柴田淳|自分と向き合い、えぐり出した本音

自分としてはヤバイ曲を書いてしまった

──6曲目の「容疑者ギタリスト~拝啓、王子様☆第四話~」は、柴田さんが書き続けている“王子様☆”シリーズの最新話です。約10年ぶりの収録になるので、ファンは歓喜するんじゃないですかね。

実はこのシリーズ、10話まであるんですよ。で、すべてそろったら「王子様☆」っていうアルバムを作ってもらおうかなっていう構想があって。ひさしぶりの最新話は衝撃的な展開になりましたけどね。誰も止めてくれなかったからこうなったんですけど、自分的には「いいのかな?」みたいな(笑)。

──リスナーにはタイトルから内容を想像してもらいたいですけど、急展開ですよね。

うん。3話分くらい飛ばしちゃったかも(笑)。まあでも、1話から出てたギタリストにそろそろしゃべらせてあげようと思ってたんで。

──ほかの楽曲とはかなり毛色が違いますけど、作るのは大変ではないんですか?

こういう小説みたいな物語に合うメロディが書けないと作ることはできないんですけど、今回は逆に、「歌詞付けようがないな」ってメロディができたことで「あ、これは王子様☆だ! 王子様☆があったわ!」と思って(笑)。すごく楽しかったんで、すぐ書けました。ちなみにワイドショーが歌詞の中に登場するんですけど、そこを書いてるときにちょうどテレビで「ひるおび!」やってたんで情景描写がうまくできたと思います。「ひるおび!」さんには勝手に感謝してます(笑)。この王子様☆シリーズを元に、いつかドラマを作ってもらえたらいいなって思ってるんですけどねー。それにはもっとアーティストとしてのレベルを上げなきゃ。

──その際には柴田さん主演で。

私が? ダメダメダメ。ムリムリ!(笑)

柴田淳

──あともう1曲、「バースデー」についても伺わせてください。歌詞はかなり切り込んだ内容になっていますよね。

これは一番大胆な歌になったなと思っていて……ヤバイ曲を書いてしまったなと。ミュージシャンの方々にはメロディは大好評だったんですけど、内容に関しては案の定スルーされてしまったという。それくらい触れにくいテーマなんだなって思いました。

──大きく言うと“女性”がテーマですよね。

そう。私自身、アラフォー世代の女性で独身なわけですけど、決して結婚も出産もあきらめたわけじゃない。でも、現実的にはタイムリミットが近付いてきていることも感じている。そういったデリケートな問題で葛藤してる女性ってけっこう多いと思うんですよね。そこには軽々しく触れられない気持ちもあるけど、私は自分自身もそうだっていうことで曲として書いてもいいかなと思ったんです。自分自身も認めずにいた思いを少しでも開放できたらいいなと思って。これを書いたときはなんだか泣けちゃいましたね。

──そこには真摯な深いテーマが存在していますが、曲としてはいろんな物語として受け取れる描かれ方をしていますね。

そうですね。子供と離れ離れになった親の歌って受け取る方がいても全然いいし、いろんな想像をして聴いてもらえたらいいなって思います。そんな中で、誰にも触れられたくない、認めたくないと思って自分だけで堪えていた人がこの曲を聴いて泣いてくれたらすごくうれしいなって思う。「そうだよね」って共感してくれたら本望ですね。この曲に関しては女性にこそ届けばいいなって思います。

普通に、平坦に「私は幸せ」

──「バースデー」のあとにはインストの「Present」という曲が収録されていて。柴田さんご自身がキーボードで演奏するオルゴールのような音が優しい余韻を感じさせるエンディングとなっています。

全体的にものすごく激しい、キツいアルバムになるような気がしていたので、最初は合間に何曲かインストを入れようと思ってたんですよ。でもうまく入れられなかったから1曲だけ最後に入れたんです。「バースデー」がちょっと重いテーマの曲でもあるので、私のたどたどしい演奏でホッとしてもらえたらなって。

──子供をあやすオルゴールのような印象もあるので、「バースデー」のテーマと紐付けるとこみ上げるものもありましたよ。

あー、確かにそうですよね、うん。タイトルが「Present」ですしね。「なんでこれにしたんだろう?」って言うくらい自然に出てきたタイトルでしたし、収録する場所もパッと決めましたから。

──制作過程ではいろいろ大変なことがあったようですが、ひさびさのアルバムはすごく素敵な仕上がりだと思います。このあとについては何か思い描いていることはありますか?

