ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO
奇跡のエバーグリーンミュージック CHAMP RECORDS勝負の1枚
SCOOBIE DOの約1年3カ月ぶりとなるニューアルバム「MIRACLES」が完成した。全曲の作曲を手がけるリーダー・マツキタイジロウ(G)いわく「エバーグリーン」な世界観を目指したという今作では、4人が織りなすバンドサウンドにホーンや女性コーラス、キーボードも加わり、感情豊かなメロディにきらびやかな彩りを添えている。持ち前のソウル魂がポップに昇華された1枚だ。
ナタリー2度目の登場となる今回は、アルバムの魅力に迫るメンバー全員インタビューのほか、アルバム制作の源にもなった"MIRACLEなレコード"もあわせて紹介してもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 中西求
歴史に残る"名盤"を目指して
──最近のSCOOBIE DOは、毎年春から夏にかけてコンスタントに新譜が出ていたイメージがあったのですが、今作は珍しく秋のリリースになりましたね。
マツキタイジロウ(G) これは完全に自然の流れですね。僕たちは大体14カ月周期で動いていて、いつものノリで出したらこのタイミングになったという。CHAMP RECORDSは4~5年先までなんとなくスケジュールを立ててるんですけど、立てたスケジュールがこの流れだったんです。案外予定どおり。
──こちらの先入観もあってか、アルバム全体のトーンも「秋にリリースされるアルバム」という匂いを感じました。前作「何度も恋をする」(2010年7月発売)がタイトルどおり夏のイメージに振り切った作品だったので、今回はこうきたのかなと。14カ月周期が理由だとしたら、そこは特に考えてない?
マツキ ええ。だた「何度も恋をする」ではド真ん中めがけてストレートを投げることを目指してたんですけど、今回は少し違って、自分が思う「エバーグリーン」なものを作りたいと思っていて。その気分は秋のイメージとシンクロするかもしれないです。今までよりは、どちらかというとシリアス寄りで。歴史に残る1枚と言いますか、のちのち"名盤"になるであろうものを目指そう、という感じはありました。前作よりさらに丁寧にコースに入れていくというか、そういうイメージ。
──ストレートの次は変化球、とは行かずに?
マツキ そうですね。でも僕の中では「何度も恋をする」も変化球というか、どっちかと言うと……笑いをとりにいっているところも多々あって(笑)。今回は笑いとか、エロとか、いわゆる場面を切り取った世界観というよりは、もう少し普遍的な世界観を目指しました。
──その気持ちの変化には、何かきっかけがあったんですか?
マツキ 特に大きいきっかけがあったわけじゃないんですけど。前回の作品はスタジオワークを突きつめていく最初の段階かなって思っていて。だから次はどんな作品であろうと、スタジオでの可能性、レコーディングの可能性を突きつめたいと思っていた。3人に曲を渡す前には「ノリやライブ感ではなくて、曲を重視して作っていきたい」という話をしました。
やみくもに熱くならなくとも盛り上げることができる
──話が前後してしまうかもしれませんが、「何度も恋をする」を携えての長いツアーを回ったことで、次のアルバム作りに影響はありましたか?
ナガイケジョー(B) 歌を届けなきゃいけないなって気持ちがより強まりました。コヤマさんの歌を3人が盛り立てる。僕らはそんなバンドなんだなというのを再認識したというか。もちろん、お祭り騒ぎができる曲も必要だと思うけど、まずは歌ありきなんだなっていうのは、ライブを重ねていくうちに思いました。
オカモト"MOBY"タクヤ(Dr) ライブに重きを置いているバンドなので「盛り上げる」ってのが僕らのやりがいですけど、去年のツアーでは丁寧な演奏を心がけてました。やみくもに熱くならなくとも、丁寧な演奏でも盛り上げることができるんだという手応えはありましたね。次のアルバムではそういう方向に行くんだろうなと思っていたから、リーダー(マツキ)からデモをもらったときはすごく合点がいきました。
コヤマシュウ(Vo) ひとつのものを突きつめていくような、揺るぎない表現方法みたいなものがロックンロールだと思われがちなんですが、俺たちはそうじゃない。いろいろあっていいじゃんって思う。ツアーでは新しいアルバムの曲だけじゃなくいろんな曲をやりますけど、一緒に並べて「これはもう歌えないな」っていう曲はほとんどないです。それはタイちゃんが、そのときどきできちんといい曲を作っているからだと思うんですけど。
SCOOBIE DO(すくーびーどぅー)
1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin’ OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。2011年10月5日、CHAMP RECORDS通算5枚目となるオリジナルアルバム「MIRACLES」を発表した。