音楽ナタリー Power Push - 澤野弘之

ギミックに富んだ「カバネリ」&「ガンダムUC」サウンド

澤野弘之が、現在オンエア中のアニメ「甲鉄城のカバネリ」のサウンドトラックを先日リリース。さらに6月29日にSawanoHiroyuki[nZk]名義で、アニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」のオープニングテーマおよびエンディングテーマを収録したシングル「Into the Sky EP」を発表する。

作曲家として目覚ましい活躍を見せる中、自身のプロジェクトも精力的に展開している澤野。彼はアニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」に関連したライブイベント「RE:UnChild」を8月に、SawanoHiroyuki[nZk]名義での全国ツアー「澤野弘之 LIVE [nZk]004」を10月から開催することも決定している。

今回音楽ナタリーでは澤野にインタビューを行い、「甲鉄城のカバネリ」の劇伴、「Into the Sky EP」の制作エピソード、そして来るツアーへの思いを聞いた。

取材・文 / 西原史顕

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音楽は単純に楽しくなれるものが好き

──4月から放送中の「甲鉄城のカバネリ」ものすごい作品ですね! 観ていて毎週楽しいです。

すごいですよね、あのアニメに宿るエネルギー。さすが荒木(哲郎)監督だなって思います。いち視聴者としての感想なんですけど、キャラクターのデザインに昨今のアニメよりも少し前の雰囲気があるじゃないですか。僕の世代的にはこれがどストライクなんですよね。子供の頃に観たアニメのことを思い出して、ますますテンションが上がってます。

──放送前や直後はスチームパンク系などと言われていましたが、実際には和風の要素があったり、ゾンビが出てきたり、パニックがあったり……もはや1つのジャンルでは言い表せない様相で。

確かに。荒木監督とご一緒させていただくのは3作品目ですが、僕も「進撃の巨人」とも「ギルティクラウン」ともまた少し違う雰囲気を感じています。

──このようにさまざまな要素が組み合わさった作品の場合、劇伴制作のとっかかりはどうやって作っていくのでしょうか?

最初に荒木監督と打ち合わせしたときに、「和服の雰囲気とかで和風の音楽を意識する必要はなく、作品から感じたものに対して澤野さんの考えるアプローチをしてもらえれば」と言われたんですよね。「設定にとらわれずにロックでも歌モノでもいろいろトライしてください」みたいな感じで。

──それは3度目の共同制作による信頼の証ということですか?

だったらうれしいんですけど(笑)。荒木監督のすべてをわかっているなんてことは言いませんが、お互いが目指そうとしているところは同じ方向なのではないかという気はします。初めて組んだ「ギルティクラウン」の頃からそうなんですけど、荒木監督の軸はあくまでエンタテインメントなんですよね。観ていて気持ちいいことを優先させる人。僕自身も音楽は聴いて難しく考えるよりも、単純に楽しくなれるものが好きなタイプなので、そこは荒木監督と共通しているのかなと思っています。

澤野弘之

──それでは澤野さんが最初に取り組んだ曲は?

「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」ですね。タイトル通り、「カバネリ」のテーマになっています。実は作り始めたときは映像資料がなかったんですけど、荒木監督のことだから迫力あるスピーディなシーンがたくさんあるんだろうなと思って作りました。自分が盛り上がるだろうなと思う要素を突っ込んだ1曲です。

──実に澤野さんらしい記名性のあるサウンドです。

僕は器用な作曲家ではないので、ぶっちゃけ作品を重ねていくうちに、似通ってくるところって出てくるんですよ。でも、自分が納得のいく好きな音で作りたい部分もありますし、こうして指名でオファーいただいているのは、そうした部分も含めて期待してくださってのことだとも思うんです。なので素直に、自分に正直に、メインテーマを書かせていただきましたね。

──アニメにあれだけ和の要素が描かれているのに、「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」には和楽器が使われていないですよね。

あはは(笑)。和の要素って、確か「KGK」くらいにしか入れなかったかも。中には民族音楽っぽい要素も入っていたりして、サウンド的にはものすごくとっ散らかった劇伴になっているんですよ。

「甲鉄城のカバネリ」劇伴の仕掛け

──「VIVALABIBA」がアラビア系だったりするのも?

「VIVALABIBA」というタイトルからは登場人物の美馬を想像すると思うんですけど、サウンドとキャラクターやストーリーがどう関連しているかは、聴いてくださる皆さんの想像にお任せしますというか。ただ「このキャラクターの為に中東系のアプローチをとっておいてほしい」と監督から要望がありました。

──洋楽と邦楽、古典から現代まで、世界中のさまざまなサウンドが散りばめられていると、「それぞれに何か意味があるのでは?」と読み解きたくなるのがファン心理というものでして。

申し訳ないことに、サウンドに対して意味を込めているってわけではなく、そのときの自分が思い付くまま作っているのがほとんどなんですよ。

──しかし澤野さんが付けた謎めいたタイトルは、受け手にいろんな想像の刺激を与えてきます。

「noname」は無名、「araganeekiNo@8女」は菖蒲、「1coma」は生駒と、登場するキャラクターのことを想像していただけると思います。一応タイトルが登場人物に関わっている曲は、メニュー表に「無名のテーマ」というふうに書いてあることが多いんです。ただ、実際のオンエアではその人物のテーマになるとは限りません。よく予定とはまったく違う使われ方をする曲ってあるんですよね。現時点で音楽的な面でいえることは、劇伴とエンディングテーマにサウンド面で関連性があるとか、同じ曲を違うアレンジにして異なるボーカリストに歌ってもらったとかですね。

