椎名林檎「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」 PR

椎名林檎「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」インタビュー|12年ぶりツアー、リオ閉会式、カルテット主題歌 マルチに活躍する“プロお母さん”の本音

帰ってきた宇多田ヒカル、かわいい!

──リオの前後もCM、主題歌、ほかのアーティストへの提供曲と、さまざまなオファーに応えています。

ありがたいことにここ最近の多くは、先方が「音楽的に得意分野なはず」とのご判断でご依頼くださったようで、具体的にサウンドのリクエストをいただく場合が多かったです。唯一、SMAPの「華麗なる逆襲」は作詞作編曲すべてにおいて任せていただきましたが。「おとなの掟」はプロデューサーの佐橋佳幸さんからのリクエストを伺ったら、アップル・レコード時代のポール・マッカートニーの筆致が求められているのだと解釈できました。だからポールのルーツとおぼしきものの中でも“ロマン派”で書こうと。で、しっかり認識していただきたい主演の皆さんの四声がありましたから、楽器の音は最小限まで減らそうとか、構造的なアプローチから入りました。「昭和元禄落語心中」の主題歌は、林原めぐみさんのお芝居のほうの声が素晴らしかったので、その話し声のキーで作曲しましたし、澁江夏奈さんによる劇伴も素晴らしかったので、アニメ作品の世界になじむ編成を心がけました。

──近年の椎名ワークスにとって、村田陽一さんと斎藤ネコさんの両氏は特に重要なキーパーソンという印象を受けます。

そうですね。高校1年生くらいからずっと同じ作業を続けているものの、まだまだ学ぶべきことが山積みなのです。村田先生やネコ先生が、現場でなさるすべてが教材です。例えフレーズやハーモニーがデモのままであっても、ご一緒いただくと必ず何かお土産をいただけます。

──16年の8月には事変のメンバーとレコーディングした「ジユーダム」をリリースして、同年の紅白(「NHK紅白歌合戦」)では「青春の瞬き」を一緒に演奏しました。今の椎名さんにとって彼らはどんな存在なのでしょうか?

閏年で五輪イヤーだったから(笑)。別にいつも一緒にいたっていいんですけど、そうすると解散した意味がないでしょう。亀田さんはもともとそうですけど、それぞれ個々に活躍できるからこそ解散したので、みんなが充実している合間を縫って、ときどき、特別な節目に集まることができればいいなって、私は勝手に思っています。

──同年9月には宇多田さんのアルバム「Fantôme」で「二時間だけのバカンス」をデュエットしました(参照:宇多田ヒカル最新アルバムに椎名林檎、KOHH、小袋成彬が参加)。前回のPower Pushで椎名さんも待望していた宇多田ヒカルさんの帰還が実現しました(参照:椎名林檎「日出処」インタビュー)。どうですか、帰ってきた宇多田さんは?

かわいい!

──なんじゃそりゃ(笑)。

もう少年みたいで好き! やれ音楽シーンがどうだ、寂しいだと言いましたけど、シンプルに言えば好きだから帰ってきてほしかっただけです。寂しかったから。会いたくて会いたくて震えてたから(笑)。そこにあまり理屈は無いんですよねえ。私、女の子はカッコよくなきゃいけなくて、男の子はかわいくなきゃいけないって思っているの。

──ああ、なんかわかります、それ。

でしょ? 女性で少年マンガのヒロインみたいな人が好きなの。MIKIKO先生やヒカルちゃんの好きなところです。私、「ビッグコミックスピリッツ」育ちだし(笑)。

──あのデュエット曲しかり、妻同士、母同士、より共通の話題も増えましたか?

なんでも話していると思います(笑)。

──でもそういう意味では宇多田さんと小沢さんの復帰は、椎名さんの日常にちょっとした彩りを添えてくれたようですね。

だいぶですよ。うれしいです。本当はいろんな状況が伴えば、お二人共リオに参加してほしかったぐらいですし。

──おお!(笑) しかし思えばお二人然り、「目抜き通り」のトータス松本さんも、皆さん旧東芝EMIのレーベルメイトだったんですものね。

ああ、ほんとだ。EMIのタイトル群、豊かですね。まあ私だってまだ17歳だったのに、生意気にも「あのレーベルじゃないと嫌だ」って専願していましたしね。しかも10代の頃から何度もお伝えしてきた通り、松本さんと松たか子さんへ当て書きさせていただくなんて、ここ最近、立て続けに大きな夢が叶ってしまって、ちょっと怖い(笑)。

──ちなみに最近だとこの人に書いてみたいという方は?

押しかけてでも書きたいのは中条あやみちゃんですね。もちろん、満島ひかりちゃんの「おとなの掟」とは別な感じもお聴きしてみたいし、早見あかりちゃんも。

椎名林檎「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」のワンシーン。

「目抜き通り」は“カルテット~その後~”

──それにしても「カルテット」は面白かったですねえ。

本当ですよねえ……(椎名、おもむろに私物のバッグからドラマの公式ガイドブックを取り出す)。

──なんで持ち歩いてんの!?

