「SAKAMOTO DAYS」Kroi(オープニングテーマ担当) / go!go!vanillas(エンディングテーマ担当)|「SAKAMOTO DAYS」愛がにじむ主題歌完成 それぞれが作品から受け取ったメッセージ、楽曲に込めた思いとは?

エフェクターはロマンの世界

柳沢 あと歌詞で言ったら、僕は「ふたつの花模様と寄り添う影」だけでもメシ8杯食べれます。

一同 (笑)。

柳沢 これはもうこの作品のためにあるフレーズだなと最初に強く感じて、めっちゃ感動しました。曲の最後のほうでギターがぽろろんって入ってくるパートがあるんですけど、そこでは不穏な響きのコードとメジャーな響きを織り交ぜているんですよ。それは僕なりに「花模様と寄り添う影」を表現しようと思って入れたものなんです。

柳沢進太郎(G)

柳沢進太郎(G)

──その「花模様」の一節がまさになんですけど、この曲のタイトルって「FLOWERS」でも成り立つな、と勝手に思っていて。

 ああ、うんうん。確かにね。

──アルバムタイトルをあとから曲名に使う手法って、ちょっと洒落てるじゃないですか。バニラズでいうと「SHAKE」がそうでしたけど。

 まあ今回は、あくまで主役は坂本にしたかったんで。マンガやアニメというもの自体にすごくリスペクトがあって、主人公に一番輝いていてほしいという願望があるんですよ。もちろん、シンプルに「ダンデライオン」という言葉をタイトルに入れたかったという思いもあるけど。

──「FLOWERS」だと“バニラズの曲”になりすぎちゃう?

 うん、そうですね。意識としては、“第2クールのエンディング”にとどまらない、「SAKAMOTO DAYS」全編を通して観たときにも整合性が取れるような曲にしたかった。まだ原作でも描かれていない先の展開までいろいろ可能性を考えて、どう転んでも大丈夫であるように作ったつもりではいます。

──なるほど。あとは「最新技術はいらない」という一節がありますけど、立派な武器には頼らない坂本の戦闘スタイルを表現しつつ、バンドの姿勢にも重なるところがありそうですね。

 確かに、“古き良きものを現代に届ける”ということを常にやってきたバンドなので、好きな考え方ではあります。

セイヤ まあ、進太郎はめっちゃ最新のエフェクターをすぐ買うタイプですけどね。

柳沢 俺は鹿島ってこと? 体中メカでやっていこうかな(笑)。

プリティ でもエフェクターって、どっちかというとロマンの世界なんですよ。最新の機材よりもビンテージが喜ばれたりもするし……まあ、古ければいいってものでもないんですけど。

 うん。技術として新しいか古いか、デジタルかアナログかとかはそんなに大きな問題ではなくて、大事なのはその音で魂が震えるかどうかなので。そういう意味での「最新技術はいらない」でもあるんです。

牧達弥(Vo, G)

牧達弥(Vo, G)

タイアップは“お仕事”としてやっていない

──今回のようにタイアップで曲を作る場合と、普通に自分たちの曲を作るときで意識の違いなどはありますか?

 もともと自分の中でフィクションの物語を作りあげてから曲を書いたりするタイプなので、外部から明確なテーマを与えてもらえるのはむしろありがたいんですよ。だからあんまり苦労はしないというか、逆にやりやすい。この「ダンデライオン」にしても、バンドだけで作っていたら絶対に出てこないような歌詞が書けたと思うし、それによって自分たちがもともと持っている色がより濃く見えるようにもなりました。

──「与えられた世界に違う色を加えてやろう」というよりは、「その中で自分にできることを楽しんでやろう」という意識に近い?

 そうですね。これはマンガ好きならではの感覚だと思いますけど、自分自身がその作品のファンとして違和感を覚えるものにはしたくないんです。基本的に僕らの場合、タイアップといっても“お仕事”としてはやっていなくて、ちゃんと好きになれるものしか引き受けていないんですよ。

──いち読者としての目線で、「『SAKAMOTO DAYS』にこんな曲が流れてほしいな」と思うものを作ったような感覚?

