柴田淳|リスペクトを込めて挑んだ十八番たち

柴田淳が7月24日にカバーアルバム「おはこ」をリリースした。

2012年にリリースされ、大きな話題を呼んだ初のカバーアルバム「COVER 70's」から約7年。多くのファンからのリクエストの声を受け、待望のカバーアルバム第2弾が到着することとなった。本作にはジュディ・オング「魅せられて」やテレサ・テン「つぐない」、梅沢富美男「夢芝居」、欧陽菲菲「ラヴ・イズ・オーヴァー」など、柴田が“おはこ=十八番”にしている昭和の名曲たち全10曲を収録。各楽曲の世界を原曲へのリスペクトを込めながら、自分の声で染め上げていく、柴田の繊細で存在感のある歌をじっくりと堪能できる。音楽ナタリーでは、2度目のカバーアルバムの制作に込めた思いを柴田に聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 須田卓馬

「あ、ニーズはあるんだな」「求められてはいるんだな」

──ちょっと前の話になりますけど、今年2月に約6年ぶりとなるホールツアー「JUN SHIBATA CONCERT TOUR 2019 月夜PARTY vol.5 ~お久しぶりっ子、6年ぶりっ子~」が開催されました。東京公演を拝見しましたが、すごく楽しそうに歌われている柴田さんの姿が印象的で。

うん、すごく楽しかったです。今回のツアーのスタッフ周りはほぼ初めましての方々だったんですけど、皆さんパーフェクトなお仕事をしてくださって。中でもPAは今までにないほどにいい環境を作ってくださったんですよ。今までPAがあまりうまくいかないことが多くて、だからライブ自体がちょっと苦手になってしまったところがあったんです。でも今回はものすごい安心感の中で歌わせていただくことができて、自分の歌詞間違いだけを心配していればよかったっていう(笑)。本当にすぐまたライブをやりたいなって思うくらい、楽しいツアーになりましたね。

柴田淳

──そんな充実したツアーのファイナルで予告されていたのが、今回リリースされるカバーアルバム「おはこ」です。大きな反響を呼んだ前作「COVER 70's」から約7年ぶりとなるカバーアルバム第2弾ですね。

はい。今回のカバーアルバムのプロジェクトに関しては、実は一昨年の暮れくらいから動き出してはいたんですよ。去年の2月か3月に、オリジナルアルバム「ブライニクル」(2018年10月リリース)のジャケットと同時に今回のカバーアルバムの撮影をしてましたからね。内容に関しても、「COVER 70's」と同様に基本的には原曲のアレンジをそのまま踏襲して、歌で勝負するコンセプトでやることを決めていたので、「ブライニクル」と並行して作っていけば今年2月のツアー中にはリリースできるんじゃないかなとなんとなく思っていたわけです。でも蓋を開けてみたら「ブライニクル」の制作がかなり難航して、カバーアルバムまで手が回らなくなってしまい。結局はツアーが終わった2月末から5月頭くらいまで歌入れをして、そこからミックス、マスタリングをしてようやく今に至る感じで。なんだかんだで1年半くらいかかっちゃったんですよね(笑)。

──無事、リリースにこぎつけてよかったです。そもそも7年ぶりにカバーアルバムを出そうと思ったのはどうしてだったんでしょう?

現実的なことを言うと、「そろそろまた出しませんか?」っていうお話をビクターさんからいただいたからです(笑)。

──そういった声はファンからもたくさん上がっていたんじゃないですか?

うん。「COVER 70's」を出した直後からものすごくありました。「次は80年代の曲をカバーしてください」とかいろんな声をいただいて。そこで、「あ、ニーズはあるんだな」「求められてはいるんだな」という思いはあったんです。ただ、私はシンガーソングライターだからちょっと抵抗しないとカッコ悪いかなと思っちゃったんですよ(笑)。オリジナルアルバムをしっかり作り続けないで人様の歌ばっかり歌ってたら、なんとなくがんばってないように思えちゃうじゃないですか。

──でも柴田さんはこの7年で4枚のオリジナルアルバムをコンスタントにリリースされていましたからね。がんばってないと思う人なんていないと思いますけど。

そうなんですかね? まあでも、前回のカバーアルバムから時間も経ったし、そろそろいいのかなって自分でも思えたところはありました。

柴田淳 柴田淳

──シンガーだけに徹して好きな曲だけを歌えるカバーアルバムをリリースできることは、ある意味、ご褒美のような感覚もあるんじゃないかなと思ったりもするんですけど、そんなことないですか?

いや、ホントにそういう感覚はありました。言い方はアレですけど、なんだか仕事っていう感覚じゃないというかね(笑)。もちろんこだわりは注ぎますけど、オリジナルアルバムを作るのとはまた違った楽しさがあるという。そもそも皆さんから求められてカバーアルバムを作れるなんて、そんなありがたい話もないですから。求められているうちが華だからやるべきかなと思えたところもあったんですよね。

──「COVER 70's」はタイトル通り、70年代の曲縛りで編まれたアルバムでしたが、今回は幅広い年代の昭和の名曲たちが収録されています。どのように選曲していったんでしょう?

今回は自分の得意な曲を歌う、“おはこ(十八番)”をまとめたアルバムというコンセプトにしたんです。ただね、実際選曲をしていくと全然曲数が足りなかったんですよ。前回かなり歌ってしまったこともあり、意外と十八番が少なかったっていう(笑)。だから、十八番とまではいかないけど大好きでよく口ずさんでいた曲だとか、スタッフからのリクエストを参考にして、これから十八番にしていきたい曲なんかも入れていくことにしたんですよね。結果、曲のラインナップを眺めてみると、ひねくれものの私っぽい選曲になってるなと思いました(笑)。