こないだ友人たちと軽井沢で聖地巡礼をしてきたんです。「ミュージックステーション」出演の週の火曜日に、向こうで全話一気に観て。基本的に2話ずつ観て小休止していたのですが、“神回”でみんな大泣きしちゃって「7、8話連チャンはヤバい。1回ずつで止めよう」と。

──まあそこは激しく同意ですけど。

でしょ? で、お芝居も実際にやってみたんですよ。あのコンビニで、すずめちゃん(満島ひかり演じる世吹すずめ)が真紀さん(松たか子演じる早乙女真紀)を捕まえて「行かないで」って言うシーンの直前ですよ。同じようにコンビニをぐるっと回っていたら、お店のおじさんに「もっと速かった」ってダメ出しされちゃって。

──何やってんだよ椎名林檎!(笑)

そこで「目抜き通り」の歌詞を読み直していただきたい。あれ、実は“カルテット~その後~”という体で書いたんです。

──そうだったんだ!?

ドラマへの愛は最終回の熱海へ向かう車中の歌唱シーンで十分昇華されたんですけど、このG SIX(GINZA SIX。4月に東京・銀座にオープンした複合施設)のCM音楽をご依頼いただいたとき、さんざんキャスティングへ物申しましたよね。「カルテットのあの4人を銀座へそろえるべし! 広告がより早く長く効くはずだ!」と。まあ夢のキャスティングを諦めはしたものの、あの4人の物語のエンドロールを兼ねる曲として書くのは諦めませんでしたよ。毎度のことながら、サウンド自体はあんまりアメリカンではありませんが、ボーカルについては、松本さんにお願いした以上、モータウンのマナーに則ったつもりです。主旋律が4小節ごと入れ替わる途中の作り含め、私はタミー・テレルになる覚悟で2声を書きました。

──なるほどなあ……しかしこれほどシングルや提供曲が溜まってくると、ニューアルバムやセルフカバーアルバム「逆輸入 ~港湾局~」の続編も夢見てしまいます(参照:椎名林檎初セルフカバー集に大友良英、前山田健一ら11人)。今後の活動については?

目の前の仕事に邁進しようと思います。

──なんで急に定型文?

いや、「なんかやらなきゃいけないことが山積みだなあ」と思ったらぼーっとしてきちゃって(笑)。さすがにシングルと提供曲が続いたので、近くどこかでパッケージにしなきゃいけません。

──期待しています。それにしても見事な有言実行というか、やはり前回のPower Pushで宣言していた通り、まさしく“目抜き通り”における活躍の場が増えましたね。

ようやくでしょうか。だからこそもっと勉強したいです。でも、本当に「おとなの掟」は大きかった。「あの声のせいで林檎食わず嫌いだったけど、松たか子の声だとすごくいい」とおっしゃるお客さんの声をSNSで目にしたとき、“おふくろの味”がいよいよ報われた気がしました。誰かへバトンを手渡すまで、もう少し戦うことになるのでしょうか。

椎名林檎
「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」
2017年5月31日発売 / EMI RECORDS
椎名林檎「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」Blu-ray

[Blu-ray2枚組]
7020円 / UPXH-20053~4

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椎名林檎「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」DVD

[DVD2枚組]
5940円 / UPBH-20186~7

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DISC 1 収録内容

椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015

  1. 凡才肌
  2. やさしい哲学
  3. いろはにほへと
  4. 尖った手□
  5. 労働者
  6. 走れゎナンバー
  7. 神様、仏様
  8. 現実に於て
  9. 現実を嗤う
  10. SG ~Superficial Gossip~
  11. 熱愛発覚中
  12. とりこし苦労
  13. 至上の人生
  14. ブラックアウト
  15. 迷彩
  16. 罪と罰
  17. 夢の途中
  18. Σ
  19. 警告
  20. マヤカシ優男
  21. 名うての泥棒猫
  22. 真夜中は純潔
  23. きらきら武士
  24. 御祭騒ぎ
  25. 長く短い祭
  26. 群青日和
  27. NIPPON
  28. 逆さに数えて
  29. 虚言症
DISC 2 収録内容

椎名林檎と彼奴等による 陰翳礼讃2016

  1. 青春の瞬き
  2. 歌舞伎町の女王
  3. ちちんぷいぷい
  4. 密偵物語
  5. 殺し屋危機一髪
  6. カリソメ乙女
  7. おいしい季節
  8. 女の子は誰でも
  9. ありあまる富
椎名林檎(シイナリンゴ)
椎名林檎
1978年生まれ、福岡県出身。1998年5月にシングル「幸福論」でメジャーデビュー。1999年に発表した1stアルバム「無罪モラトリアム」が170万枚、2000年リリースの2ndアルバム「勝訴ストリップ」が250万枚を超えるセールスを記録し、トップアーティストとしての地位を確立する。2004~2012年に東京事変のメンバーとしても活躍したほか、2007年公開の映画「さくらん」では音楽監督を務めるなど多角的に活躍。2013年11月にデビュー15周年を記念してコラボレーションベストアルバム「浮き名」とライブベストアルバム「蜜月抄」を、2014年5月にはセルフカバーアルバム「逆輸入 ~港湾局~」を発表する。11月には椎名林檎名義では約5年半ぶりのオリジナルアルバム「日出処」を、2015年8月には15枚目のシングル「長く短い祭 / 神様、仏様」をリリース。10月からはソロ名義としては12年ぶりの全国ホールツアー「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」を開催した。2016年8月にはリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーにて演出 / 音楽監督を担当。2017年1月からスタートしたTBS系ドラマ「カルテット」では、キャストの松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平が歌う主題歌「おとなの掟」を制作し大きな話題を集める。4月には椎名林檎とトータス松本名義の楽曲「目抜き通り」を発表。5月には全国ホールツアー「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」の映像がBlu-rayおよびDVD化された。