自分の中で完結していた曲が、社会の一部になった
──さユりさんは2015年8月に19歳でデビューしたのち、配信を含めて5枚のシングルを経てこのたび1stアルバム「ミカヅキの航海」のリリースとあいなりました。傍から見ていて、さユりさんの活動はとても順調そうに思えるのですが、実際、いい調子でしたか?
シングルごとに学ぶことがすごく多かったです。特にデビューシングルの「ミカヅキ」と2ndシングル「それは小さな光のような」、5thシングル「平行線」の3曲はアニメのタイアップなんですけど、それぞれの持つ意味が全然違って、それぞれ歌うことで成長できたかなと。シングルを1枚出すたびに成長して変化して、それらを集めたアルバムを出せる。長い道のりだったようにも感じます。
──さユりさんは17歳で上京し、路上ライブで活動をスタートさせています。上京した当時と比べて、今はさユりさんの歌が届く射程も、歌の影響力も段違いに増していると思われますが、音楽に対する向き合い方で変わった部分はありますか?
曲作りに関しては、すごく変わったなって思いますね。以前は曲を完成させることがゴールみたいなところがあったんですけど、今はその曲を聴いてくれる人がどういう顔をするのかな?と想像しながら言葉を選んだりするようになったので。曲作りの中に他者が生まれたっていうのは、それまでになかった大きな変化ですね。
──それも、シングルごとに学んだことの1つ?
はい。やっぱりアニメとの出会いっていうのが一番大きいなと思います。例えばデビュー曲の「ミカヅキ」は、もともと自分のために書いた曲であったのに、「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマに選んでいただいて、アニメを観てくださる方々もこの曲とアニメの世界観を重ねてくださって。そこで、曲の持つ可能性が広がったのを感じたんです。
──なるほど。
「乱歩奇譚 Game of Laplace」の岸(誠二)監督から「『ミカヅキ』を作ってくれてありがとう」って言われたのもすごく大きくて。今まで自分の中だけで完結させていたものが、作品の一部になって、それは社会の一部にもなってるということでもある。それって楽しいことなんじゃないかって気付きました。
──本当に曲がアニメとハマっていましたからね。それは「ミカヅキ」以外のタイアップ曲にも言えることですが。
2ndシングルで梶浦由記さんが作詞作曲を手がけた「それは小さな光のような」を歌えたのも、「ミカヅキ」でソングライターとしての可能性の広がりを感じられたから「じゃあ今度はシンガーとしての可能性を広げられるんじゃないか」って思えたからですし。だから変化の過程がつながっていて、「平行線」もその延長で「アニメのために曲を書いてみよう、言葉を紡いでみよう」っていう気持ちで作れました。
過去を肯定することで、未来へ進めるんじゃないか
──アルバムタイトルになっている「ミカヅキの航海」という言葉自体は、2016年4月に行われたワンマンライブ、およびその追加公演で使われています。つまり、さユりさんにとってはかねてから思い入れのある言葉であったと察せられます。
はい。このアルバムのテーマも「ミカヅキの航海」っていうタイトルに詰まっていて。まず「ミカヅキ」は、欠けている自分のことであると同時に、そんな不完全な私だけど「それでも進みたい」っていう、今まで大事にしてきた気持ちであり、決意でもあります。一方の「航海」には、過去を悔いる意味の「後悔」もかけてるんです。それは、デビューしてから自分の過去に意味が生まれたなっていう瞬間がいくつもあったし、後悔があったから今の自分がいて、後悔があったからこそ歌える歌があるんだって気付いたからで。
──「自分の過去に意味が生まれた」瞬間というのは、具体的には?
さっきお話しした、岸監督から感謝の言葉をいただいたこともその1つですし、あとは、ファンの子に「今日まで生きてきてよかったなって思えました」って言ってもらえたことが何度かあって。そのとき、大げさかもしれないんですけど、「私はこの子のために生まれてきたのかもしれない」って思うくらい、自分を肯定された気がしたんです。
──そう思ってもらえるファンの子もまた幸せでしょうね。しかも「今日まで生きてきてよかった」ということは、その子も過去に意味を見出していることになる。
だとしたら本当にうれしいです。このアルバムを聴いた人も、それまで生きてきた過去を肯定できたら、きっと今生きてる自分も肯定できるし、その先に進むこともできるんじゃないか。そういうふうに、過去にも未来にも光が伸びていくようなアルバムにしたいと思いながら作りました。
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世界に答えを出そうと思って作った「birthday song」
- さユり「ミカヅキの航海」
- 2017年5月17日発売 / アリオラジャパン
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初回生産限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
3900円 / BVCL-791~2 -
初回生産限定盤B [CD+DVD]
3500円 / BVCL-793~4 -
通常盤 [CD]
2700円 / BVCL-795
- CD収録曲
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- ミカヅキ
- 平行線
- 十億年
- ケーキを焼く
- フラレガイガール
- 蜂と見世物(サーカス)
- るーららるーらーるららるーらー
- オッドアイ
- それは小さな光のような
- 来世で会おう
- knot
- アノニマス
- 夏
- birthday song
- 初回生産限定盤A Blu-ray収録内容
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- ミカヅキ MV
- それは小さな光のような MV
- 来世で会おう MV
- フラレガイガール MV
- アノニマス MV
- 平行線 MV
- birthday song MV
- 初回生産限定盤B DVD収録内容
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- 東京キネマ倶楽部ワンマンライブ&新宿ReNYワンマンライブ ライブダイジェスト映像
- 酸欠少女さユり アルバム「ミカヅキの航海」発売記念全国ツアー「ミカヅキの航海2017~夜明けの全国ツアー~」
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- 2017年7月21日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2017年7月28日(金)愛知県 ElectricLadyLand
- 2017年7月30日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2017年8月11日(金・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2017年8月13日(日)北海道 cube garden
- 2017年8月25日(金)大阪府 BIGCAT
- さユり
- 福岡県出身、1996年生まれのシンガーソングライター。人とは違う感性と価値観を持つことにコンプレックスと優越感を抱き、生きることへの息苦しさを感じる自分を“酸欠少女”と表現している。中学生の頃に地元でライブ活動をスタートさせ、2013年に上京。2015年3月には東京・TSUTAYA O-nestでのワンマンライブを成功に収める。同年8月にフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビュー。2016年2月に2ndシングル「それは小さな光のような」をリリースした。同年6月に配信シングル「るーららるーらーるららるーらー」を配信限定で発表し、iTunesトップアルバム総合チャートで1位を獲得。注目度の高まる中、12月に野田洋次郎(RADWIMPS、illion)楽曲提供およびプロデュースによる新曲「フラレガイガール」をリリース。2017年3月に発表したシングル「平行線」はフジテレビ「ノイタミナ」枠のアニメ「クズの本懐」およびドラマ「クズの本懐」のエンディングテーマに使用され、大きな話題を集めた。5月に1stアルバム「ミカヅキの航海」をリリースする。
2017年5月12日更新