さユりがマンガ家だったら、ライバル視していたかもしれない
横槍 マンガと音楽っていうフィールドの違いはあるんですけど、表現の手法として、私は一方的にさユりさんと作風がかぶってると思ってるんです。例えば人の内面描写だったり……イヤだったらすみません。
さユり とんでもない!
横槍 だから、もしさユりさんがマンガ家だったら、ライバル視してたかもしれない。ヴィレッジヴァンガードとかでさユりさんのマンガが平積みされてたら、うらやましく感じたかも(笑)。でも、さユりさんは音楽の人だから、純粋に作品を楽しませてもらってます。
さユり ありがとうございます。横槍さんの描くキャラクターたちは、ホントに生きてるみたいだって思うんですよ。1人ひとりがこれまでどういうふうに生きてきたか、それぞれのバックボーンがちゃんと見えるというか。だから「どこまで人物を作り込んでるんだろう?」って。
横槍 私も、さユりさんの創作スタイルがすごい気になってて。というのも、私は完全に感覚を優先させるタイプなんですよ。つまり、まず感覚で描いて、あとから各キャラの行動原理や物語の筋立てに矛盾はないかとか、そういう理論的な部分を詰めるんですけど、さユりさんはどっちなのかなって。歌詞を見るに、感覚優先っぽい作風ではあるんですけど、実は理詰めで作詞してたりとか?
さユり うーん、半々ですかね。具体的に「クズの本懐」はどういう描き方をされたんですか?
横槍 「クズ」に限らずなんですけど、私はまず出だしの1コマを描いて、続いて2コマ目、3コマ目と順番に描いていくんですよ。大抵のマンガ家さんは、あらかじめ1話の中での山場を決めておいて、いわば目的地を設定して、そこに向けてプロットを組み立てていってるんじゃないかと思うんです。私もどうしても描きたい山場が決まっているときは基本そこに向かってシーンをつなげていきますが、本当に何も浮かばないときはとりあえず1コマ目を描いてみる。そこからだんだん花火たちが勝手に動き出して、勝手に盛り上がることによって、結果的に山場みたいなシーンが生まれる感じですね。
なんとなくこぼれたひと言から歌詞が広がっていく
さユり じゃあ、私は「クズの本懐」からあるメッセージを受け取ったんですけれど、それもあらかじめ用意されていたものではない?
横槍 いや、メッセージに関しては、「クズ」の場合は最初からありました。それまで私はあまりメッセージ性の強いマンガは描いてこなかったんですけど、「クズ」は例外的に、明確に伝えたいことを込めた作品ですね。
さユり 私と少し似てる気がします。私も、曲を作るときはあらかじめ「こういう曲で、こういうメッセージを伝えたい」っていうのがあるんですけど、いざ実際に作るとなると、まずはギターをなんとなく弾き始めて、なんとなく口からこぼれてきたひと言から広げていくので。「平行線」っていう言葉もそうだし、Aメロの「勇気がないのは時代のせいにしてしまえばいい」っていうのもそうで、ふと出てきた言葉に導かれるように曲や詞ができていく感じです。
横槍 そうそう。真っ白い紙とにらめっこしててもいいアイデアはなかなか生まれないから。もうなんでもいいから、例えば吹き出し1つでも描いてみると、とっかかりができるんですよね。仮に、その吹き出しのセリフから話が転がらなかったら、この方向はないんだなっていうのがわかる。選択肢が減ったぶん、正解が絞られるみたいな。
さユり わかります。
さユりと花火が似ていて助かった
さユり 横槍さんには「平行線」のミュージックビデオのイメージボード原案を描いていただきまして、それに対しても直接お礼を言いたかったんです。ありがとうございます。(参照:さユり、横槍メンゴがラフ描いた「クズの本懐」ED曲MV)
横槍 いえいえ。以前、私は半ば趣味で、VOCALOID曲の絵師みたいなことを何年かやってたんですよ。ひさしぶりにその作業を思い出して、楽しかったです。
さユり 大変じゃなかったですか?
