柴田淳 苦難の果てに取り戻した“私の声

本来の声で歌えている実感

──アルバムのラストには「嘆きの丘」という感動的な1曲が。温かなメッセージが込められた愛の歌だと思います。

鋭さとか怒りとかを感じさせるアルバムですけど、この曲が最後にあることで救いになってるかなって思います。私は初期の頃からとにかく感情ばかりを描きがちで、情景描写が苦手だったんですよ。でもこの曲は最初から最後まで情景描写で書くことができたので、自分としてはすごくうれしいんですよね。今回も制作過程ではいろんなことがあったので、できたときには思わず泣いてしまったくらいで。それくらい大事な1曲になりました。皆さんにはぜひ、目をつぶって情景を思い浮かべながら聴いてもらいたいなって思いますね。

──あとは歌に関しても聞かせてください。ブログを拝見したところ、レコーディング中には思うように声が出なくなるアクシデントもあったそうですね。

柴田淳

そうなんですよ。制作行程が後ろ倒しになってしまったこととか、いろんなことのストレスによるものだと思うんですけどね。「夜明けの晩」なんかは一番声が出なかったときに録りましたから。ただ、そういう大変なレコーディングだったにもかかわらず、今回は全体的に自分の本来の声で歌えている実感もあるんですよね。

──これまでは本来の声が薄まってしまっていたところもある?

うん。自分の声が本来持っている成分をしっかり録音しようと思って、ああでもないこうでもないと細かく調整しているうちに、声がどんどん変わってしまうことが多くて。日本酒で例えるなら、純米酒を作りたいのに削られて大吟醸になってしまう、みたいな(笑)。でも今回は、スタジオとの相性なのか、マイクのコンディションなのか、気候なのか気温なのか、はたまた私の体調や年齢なのか、理由はわからないんですけど、「あー」って一声出した瞬間に、「これで大丈夫! 調整必要ないです!」ってわかったんですよ。で、実際録ったものを聴いても、自分の持っているハスキーな成分がちゃんと出ているなって思えるものになっていて。

──確かに本作に収められたボーカルはいつにも増して生々しく、繊細に響いてくる印象があると思います。

すべての曲を録り終えたときに、確認のために歌を大きめにミックスした音源をエンジニアさんが作ってくれて。それを車で高速を走りながら聴いたんですけど、もう自分でも惚れ惚れしちゃったと言うか(笑)。「これこれ! これが私の歌です!」って思いながら、高速を下りずに何度もリピートして聴いちゃったくらいで。私は自分の声がこんなに好きだったんだなって改めて思えたんですよね。

──ファンの方々にもそこを感じてもらえたらいいですね。

うん。もちろんCDはサウンドも含めたバランスを考えてミックスをされたものにはなっているけど、確実に今までで一番いい歌のパフォーマンスが収められていると思います。なんかね、毎日自撮りの顔写真をインスタにアップしてる人の気持ちがちょっとわかっちゃったって言うか(笑)。私も自分の声をみんなにアピールしたいですもん。自画自賛ですけど。あははは(笑)。アルバムが完成した瞬間、みんなに聴いてもらいたいって本気で思えたので、たくさんの人に届くといいなって思います。

ライブをやれば、私もちゃんとミュージシャンっぽくなるのかな?

──柴田さんのアルバム制作は毎回、いろんな困難がつきものですが(笑)、最終的にはその時点でのベストな作品が必ず生まれますよね。

ね! 終わりよければすべてよしって感じですよね。この制作はどうなっちゃうんだろうと思って、泣きながらビクターに電話したこともありましたけど(笑)、ちゃんと完成までたどり着けましたからね。人生って、いいことが起こる前には必ず悪いことが起きるものだと思うんです。だからこれからも何があってもひるまずに、そのあとに待っているいいことを楽しみにしながら前に進んでいこうと思います! 何が起きても、きっといいアルバムは作れるんだからっていう(笑)。

──そして、来年2月には待望のツアー「JUN SHIBATA CONCERT TOUR 2019 月夜 PARTY vol.5 ~お久しぶりっ子、6年ぶりっ子~」が決定しました。タイトルにある通り、6年ぶりのツアーとなります。

はい。曲を作ることが歌手としての自信になっているところはもちろんありますが、それだけだとお家にいるだけですからね(笑)。より強く歌手としての自覚を持つためには、やっぱりライブをやらなきゃなって思いました。ライブをやれば、私もちゃんとミュージシャンっぽくなるのかなって。

──いや、ライブをやらなくても紛うことなきミュージシャンですけどね(笑)。でもライブをやってくれるのはファンとしては単純にすごくうれしいことだと思います。

私はひねくれてるので、ライブをたくさんやってるアーティストの方のTwitterを見ると、思わず嫉妬してしまったり、疎外感を感じてしまうことがよくあって。でもわかったんです。そう感じるのは自分が何もやってないからだって。だったらやればいいじゃんって。なので、このツアーを皮切りに、コンスタントにライブを続けていきたいなっていう青写真を描いたりはしてますね。ゲッターズ飯田さんにも、ライブをやると運気が上がると言われたので、それを信じてやっていこうと思います!

柴田淳
 
ライブ情報
JUN SHIBATA CONCERT TOUR 2019 月夜PARTY vol.5~お久しぶりっ子、6年ぶりっ子~
  • 2019年2月2日(土) 愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
  • 2019年2月8日(金) 福岡県 福岡市民会館
  • 2019年2月14日(木) 大阪府 オリックス劇場
  • 2019年2月27日(水) 東京都 NHKホール