ナタリー PowerPush - 凛として時雨

TK「PSYCHO-PASS サイコパス」対談

「ノイタミナ」でこんなとがった作品をやって大丈夫なのか

TK 今回初めて「ノイタミナ」がどういう枠なのか知ったというか、そういう大事にしてる枠でこんなとがったものをやっても大丈夫なのかな?っていうのは割と最初に思ったところで。

山本 とがったものというのは企画の話ですか?

インタビュー写真

TK はい。そういうものが過去に存在してたかもわからないんですけど、そもそもそういうものをその枠でやろうと思った理由を訊きたいです。

山本 僕個人としては、手づかみでつかんだ感覚を作品に仕上げる作業をしてて、かつ他と似ていないとか今やる意味とかを考え続けてるので……だんだんその作業の精度が上がって、いくつかに絞られてくるんですよ、企画のパターンが。

TK はい。

山本 それは僕1人じゃなくていろんな人とやってるんですけど、自分が分類するに、ちょっと社会派の方向性とか、普遍的な青春ものとかいくつかに集約されてくるんです。で、意外にこの「PSYCHO-PASS サイコパス」がやってるセンっていうのは、最近みんなやらないラインなんですよ。全然アニメではやらないラインなんで、これはやるからには本格的にやりたいっていうのがあったし、この作品にはそういう思いの人が集まってると思いますね。昔あった作品で言えば「攻殻機動隊」がそういうポジションにいて、それ以来ないぐらいなんです。

TK あ、そうなんですか? 確かに総監督も「踊る大捜査線」の人(本広克行)って資料に書いてあって、それは僕レベルでも当然知ってる方なので(笑)、そういうスタッフの中でこういったとがったアニメをやるのが、実際どこまで行くのかオンエアを観るまでわからなかったんです。でも、実際観ると想像してたよりとがってましたね(笑)。

山本 体が吹っ飛ぶとかですよね?

TK はい。すごいなと思いました(笑)。

山本 話が進むともっとすごい方向に行きますけどね(笑)。

シングルで「これ」っていう楽曲を出したかった

──先程少し話が出たんですが、TKさんはオープニング用の89秒の尺で曲を作ったと。あえてその制約の中で作ろうと思ったんですか?

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TK むしろ89秒をフルだと思って作って。例えば「こういう世界がここにあります」っていうふうに目の前にポンと置かれて、「これがあなたにどう見えますか? 89秒で表現してください」って言われてる感じだったんですね。そういう機会ってなかったので、個人的にはすごい作りやすかったですね。いつも自分の中で作る音っていうのを自分の中から探し出さないといけないんで、「あ、これも作った気がするし、これも作った気がするし」っていう。

山本 ああ、なるほど。

TK だからいつもよりも全然時間がかからなかったですね。

──そのことが如実に出たフレーズやサウンドってありますか?

TK イントロとかに関してはもう……僕は歌詞から作ることはないんですけど、今回は歌詞とメロディが一緒に出てきたっていうのは結構珍しいかもしれないですね。

──確かに。今回は「PSYCHO-PASS サイコパス」のオープニング・テーマが取っ掛かりになっていますが、時雨にとって3枚目のシングルでもありますよね。

TK 半年間、ちょっと時雨としてお休みをいただいて、その間にソロのアルバムを出したりしてたんですけど、その間も時雨のほうの曲作りを自分で進めていて。で、ちょうどそのときこのお話が来て。久々に出すプロダクトとして、シングルで何か「これ」っていう楽曲を出しておきたいなと思っていた時期でもあったんです。だから結果的にシングルになったというよりは、こっちとしてもシングルを出したかった時期で、ホントに全部がつながったタイミングではあったんです。

──久々のシングルがタイアップで、そうした展開とかを頑なに拒むバンドもいると思うんですが、時雨にとってはむしろいいタイミングだったと。

TK そうですね。僕自身、1曲に集中するほうが好きだったりしますし、1曲を聴いてもらえると聴こえ方が違ってくる感じがするんですね。まあ、元々全曲シングルと思いながら作ってるというか、どこを取っても自分をちゃんと伝えられるものを作っているんで、本来は1曲で出すほうが好きだったりはしますね。

ニューシングル「abnormalize」/ 2012年11月14日発売 / Sony Music Associated Records

CD収録曲
  1. abnormalize
  2. make up syndrome
  3. abnormalize(TV edit)
    期間生産限定盤のみ収録
期間生産限定盤DVD収録内容
  1. abnormalize(music video)
  2. 「PSYCHO-PASS サイコパス」non-credit opening movie
凛として時雨(りんとしてしぐれ)

TK(Vo,G)、345(B,Vo)の男女ツインボーカルとピエール中野(Dr)からなる3ピースバンド。2002年に地元・埼玉で結成し、2005年に自身で立ち上げたレーベル「中野Records」よりアルバム「#4」をリリース。その後も順調にライブの動員を増やし続け、2008年12月に1曲入りシングル「moment A rhythm」でメジャー移籍を果たす。 狂気がにじむギターロックの地平を、USオルタナ~エモ直系の金属的な轟音で爆撃するサウンドは、多くのファンを魅了。2010年4月にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功に収めた。同年5月には初のイギリスツアーを敢行。9月にリリースした4枚目のフルアルバム「still a Sigure virgin?」はオリコンウィークリーチャート1位を記録した。2012年11月、約2年ぶりの新作音源となるシングル「abnormalize」をリリースする。