──そして今回も劇伴に加え、Aimerさんが歌うエンディングテーマ「ninelie」の作曲もされていますね。

Aimer

ええ。これが劇伴ともつながっていて、「1coma」は曲の後半からアレンジが変わっていって、途中から小林未郁さんの歌が入って別の曲のようになるんです。これ、実は「Through my Blood」なんです。で、その「Through my Blood」と同名の別アレンジの曲が、Aimerさんのシングル「ninelie」のカップリングになっていたりします。

──それはまた複雑なつながりですね。「1coma」と「Through my Blood」をつなげたのはどうしてですか?

「Through my Blood」は生駒をイメージして作った曲だったので、追加音楽発注で生駒シーンに必要な曲としてオーケストラバージョンの「1coma」を作ってみました。

──ほかにそういった仕掛けがあるのでしょうか?

「icon」と「ninelie」もアレンジ違いの同じ曲ですね。

──それは気が付きませんでした。聴き逃してしまった自分が恥ずかしい……。

いやいや、僕は逆にそのほうがうれしいですけどね。新しく聴こえてくれたほうが、アレンジのしがいがあるというものです。荒木監督が音楽をとても大事に扱ってくれる人だというのはわかっているので、「甲鉄城のカバネリ」ではこうした仕掛けの面でもいろいろ自由にやらせていただきました。ぜひアニメとCDの両方を楽しんでもらいたいですね。

SawanoHiroyuki[nZk] ニューシングル「Into the Sky EP」 / 2016年6月29日発売 / SME Records
「Into the Sky EP」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2200円 / SECL-1890~1
通常盤 [CD] / 1350円 / SECL-1892
期間生産限定盤 [CD] / 1620円 / SECL-1893
CD収録曲
  1. Into the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
  2. Next 2 U -eUC- by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami
  3. bL∞dy f8 -eUC- by SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer
  4. Pretenders -eO1- by SawanoHiroyuki[nZk]:mica
  5. Into the Sky (TV size)
  6. Next 2 U -eUC- (TV size)
  7. bL∞dy f8 -eUC- (TV size)
  8. Into the Sky (instrumental)
初回限定盤DVD収録内容

澤野弘之ライブ[nZk]003(2015/9/12 @Zepp Tokyo)

  1. [nZk]o1
  2. &Z
  3. A/Z
  4. ßios / Before my body is dry
  5. ThreeFiveNineFourε
  6. Light your heart up
  7. No differences
  8. Rё∀L<C+nZk Version>
  9. Blumenkranz
  10. The Reluctant Heroes
  1. friends
  2. StarRingChild
  3. bL∞dy f8
  4. s-AVE
  5. attack on titan
  6. DOA
  7. Hill Of Sorrow
  8. aLIEz
  9. X.U.
  10. Song of..
  11. Perfect Time
澤野弘之 ニューアルバム「甲鉄城のカバネリ ORIGINAL SOUNDTRACK」 / 2016年5月18日発売 / 3240円 / アニプレックス / SVWC-70149
「甲鉄城のカバネリ ORIGINAL SOUNDTRACK」
収録曲
  1. KABANERIOFTHEIRONFORTRESS
  2. Warcry
  3. KGK
  4. JAnoPAN
  5. Through My Blood
  6. noname
  7. 88城
  8. VIVALABIBA
  9. ComeBack音
  10. Next of Kin
  11. araganeekiNo@8女
  12. 克JOU気MACHINE甲
  13. Grenzlinie
  14. Ktetsu上-abdli
  15. 1coma
  16. icon
澤野弘之プロデュース Aimer with chelly(EGOIST) ニューシングル「ninelie」/ 2016年5月11日発売 / SME Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / SECL-1882~3
通常盤 [CD] / 1350円 / SECL-1884
期間生産限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / SECL-1885~6
CD収録曲
  1. ninelie / Aimer with chelly (EGOIST)
  2. Through My Blood <AM> / Aimer
  3. スピカ / Aimer
  4. ninelie (TV size) / Aimer with chelly (EGOIST)
  5. ninelie (instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ninelie」MUSIC VIDEO
期間生産限定盤DVD収録内容
  • 「甲鉄城のカバネリ」ノンクレジットエンディングムービー
澤野弘之(サワノヒロユキ)

1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズや、「アルドノアゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。その第1弾作品として「機動戦士ガンダムUC」シリーズの楽曲も共作したAimerと、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のアルバム「UnChild」を発表した。2015年2月にはSawanoHiroyuki[nZk]の新作「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。また2015年はNHK連続テレビ小説「まれ」やWiiU用ゲーム「XenobladeX」のサウンドトラック、テレビアニメ「終わりのセラフ」の音楽プロデュースも担当。9月にSawanoHiroyuki[nZk]の1stアルバム「o1」と、澤野名義のサウンドトラックベスト「BEST OF SOUNDTRACK【emU】」を発表した。2016年5月にアニメ「甲鉄城のカバネリ」のサウンドトラックを、6月にはSawanoHiroyuki[nZk]名義でアニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」のオープニングテーマおよびエンディングテーマを収録したシングル「Into the Sky EP」をリリース。