれしい感想ですね。EP全体としてざっくり“夏”を意識はしましたけど、あとはもうホント自由に作っていきましたから。結果、そういうふうにおっしゃっていただける仕上がりになっているのであれば、僕らとしてもよかったなと思います。
SHOCK EYE 本当にバラエティ豊かな1枚になりましたね。デモ曲はもっと数があったんだけど、そこから吟味して、このタイミングの湘南乃風に必要な曲を詰め込むことができたと思う。1曲1曲の個性がほんとに強いし、それぞれが強い存在感を放っているのに全体としてのバランスがいいっていう部分もすごく気に入っています。
ちょっとしたズレが4人でやってる面白さ
──波の音を盛り込んだインスト「Intro ~2022~」で始まって、実質的な1曲目「Knock It Down」はテンションを上げる起爆剤とも言えるナンバーですね。
HAN-KUN これはもともと1、2年前に俺が作ったオケのストックがあって。4人でやったらよさそうだなと思って今回のタイミングで形にしていきました。現場を爆発させるとか、いろんな固定概念をぶっ壊すとか、そんなテーマをもって4人で歌詞を紡いでいった結果、フェスでみんなと盛り上がっている光景が浮かぶ曲になりましたね。早く現場で歌いたい1曲です。
若旦那 俺ね、この曲はけっこう苦戦したような気がする。
HAN-KUN そう? リリックを書くのはだいぶ速かったけどね。
若旦那 なんかHAN-KUNから「直せ」っていう怖い指示があって。それで作り直したんですよ。
HAN-KUN いや、そんなこと1回も言ってない(笑)。でも、旦那の歌詞は途中で変わったんだよね。それですげえよくなったの。現場でREDとも話したんだけど。
若旦那 「便所みてえな Smel / 慣れちゃえば住める」のとこでしょ?
RED RICE そうそう。そこめちゃくちゃいい!
HAN-KUN この曲のキモはそこだからね(笑)。
若旦那 風呂なし共同トイレみたいなアパートに住んでた頃のことを思い出して書きましたけど……なんでそれが出てきたのかは覚えてない。俺、ホントにノリで作っちゃうんですよ。あんまり考えず、最初にパーンと出てきたものを書いちゃうからさ。だから曲全体として見ると、みんなと言ってることが若干ズレてることもあるんですよ。この場を借りてみんなに聞きたいですもん。ズレてない?
RED RICE あははは。いやでも、そのちょっとした違和感とか、ちょっとしたズレが逆に気持ちよかったりするんですよ。1曲を通してトーンが一辺倒にならないというか。旦那が深く合わせてこないところがこの4人でやってる面白さだからね。
SHOCK EYE そうそう。無理に合わせないほうが絶対いいんだよね。
若旦那 俺、けっこう異質なこと書いちゃうからなあ。
RED RICE 最初聴いたとき、「あ、旦那やべえな」って思うときはあるんだよ。でも何度も聴いてるとだんだんピントが合ってくるっていう(笑)。
HAN-KUN 最初は基本的に合ってないからね(笑)。でも4周くらいするとハマってきて、むしろ逆に俺らのイメージを追い越してくる感じもある。
若旦那 なんか既存じゃ嫌だから変な毒々しいものを投げちゃうクセがある。
HAN-KUN それこそが“Knock It Down”だからね(笑)。
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「夢物語」は応援歌というもの自体へのアンチテーゼ