ナタリー PowerPush - 椎名林檎

ヒャダインとの対談&単独インタビューで明かす 「逆輸入」から「NIPPON」まで

椎名林檎の新作CD「逆輸入 ~港湾局~」が5月27日に発売される。この作品は椎名がこれまでにほかのアーティストへ提供してきた11曲を、当代きってのクリエイター11名によるリアレンジのもとセルフカバーしたアルバムだ。このリリースを記念して、今回ナタリーでは椎名と参加アレンジャーの一員であるヒャダインこと前山田健一による対談を企画。ヒャダインがアレンジを手掛けた「プライベイト」や互いの作家性について大いに語ってもらった。

また特集の後半では、同アルバムやNHKサッカー放送のテーマ曲として話題の新曲「NIPPON」について椎名へ聞いた単独インタビューもお届けする。デビュー15周年を迎えた彼女の最新のモードを存分に堪能してもらいたい。

取材・文 / 内田正樹 撮影 / ほりたよしか

 
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椎名林檎×ヒャダイン対談

アイドルカルチャーにそれほど貢献してこれなかった

──ではまず、広末涼子さんが歌った「プライベイト」のアレンジを、椎名さんがヒャダインさんにお願いした動機から教えてください。

左から椎名林檎、ヒャダイン。

椎名林檎 まず、“逆輸入”と名付けた以上は私自身いろんなものを仕入れたいという思いがあって。それで今回、私がポップスを学ぶうえでいろんなことを教わった先生方にずばりアレンジをお願いしようと思いました。ヒャダイン先生の場合は、もちろん作品は存じていましたが、そういう意味では新規お取引先という感じですね。

ヒャダイン 新興国ですよ。変なバブルが起こっている新興国。すぐ潰れそうで、危うい(笑)。

椎名 そんなことない(笑)。非常に頼もしいエースです。で、私自身はこれまで、アイドルカルチャーへの貢献がやれてきたようでそれほど多くはやれてこなかった。ヒャダイン先生は“新派”とも呼びたくなる、未来に伝統芸能になる可能性をも孕んだ世界を作っていらっしゃる。だからその腕を大いに振るって頂きたかった。

──ヒャダインさんは、椎名さんからオファーが来たときの感想は?

ヒャダイン ウソだと思いましたね(笑)。高校生の頃、「なんて芳醇な音楽を作る方なんだ」とホレボレしながら椎名さんの音楽を聴いていたので、まさか接点が生まれるとは……。今回のお話を受けない理由はございませんでした。

椎名 恐れ入ります。

──アレンジの作業はどのような流れで進行したのですか。

ヒャダイン 広末さんが歌うもともとのバージョンを聴いて、1度だけ椎名さんと打ち合わせをして。そのとき椎名さんから「キラキラさせてほしい」とリクエストをいただきました。で、僕も「遊園地みたいにしたい」とか話して……メリーゴーラウンドとかジェットコースターとかそういうイメージで。

椎名林檎

椎名 パレードとか。

ヒャダイン そういう話でひとしきり盛り上がったという。

椎名 それでアレンジの話は5分ぐらいでしたね。

──短っ!(笑)

椎名 あとは俳優の中村獅童さんの話とか、全然関係ない話題でまた盛り上がって。

ヒャダイン そうそう。僕が獅童さんと飲んだ日があるんですけど、その次の日ぐらいに、椎名さんは偶然お蕎麦屋さんで彼にお会いしたらしく。

椎名 あ。獅童さんの話で思ったのですが、ヒャダイン先生は“洋風玉様”という感じのお顔ですね。

ヒャダイン “玉様”って、(坂東)玉三郎さんですか? 初めて言われた。宮本亜門さんに似ているとはよく言われるけど。

改めて素敵な「プライベイト」

──ヒャダインさんは「プライベイト」という曲に対して、どんな印象を持ちましたか。

ヒャダイン 今回自分でアレンジしてみて、改めて素敵な曲だと思いました。当時アイドルだった広末さんが歌っていたという文脈で聴くと、また一段とふくよかさが感じられるというか。「忙しくて逢えないときも あなたを忘れているわけじゃない」というところとか、あえて「満員の地下鉄に乗る」って歌うところとか。実際広末さんは人気絶頂で満員の地下鉄なんて絶対に乗れないのに、そういう歌詞を入れることで浮世離れした彼女の存在を一旦日常に引き戻すあたりが、とてもほかの作家じゃ考えられないところだなあと。

左から椎名林檎、ヒャダイン。

椎名 まあ。うれしいところを聴いてくださって。

ヒャダイン それから僕も積極的に電車に乗るようにしています。今日も電車で来ました(笑)。

椎名 まさかの実践!?(笑)

ヒャダイン そうです。出前ばかり取っていたのに、急に“一人ランチに繰り出して”みたり。

椎名 あはははは!(笑)

──アレンジの構想は、難産か安産で言うと?