横槍 いや。お話をいただいたときから、さユりさんの世界にちょっと花火を添えるような感じをイメージしてて。で、私が言うのもおこがましいんですけど、花火というキャラクターと、さユりさんの雰囲気が近いと思っていたので……。
さユり むしろ光栄です。
横槍 だからぜんぜん違和感なく、イメージ通りに描けました。もしさユりさんが金髪でめっちゃテンション高い感じのアーティストさんだったら、ちょっと迷ったかもしれないですね。「どうやって花火と重ねたらいいの?」みたいな(笑)。でも、さユりさんはもともと黒髪ボブなんですもんね。
さユり そうですね。偶然にも。
横槍 髪型も花火と被ってたし、せっかく似てるんだから、それを対比させるというか、対になってる感じを出したいと思って鏡をモチーフにして。そしたら、完成したMVでは鏡がバリンバリン割れてるじゃないですか。それを見て「その解釈、合ってる!」って思いましたね。やっぱり花火は2次元のキャラクターなので、鏡の中の世界に閉じ込められてるみたいなイメージもあったんです。それを、さユりさんが引っ張り出してくれたんだなっていう。
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平行線が交わる世界もきっとある
- さユり「ミカヅキの航海」
- 2017年5月17日発売 / アリオラジャパン
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初回生産限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
3900円 / BVCL-791~2 -
初回生産限定盤B [CD+DVD]
3500円 / BVCL-793~4 -
通常盤 [CD]
2700円 / BVCL-795
- CD収録曲
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- ミカヅキ
- 平行線
- 十億年
- ケーキを焼く
- フラレガイガール
- 蜂と見世物(サーカス)
- るーららるーらーるららるーらー
- オッドアイ
- それは小さな光のような
- 来世で会おう
- knot
- アノニマス
- 夏
- birthday song
- 初回生産限定盤A Blu-ray収録内容
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- ミカヅキ MV
- それは小さな光のような MV
- 来世で会おう MV
- フラレガイガール MV
- アノニマス MV
- 平行線 MV
- birthday song MV
- 初回生産限定盤B DVD収録内容
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- 東京キネマ倶楽部ワンマンライブ&新宿ReNYワンマンライブ ライブダイジェスト映像
- 酸欠少女さユり アルバム「ミカヅキの航海」発売記念全国ツアー「ミカヅキの航海2017~夜明けの全国ツアー~」
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- 2017年7月21日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年7月28日(金)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年7月30日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2017年8月11日(金・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年8月13日(日)北海道 cube garden
- 2017年8月25日(金)大阪府 BIGCAT
- さユり
- 福岡県出身、1996年生まれのシンガーソングライター。人とは違う感性と価値観を持つことにコンプレックスと優越感を抱き、生きることへの息苦しさを感じる自分を“酸欠少女”と表現している。中学生の頃に地元でライブ活動をスタートさせ、2013年に上京。2015年3月には東京・TSUTAYA O-nestでのワンマンライブを成功に収める。同年8月にフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビュー。2016年2月に2ndシングル「それは小さな光のような」をリリースした。同年6月に配信シングル「るーららるーらーるららるーらー」を配信限定で発表し、iTunesトップアルバム総合チャートで1位を獲得。注目度の高まる中、12月に野田洋次郎(RADWIMPS、illion)楽曲提供およびプロデュースによる新曲「フラレガイガール」をリリース。2017年3月に発表したシングル「平行線」はフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「クズの本懐」およびドラマ「クズの本懐」のエンディングテーマに使用され、大きな話題を集めた。5月に1stアルバム「ミカヅキの航海」をリリースする。
- 横槍メンゴ(ヨコヤリメンゴ)
- 1988年2月、三重県生まれ。2009年、マガジン・ウォー(サン出版)にて成人向けマンガでデビュー。2010年にCOMICすもも(双葉社)にて、エロマンガ家と双子美少女の三角関係を描いたコメディ「はるわか」の連載を開始する。2012年に週刊ヤングジャンプ(集英社)にて掲載された、岡本倫原作「君は淫らな僕の女王」は、ヒロインが自制心を失う設定と、かわいらしい絵柄とエロのギャップが人気を呼んだ。同年、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて、高校生の純粋かつ歪んだ恋愛を描く「クズの本懐」の連載を開始する。インターネット上ではヨリのハンドルネームで活動し、ニコニコ動画などVOCALOIDを使用した楽曲のイラストも手がける。イラストレーターとしても活躍中。
2017年5月12日更新