独立して以降、私のお尻を叩く人がいないので(笑)、なかなかツアーの予定も組めずにいて。でもライブを通して表舞台に立たない時間が長いと一般人の感覚になってアーティストとしての自信もどんどんなくなってしまうんですよ。だから目の前にお客さんのいる風景を見て感覚を取り戻すために、ここからはライブをできるだけやっていきたいなとは思ってます。

──じゃあ、もう休むことは考えてないと。

そうですね。仕事をしていないと気持ちが不安定になってしまうところもあるんですよ。私は休みを過ごすのが下手クソなので、もう休みはいいかなと。プライベートも特に何もないんでね(笑)。いろいろお仕事を詰め込んでいきたいです。リリースに関してもペースを上げられたらいいですよね。

──ファンとしてはそれはすごくうれしいことですよね。

ゲッターズ飯田さんによると今年の下半期から運気がどんどんよくなって、来年から8年くらいはずっと調子がいいらしいんですよ。そういう情報に私はすぐ洗脳されるんで(笑)、その波にしっかり乗っていきたいと思ってます。「疲れた!」とか「もうやりたくない!」とかそういう感情は今、一切ないのでメンタルはちゃんと復活してますしね。それを信じてがんばっていこうと思ってます!

──最後に、今の柴田さんが今回のアルバムタイトルを読むとしたらどんなアクセントで?

普通に、平坦に「私は幸せ」って読みます。最後に「?」が付く疑問形ではないですね(笑)。

柴田淳
柴田淳「私は幸せ」
2017年9月20日発売 / Victor Entertainment
柴田淳「私は幸せ」初回限定盤

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収録曲
  1. 理由
  2. 両片想い
  3. 手のひらサイズ
  4. 嫌いな女
  5. 容疑者ギタリスト~拝啓、王子様☆第四話~
  6. 誰にも言わない
  7. いくじなし
  8. バースデー
  9. Present

ライブ情報

柴田淳ニューアルバム「私は幸せ」発売記念イベント「フリーライブ&特典お渡し会」

2017年9月24日(日)
東京都 ヴィーナスフォート 教会広場
START 15:00

柴田淳(シバタジュン)
柴田淳
1976年生まれ、東京都出身の女性シンガーソングライター。幼少期からピアノを習い、音楽に親しみながら育つ。2001年10月にシングル「ぼくの味方」でメジャーデビュー。2002年3月に1stアルバム「オールトの雲」を発表する。以降もコンスタントに作品を発表し続け、2008年9月には映画「おろち」のテーマソング「愛をする人」を書き下ろし、音楽ファン以外の注目も集めた。透明感のあるボーカルと、女性の情念を繊細に描いた詞世界が支持されている。CHEMISTRYや中島美嘉らへ楽曲提供を行うなど、作曲家としても活躍中。デビュー10周年を迎えた2012年10月に、初のカバーアルバム「COVER 70's」を発表し、ボーカリストとしても高い評価を得る。2013年3月に9枚目となるオリジナルアルバム「あなたと見た夢 君のいない朝」、2014年12月に10作目となるアルバム「バビルサの牙」を発表。2015年11月にデビュー15周年企画の一環でベストアルバム「All Time Request BEST ~しばづくし~」をリリースした。2017年9月に11枚目となるオリジナルアルバム「私は幸せ」を発表。