ナタリー PowerPush - 凛として時雨

TK「PSYCHO-PASS サイコパス」対談

時雨は何にも似ていない

──そもそも山本さんが他のアーティストにない、時雨に感じている魅力ってどんなところですか。

インタビュー写真

山本 アニメでオリジナルの作品を作るときでも、何かに似てしまうってあるじゃないですか。でも時雨は何にも似ていないっていうのが好きな一番のポイントなので。逆に訊きたいんですけど、そのへんってどうなんですか? 「そうしよう」と思ってやってるのか、ナチュラルにやるとそうなるのか。

TK 多分ギターロックシーンの中で特異な存在であろうとするんであれば、もっと特異なことをすると思うんですよね。

山本 素晴らしいですね。

TK おかしなことをするほうが多分簡単だと思うんですよ、狙って。だけど時雨が特殊なのは、僕が元々あんまり新しいものをインプットしにくいっていうところで、自分の中で自分の音楽がずっとループしてる感じなんで、それがこう突き進み過ぎて、自分では普通の音楽をやってるつもりなんですけど、いつの間にかこう……。

山本 はい。

TK 僕の中でのポップっていう感じがこうなっちゃったという(笑)。昔からJ-POPとかも好きで聴きますし。

山本 そうなんですね。

TK やっぱりメロディがきれいなものが好きなんで。いろんなギターのとがった音だったり、声だったりっていうのが入っているのでそういう部分が見えづらくなってるんですけど、根底にあるのはすごくシンプルなものだと自分には思えるんですけどね。

山本 映像とか音楽もそうなんですけど、作品ってひとつ作ると吐き出しちゃうから、その後どうするか?みたいな。30年選手とかになるとずっと同じであるということが良かったりしますけど、そこに行くまでにはとても時間がかかる。その「らしさ」みたいなものと他の音楽との戦い……アニメで言えば今アニメファンに受けている要素に似ていない、個性的な企画であろうと思って戦うような。時雨はそういうところをクリアして、何にも似てないところがホントにいいなあと思うんですけどね。

売れる要素を内包しながら、ほかに似ないようにする

TK 他のアニメとかって意識されますか?

山本 僕はせざるを得ないんですよね。だから「似てないように、似てないように」ってことを考えるんですけど、やっぱり今のアニメの作り方って、「こういうのは売れる」ってことの積み重ねなので、それをやってくと似るじゃないですか? そういう、売れる要素は内包してるんだけど似てないようにくるむ、っていうのが結構難しいんですよね。

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TK 元々アニメっていうものが好きで、山本さんの中で作りたいアニメってのがあって、それに対して例えばそういう「売れなきゃいけない」とか「似てないようにしなきゃいけない」って物事をずっと考えていったときに、自分が元々作りたかったものってなんだったっけな?って振り返るタイミングとかもあるんですか?

山本 そうですねえ……なんか僕の取材みたいになってますけど(笑)。

TK ハハハ(笑)。

山本 いいパスを出していただいたんで(笑)答えると、プロデューサーという役割的に言うと、年間に僕は今8クールあるんで。4クールの30分枠を2段やってるんです、関わり方の濃淡はありますけど。昔はクリエーターがビビらずに振りかぶって投げられるみたいな環境作りが大事だと思っていたんで、ウチの方針としてはそんなに手堅くいかなくていいから、っていうのをやろうとしてたんですね。でも今は逆に「やっぱ自分で作んないとダメだな」とは思い出してるんですよ。

TK はい。

山本 ま、どこまで行っても人が作ってるんで。「自分で作りたい」っていう、どっちかっていうとシンプルな思いになってきてるんですよね。なんでそろそろプロデューサーは引退して……。

TK 引退ですか?(笑)

山本 自分でちゃんと作るとこに行かないと先がないなというふうに思い始めたっていう、ま、僕の話はいいんですけど(笑)。

──いやいや(笑)。役割の違いはあると思いますけど、共通点は感じます。山本さんはテレビっていうマスメディアでこうした個に向けた作品を投げかけてらっしゃるし、時雨もメジャーシーンでそうしたスタンスをとっていると思うので。

山本 まあ、そうですね。

ニューシングル「abnormalize」/ 2012年11月14日発売 / Sony Music Associated Records

CD収録曲
  1. abnormalize
  2. make up syndrome
  3. abnormalize(TV edit)
    期間生産限定盤のみ収録
期間生産限定盤DVD収録内容
  1. abnormalize(music video)
  2. 「PSYCHO-PASS サイコパス」non-credit opening movie
凛として時雨(りんとしてしぐれ)

TK(Vo,G)、345(B,Vo)の男女ツインボーカルとピエール中野(Dr)からなる3ピースバンド。2002年に地元・埼玉で結成し、2005年に自身で立ち上げたレーベル「中野Records」よりアルバム「#4」をリリース。その後も順調にライブの動員を増やし続け、2008年12月に1曲入りシングル「moment A rhythm」でメジャー移籍を果たす。 狂気がにじむギターロックの地平を、USオルタナ~エモ直系の金属的な轟音で爆撃するサウンドは、多くのファンを魅了。2010年4月にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功に収めた。同年5月には初のイギリスツアーを敢行。9月にリリースした4枚目のフルアルバム「still a Sigure virgin?」はオリコンウィークリーチャート1位を記録した。2012年11月、約2年ぶりの新作音源となるシングル「abnormalize」をリリースする。