湘南乃風20周年イヤーへのカウントダウンが始まる新作EP「2022 ~Time to Shine~」堂々完成 (2/2)

「夢物語」は応援歌というもの自体へのアンチテーゼ

──4曲目の「夢物語」は郷愁感のあるサウンドに乗せ、「探してみろ 自分だけのドラマ」というメッセージが放たれる感動的な1曲です。SHOCK EYEさんのトラック制作チームであるAmin03の名前がクレジットされていますね。

SHOCK EYE この曲はもともとポジティブな言葉が並んでいる応援歌として作っていたものだったんですよ。でも、「がんばれ」とか「絶対夢は叶うぞ」とかっていうメッセージを届けるのが僕らの役目だと思っていること自体、旦那の言っていた“湘南乃風の型”のような気がしたんですよね。この曲は“夢物語”というテーマが決まっていたので、今回は違ったアプローチの曲にしようと思ったんです。“夢物語”って言葉には“いい夢の物語”という意味もあるけど、逆に「そんなの夢物語だよ」っていうネガティブな意味もあるじゃないですか。

──「そんなの叶うわけないよ」といった意味合いですよね。

SHOCK EYE そうそう。今回はそっちのメッセージを強く出していきたいと思ったんですよね。人生において成功をつかんだり、何かのナンバーワンになることはもちろん素晴らしいことだけど、それはすごく難しいことでもある。だったら、それに対してがんばれという言葉をかけるのではなく、それぞれの役目を全うしていくことこそが大事だということを伝えてあげたほうがいいと思った。大きな夢が叶わなかったとしても、そもそも人は1人ひとりが自分だけの物語の主役なんだよ、その物語をどうするかは自分次第なんだよっていうことをクローズアップしたかったんです。

──湘南乃風として提示する新しい応援歌の形ですね。

SHOCK EYE そうですね。HAN-KUNが書いてくれた歌詞も最初はもっとポジティブな、背中を押すような内容だったんですよ。でも全体としての方向性が明確になったことで、ちょっと弱音を感じさせるような内容にガラッと変えてくれて。それを踏まえて旦那がまたぶっ飛んだ歌詞を乗せてくれたし。すごくいい仕上がりになったと思うんですよね。

SHOCK EYE

SHOCK EYE

若旦那 この曲も「これで合ってるのかな」って悩んだところはあって。

──若旦那さんのヴァースに出てくる「夢なんてねえけど平和主義」というフレーズはすごくリアルですよね。

SHOCK EYE そうそう。現代の若い子たちって、夢を強く追いかけるとか、何かで勝ち上がりたいとか、そんなことを考えていない子も多いと思うんですよ。ささやかな幸せを噛み締めてれば別にいいんだから邪魔しないでくれ、熱い意見を押し付けないでくれよっていう。それがすごくリアルだなと僕も思った。

若旦那 応援歌というもの自体へのアンチテーゼもあったんですよね。だからそういう歌詞をぶっ込んじゃったっていう。「夢を見ろ」っていうメッセージも大事だとは思うけど、そうやって言われ続けたせいで“夢難民”になっちゃう人もたくさんいると思うんですよ。でもね、人生は成功だけがすべてじゃないし、最終的なでっかい夢って結局は小さな幸せだったりするじゃないですか。この曲ではそこをちゃんとフォローしてあげたかったんですよね。だから俺がこの曲で一番言いたかったのは「一番風呂の銭湯へ Go」ってとこ。俺はそれさえできてれば幸せだから。

RED RICE 制作の過程で二転三転、形を変えていった曲だけど、結果的にHAN-KUNのサビが“変えサビ”になってったのもすげえよかったんだよね。それによってメッセージ感がさらにグレードアップしたと思う。

──同じサビの繰り返しではなく、各サビで歌詞が変わっていきますからね。

HAN-KUN 自分のスタイルとしては、同じ歌詞を繰り返しているんだけど、その意味が少しずつ違って聞こえるサビが好きだったりするんですよ。だから今まではそういった手法を突き詰めてきたところがあって。でも今回は曲が進むにつれて物語がどんどん進んでいくのを感じたので、それに呼応するようにサビも変化していくべきだなと思って歌詞を変えることにしたんです。そういうアプローチは自分としても面白い部分でした。

RED RICE この曲はHAN-KUNさんのサビがとてもよろしいと思います。

若旦那 そうやって言われたら気持ちいいね。

HAN-KUN そうだね。言うことないね(笑)。

HAN-KUN、いい大人になってんだな

──続く「MIRAI」は出会いへの感謝を歌った1曲。ご時世的にまだ難しいとは思いますが、ライブではみんなでシンガロングしたい仕上がりですよね。

HAN-KUN そうですね。これはそもそも僕が1人でやった「Studio Vives!!」(2019年11月開催)というファンクラブの企画から生まれた曲なんです。EX THEATER ROPPONGIを借りて、そこに来てくれたお客さんの目の前で曲を作っていき、そこでできたものを帰りにみんなへお渡しするっていう内容で。お客さんにもアカペラで歌ってもらって、それを盛り込んだり。

──それを今回、湘南乃風の4人で改めて1曲にしたということですか?