 そうそう、まさにそれです。

プリティ さっき牧が言った「バンドからは出てこない歌詞」ってのは、本当にそうだなと思っていて。それがバニラズらしくないという意味ではなくて、新しい引き出しを開けるきっかけを「SAKAMOTO DAYS」が与えてくれたというか。

長谷川プリティ敬祐(B)

長谷川プリティ敬祐(B)

柳沢 みんなが同じタイミングで同じ作品を読んで、それに向かって曲を仕上げていくという過程が、普段との一番大きな違いでした。特に歌詞に関しては「これはあのシーンのことかな?」とあらかじめ共通理解を持ったうえで臨めたのがよかったと思います。これはタイアップならではの楽しさでしたね。

──確かに、普段の楽曲制作では「この歌詞の背景には俺のこういう経験があって……」みたいなことをいちいち言わないですよね。

 怖いっすよ、それ(笑)。

柳沢 逆にやりづらい(笑)。

 次から急にパワーポイントとかで事細かに説明し始めたりして。

プリティ こわー。

セイヤ わははは。いやでも、こうやって好きな作品に携われるのはめっちゃぜいたくな経験やなと思います。作品のファンの方々に自分たちを知ってもらえる機会でもあるわけですし、気を引き締めてやらせていただいております。

ジェットセイヤ(Dr)

ジェットセイヤ(Dr)

バニラズ商店へようこそ

──おっしゃる通り、アニメをきっかけに初めてバニラズの音楽に触れる人も多いと思います。そういう人たちへの注意点というか、何か言っておきたいことはありますか?

 日本のアニメのマーケットって、今は国内だけじゃなくて世界中に広がってるじゃないですか。なので、世界中で聴かれるということは制作段階からけっこう意識していて。世界標準のクオリティを担保することはもちろんですけど、日本のバンドならではのカラー、質感、空気感みたいなものをちゃんと感じられるものにしようと思って作りました。アニメと併せて、そういう部分も楽しんでもらえたらと思います……注意点でもなんでもないけど(笑)。

プリティ (笑)。アニメのエンディングで「ダンデライオン」を聴いて、もし気に入ったらバニラズ自体にも興味を持ってもらえるとうれしいです。ほかの曲も聴いてもらえたら1曲ごとに驚きが得られると思うし、ライブに来たらさらにビビることになると思うんで、何度でも驚いてほしい。

柳沢 「ダンデライオン」の終盤には「ラララ」パートもありますし、ぜひライブで一緒に歌いましょう! その光景を一緒に作りに来てもらいたいですね。

go!go!vanillas

go!go!vanillas

セイヤ 僕からの注意点としては、「バニラズ商店へようこそ」って感じで。

柳沢プリティ ……?

 (一瞬考えて)ああ、「坂本商店」にかかってるのか(笑)。

セイヤ バニラズ商店は品ぞろえがものすごいんで、「ダンデライオン」を聴いたあとは「one shot kill」を聴け!と伝えたいですね。坂本太郎ばりの二面性をとくと味わっていただきたい。

 殺し屋の一面も知ってくれ、と(笑)。

セイヤ 「SAKAMOTO DAYS」支店だけでなく、本店もよろしくお願いします。ライブでお会いしましょう!

プロフィール

Kroi(クロイ)

2018年2月結成。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンド。2021年6月に1stアルバム「LENS」でメジャーデビューを果たし、2022年には2ndアルバム「telegraph」をリリースした。2024年1月に初の東京・日本武道館ワンマン公演を行い、6月には3rdアルバム「Unspoiled」を発表。本作のリリースツアー「Kroi Live Tour 2024 "Unspoil"」のファイナルでは、神奈川・ぴあアリーナMMにて自身最大キャパシティとなるワンマンライブ「Kroi Live Tour 2024-2025 "Unspoil" at PIA ARENA MM」を開催した。2025年7月にテレビアニメ「SAKAMOTO DAYS」第2クールのオープニングテーマ「Method」を収めたCDシングルを発表。8月からはホールツアー「Kroi Live Tour 2025 - HALL」、2026年1月にはアリーナツアー「Kroi Arena Tour 2026」を開催する。またメンバーはKroiと並行して、ファッションモデルやデザイン、楽曲プロデュースなど多様な活動を展開している。

go!go!vanillas(ゴーゴーバニラズ)

牧達弥(Vo, G)、柳沢進太郎(G)、長谷川プリティ敬祐(B)、ジェットセイヤ(Dr)による4人組バンド。2013年1月に7inchシングル「人間讃歌 / アクロス ザ ユニバーシティ」、7月に1stアルバム「SHAKE」をSEEZ RECORDSよりリリースした。2014年11月にはビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterよりメジャーデビューアルバム「Magic Number」、2015年4月にメジャー1stシングル「バイリンガール」を発表。2020年11月にはツアー「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020」を開催し、最終公演では東京・日本武道館のステージに立った。2024年1月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsに移籍し、11月にはアルバム「Lab.」を発表した。2025年7月にテレビアニメ「SAKAMOTO DAYS」第2クールのエンディングテーマ「ダンデライオン」を配信リリース。10月からは自身最大規模の全国ツアー「go!go!vanillas Hall Tour 2025-2026」「go!go!vanillas Arena Tour 2026」を開催する。