ヒャダイン 安産でした。すんなり。直感的にほぼ完成形のものが思いつきました。

椎名 初めてオケを聴いたとき、スタッフみんなで大爆笑、大喜びでした。ヒャダイン先生は元来作詞・作曲家でいらっしゃるのに、今回みたいにアレンジだけに徹してなお、純度の高い作品を仕上げて、結果を出してくださって。

ヒャダイン やった、うれしいお言葉でございます!

セルフカバーアルバム「逆輸入 ~港湾局~」 / 2014年5月27日発売 / Virgin Music
初回限定盤 [CD] / 3780円 / TYCT-69017 / ケース付きハードカバー・ブック仕様
通常盤 [CD] / 3240円 / TYCT-60035
収録曲
  1. 主演の女 / PUFFY[編曲:大友良英]
  2. 渦中の男 / TOKIO[編曲:上田剛士(AA=)]
  3. プライベイト / 広末涼子[編曲:前山田健一]
  4. 青春の瞬き / 栗山千明[編曲:冨田恵一]
  5. 真夏の脱獄者 / SMAP[編曲:大沢伸一]
  6. 望遠鏡の外の景色 / 野田秀樹[編曲:村田陽一]
  7. 決定的三分間 / 栗山千明[編曲:中山信彦]
  8. カプチーノ / ともさかりえ[編曲:小林武史]
  9. 雨傘 / TOKIO[編曲:根岸孝旨]
  10. 日和姫 / PUFFY[編曲:日高央]
  11. 幸先坂 / 真木よう子[編曲:佐藤芳明]
椎名林檎(シイナリンゴ)

椎名林檎

1978年生まれ、福岡県出身。1998年5月にシングル「幸福論」でメジャーデビュー。1999年に発表した1stアルバム「無罪モラトリアム」が160万枚、2000年リリースの2ndアルバム「勝訴ストリップ」が250万枚を超えるセールスを記録し、トップアーティストとしての地位を確立する。2004~2012年に東京事変のメンバーとしても活躍したほか、2007年公開の映画「さくらん」では音楽監督を務めるなど多角的に活躍。デビュー10周年を迎えた2008年11月には、さいたまスーパーアリーナにて3日間にわたる「(生)林檎博’0~10周年記念祭」を開催し大成功を収める。2009年3月には文化庁が主催する「平成20年度芸術選奨」大衆芸能部門の芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2013年11月はデビュー15周年を記念してコラボレーションベストアルバム「浮き名」とライブベストアルバム「蜜月抄」を発表。同月に東京・Bunkamuraオーチャードホールにて合計5日間にわたってデビュー15周年ライブを開催した。2014年には、自身が他アーティストへ提供してきた11曲をセルフカバーしたコンセプトアルバム「逆輸入 ~港湾局~」をリリース。全収録曲で異なるアレンジャーを起用したことも話題を集めている。6月11日にはNHKサッカー放送のために書き下ろした新曲「NIPPON」を発売する。

ヒャダイン / 前山田健一
(ヒャダイン / マエヤマダケンイチ)

椎名林檎

1980年7月4日生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身につける。京都大学を卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一として、倖田來未×misono「It's all Love!」、東方神起「Share The World」などのヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。その後もヒット曲を量産し、2011年4月にシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」でヒャダインとしてメジャーデビューを果たした。2012年11月には初のソロアルバム「20112012」を、2013年1月には6枚目となるソロシングル「23時40分 feat. Base Ball Bear」を発表。2014年2月にテレビアニメ「ガンダムビルドファイターズ」のエンディングテーマ「半パン魂」をシングルとしてリリースした。同年5月発売の郷ひろみの99thシングル「99(ナインティナイン)は終わらない」では作詞・作曲およびサウンドプロデュースを担当。さらに同じく5月発売の椎名林檎のセルフカバーアルバム「逆輸入 ~港湾局~」にて「プライベイト」のアレンジを担当するなど、幅広くアーティストからの支持を得ている。