HAN-KUN そうです。4人全員の声が乗ることでこの曲は初めて完成するんじゃないかという思いもあったので。ファンの声が入っているということも含め、すごく気持ちがつながった1曲になったと思います。

SHOCK EYE 前回の「四方戦風」ツアーでは歌ナシのバージョンをエンドロールで流したりもしていたので、自分のヴァースを入れるがすごく楽しみでしたね。ナチュラルに今の自分の伝えたい気持ちを言葉にして乗せた感じです。

若旦那 今までになかったタイプの曲が来たなっていう感じがしましたね。「HAN-KUNはこんなこと考えてんだな」って曲を通して知れた部分もあったから面白かった。「もう誰も信じたくねえ!」みたいな曲だったら「あいつ大丈夫かな」とか思っちゃうじゃん。でもそうじゃなくて、すごくみんなに感謝してることが曲を通して伝わってきたから、「いい大人になってんだな」みたいな気持ちになってうれしかったですけどね。「いい成長してんだな」って。

HAN-KUN あははは。

──EPのラストにはアウトロとして、タイトルチューンとなるアッパーな夏曲がさりげなく使われているのが贅沢ですよね。

HAN-KUN そうですね。いわゆる世間一般のイメージに近い湘南乃風のど真ん中とも言える曲をこっそりアウトロに隠しておくっていう(笑)。もともとはEPのイントロに入れる予定だったんですけど、スタッフの方のアイデアでアウトロに入れたのも結果的に面白かったと思います。僕らの20周年イヤーの始まりであり、「ここから夏が始まるよ!」みたいな気持ちをこのアウトロから感じてもらえたらいいのかなと。

HAN-KUN

HAN-KUN

──本作を引っさげて多数参加する夏フェスでも大暴れしてくれることを期待しています。

SHOCK EYE 夏フェスへの参加が5年ぶりということで、ちょっと浦島太郎状態になってる部分もあると思うんですよ(笑)。なのでもう一度改めて「湘南乃風は夏が得意だぞ」「夏が一番の主戦場だぞ」ということを証明したいです。

HAN-KUN 昔から変わらずですけど、フェスは戦いの場だと思ってるんで、その日を一番盛り上げて勝ちに行きたいですよね。夏は俺らのステージなんで。

若旦那 HAN-KUNが言うように、フェスで勝ちに行くためには何よりも自分たちがいかにその場を楽しむかが重要な要素ですからね。生きてることを、音楽をしてることを全力で楽しみ尽くす気持ちで挑もうと思います。すべてのフェスを1年で一番楽しいステージにしたいですね。体力をしっかりつけてがんばります。

RED RICE フェスという、ある意味でアウェイな場所に出ることが一番チーム力を上げることにもなるんですよ。そういう意味では、20周年という大きな節目をいい形で迎えるために、この夏から秋にかけてのフェスはすごく重要。すべてのステージを全力で楽しんで、一皮むけた湘南乃風として来年を迎えたいですね。

フェス出演情報

OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL2022

  • 2022年7月23日(土)大阪府 舞洲スポーツアイランド特設会場

稲佐山平和祈念音楽祭2022 -長崎から世界へ-

  • 2022年8月7日(日)長崎県 稲佐山公園 野外ステージ

氣志團万博2022 ~房総魂~

  • 2022年9月18日(日)千葉県 袖ケ浦海浜公園

tvk・ぴあ 50th anniversary LIVE 2022 ~感謝のカタチ~

  • 2022年10月29日(土)神奈川県 ぴあアリーナMM

プロフィール

湘南乃風(ショウナンノカゼ)

RED RICE、若旦那、SHOCK EYE、HAN-KUNの4人からなるジャパニーズレゲエグループ。2001年頃からコンピレーションアルバムや他アーティストの作品にゲスト参加するようになり、2003年7月にアルバム「湘南乃風 ~REAL RIDERS~」でメジャーデビューを果たす。2006年に大ヒット曲「純恋歌」を含むアルバム「湘南乃風~Riders High~」をリリースし、約60万枚を超えるヒットを記録。ジャパニーズレゲエシーンを牽引する存在として支持を獲得する。2020年5月に中田ヤスタカ(capsule)とタッグを組み、「一番歌」などを収録したアルバム「湘南乃風 ~四方戦風~」をリリース。2021年7月に加山雄三の楽曲「海 その愛」を使用したシングル「湘南乃『海 その愛』」を発表した。2022年7月にEP「2022 ~Time to Shine~」をリリース。