ナタリー PowerPush - 柴田淳
「ありのままの自分を出しきった」しばじゅん赤裸々インタビュー
新作はヘアヌード写真集みたい
──カバーアルバムでシンガーとしての自信を手に入れたあとのオリジナルアルバムが、ある種柴田さんの原点を再確認する内容になったというのは、大きな意味がありそうですね。
そうですね。今回は制作のスケジュール的にけっこうタイトだったので、こう思われたらどうしようとか、そういうことを考える時間がなかったんです。だから「えいや!」って振り切ったものを出しちゃった感じ。そういう潔さのあるアルバムだと思うから、どんな反応が来るかがちょっと怖いけど、楽しみではあります。
──変な小細工をすることなく、リアルな柴田淳がゴロッと出てるわけですもんね。
ほんとに私、そのまんまですよ。計算もなく、狙ってもなくありのままを出しちゃったからね、ヘアヌード写真集みたいな感覚ですよ。脱いじゃいました、みたいな(笑)。まあでも、あらわになった私のいろんな感情を、アレンジャーさんがサウンド面でバランスを取ってくれた感じはありますけどね。
──包み隠さず、自分のすべてをあらわにする怖さはないですか?
それはないですね。逆に快感。だから私って露出狂なんだと思う。
──あははは(笑)。
今回はほんとにそういう気持ちですべてを脱いだから、女性にこそ聴いてほしい作品にもなったと思いますね。女の子が強がってがんばってる部分、例えば自分ではもう乗り越えた、もう忘れたと思ってても心のどこかではずっと引っかかってることがあったりとか、そういうところに響いちゃう曲が多いんじゃないかなって。で、そういう曲を男性が聴くと痛いところを突かれるみたいですよ(笑)。
──うん。グサッとくる曲がいくつかありました。
だからTwitterでも「男性は覚悟して聴いてください」って書いたんです。そうしたらそれがものすごい数リツイートされて(笑)。いろんな意味でみんな楽しみにしてくれるみたいなので、すごくうれしいです。
得た自信は1cmくらい
──ボーカルに関して、本作ではどう向き合いましたか?
「COVER 70's」では自分でも納得のいくボーカルが録れたので、それを経た初めてのオリジナルアルバムで私はいったいどんな歌を歌うんだろうっていうのがちょっと楽しみだったんですよ。気持ち的にはさらに上を目指して臨むことができたので、自分の歌にあった変なクセも取り払うことができたと思いますし、結果的に今回もすごくいいテイクがたくさん録れました。ただ、いい歌が録れすぎてしまったので、セレクトに時間がかかってしまったっていう(笑)。テイクを選ぶのにお昼から次の日の朝までかかっちゃったこともありましたね。あとは、自分の作るメロディは相変わらず難しいなっていうことを改めて実感しました。シンガーソングライター柴田淳を消化するのが大変でした。難しいです、柴田淳は(笑)。
──かつてシンガーとしての挫折を味わったというイベントライブと同様に、「恋人よ」という曲ではピアノとチェロのみのシンプルなサウンドをバックに歌声を披露されていますよね。これがすごくよかったんですよ。
ああ、ありがとうございます。うれしいです。
──本作を通して、また新たな自信を手にした実感もあるのでは?
(親指と人差し指で1センチくらいの隙間を作りながら)これくらいの自信は出たと思います。
──え、それだけですか?
うん。自分としては「自信が1センチはある」っていう言い方に勇気づけられるんですよね。で、このアルバムがリリースされたことで、「COVER 70's」のときのようにご新規のファンが増えてくれたりすれば、そこでまた新たな自信が生まれていくと思うので。やっぱり人の反応がうれしいですからね。
──楽しみですね。
うん。知名度が上がるといいですよねえ(笑)。すでに知ってる人は相当マニアックだと思いますけどね(笑)。
──いや、皆さん知ってるとは思いますけどね。
そうかな。あ、でも前に一度、ONE OK ROCKのボーカルのTakaさんにご挨拶させてもらったことがあったんですけど、そのときに彼は私のことを知ってくれてて、それはちょっとうれしかったですね。私は、Takaさんの歌唱力ってハンパないし、尊敬しているので、そんな自分の認めてるアーティストに聴いてもらえてるというのも、とても自信につながるんだなと思いました。そうやってもっともっといろんな人に聴いてもらえる歌手になっていけたらと思いましたね。
- ニューアルバム「あなたと見た夢 君のいない朝」 / 2013年3月27日発売 / ビクターエンタテインメント
- 初回限定盤 [CD] / 3780円 / VIZL-525
- 通常盤 [CD] / 3150円 / VICL-64009
収録曲
- ノマド
- あなたの手
- 雲海
- 恋人よ
- 冷めたスープ
- 嘘
- 朝靄
- 魔女の話
- 道
- キャッチボール
柴田淳(しばたじゅん)
1976年生まれ、東京都出身の女性シンガーソングライター。幼少期からピアノを習い、音楽に親しみながら育つ。2001年10月にシングル「ぼくの味方」でメジャーデビュー。2002年3月に1stアルバム「オールトの雲」を発表する。以降もコンスタントに作品を発表し続け、2005年9月には初のシングルコレクションアルバム「Single Collection」をリリース。2008年9月には映画「おろち」のテーマソング「愛をする人」を書き下ろし、音楽ファン以外の注目も集めた。透明感のあるボーカルと、女性の情念を繊細に描いた詞世界が支持されている。CHEMISTRYや中島美嘉らへ楽曲提供を行うなど、作曲家としても活躍中。デビュー10周年を迎えた2012年10月に、初のカバーアルバム「COVER 70's」を発表し、ボーカリストとしても高い評価を得る。2013年3月に9枚目となるオリジナルアルバム「あなたと見た夢 君のいない朝」をリリース。