EDテーマ担当
go!go!vanillas インタビュー
ジャンプ熱に再び火を着けられた
──「SAKAMOTO DAYS」の原作については、皆さん今回の主題歌のお話をきっかけに読まれた感じですか?
牧達弥(Vo, G) そうですね。もともと「週刊少年ジャンプ」は大好きで幼少期からずっと読んでましたけど、大人になってからはなかなか週刊ペースで全部を追い続けることができなくなってしまって。その中で、「SAKAMOTO DAYS」はしっかりジャンプ特有の熱量を受け継いでいる作品だと感じましたね。戦闘シーンの迫力やキャラクターの魅力に引き込まれて、夢中になって読みました。またジャンプ熱に火をつけられた感覚です。
長谷川プリティ敬祐(B) 理屈はさておき、まず「面白い!」という感想が真っ先に来るところがまさにジャンプ作品だなと。細かく言えば「戦闘シーンの構図が」とか「セリフ回しが」とかいろいろ言えることはあるんだけど、結局「面白い」と直感的に感じられるかどうかが一番大事だなと思うので。ロックバンドも、まず「カッコいい!」と理屈抜きで思えるかどうかじゃないですか。それと一緒ですよね。
ジェットセイヤ(Dr) ジャンプ作品に通底する家族愛や人間讃歌的な部分にも惹かれました。
柳沢進太郎(G) 出てくる悪役がみんなカッコよくて、たまに敵キャラを応援しそうになっちゃうんですよね(笑)。敵キャラが魅力的なのって人気作品に共通する特徴だと思いますし、スラー一派なんて本当にみんなカッコいいです。
牧 僕はとくに篁が好きなんですけど、ああいうキャラクターの描かれ方ってあんまりなかったんじゃないかなと思っていて。達人のおじいちゃんキャラ自体はよく見るけど、だいたい現役を退いた師匠的な立ち位置だったりすることが多いんで、篁みたいな孤高のタイプは珍しいなと。「人生経験が強さになる」みたいな、鈴木祐斗先生の年長者に対するリスペクトも感じられて好きです。
セイヤ 俺も篁さん好きなんですよね。武士が好きなんで(笑)。日本人の伝統的な精神性のようなものが感じられるところがいいなと。
プリティ 僕は平助がすごく好きで……なんか、シンが平助の思考を読もうとしたときに、ものすごく原始的なことしか考えてなくて「読むだけ無駄だ」みたいになるシーンがあるじゃないですか(笑)。僕は普段、余計なことばかり考えちゃってることが多いんで、あんなふうにシンプルな思考で生きられるのはいいなって思います。みんなと分け隔てなく仲よくなれる人柄も好きですし。
柳沢 僕も平助は好きですね。FPSをよくやるんで、あんなふうにうまく銃を撃てるようになりたい(笑)。
坂本にとっての安寧や癒しを描けたら
──そんな「SAKAMOTO DAYS」の第2クールエンディングテーマ「ダンデライオン」をバニラズの皆さんが手がけました。オファーを受けて、まずどんなことを考えましたか?
牧 エンディングということもあって、坂本にとっての安寧や癒しみたいなところを描けたらいいな、というのがコンセプトでした。第2クールでは戦闘シーンやシリアスなシーンが増えてくるので、戦いを終えた坂本が家族の待つ家へ帰っていくイメージで書きたいなと。
──完全にエンディングに特化したものを作ろうと。
牧 そうですね、はい。
──音の印象としては、“アゲアゲではない四つ打ちディスコ”という感じですよね。このサウンドイメージはどういうところから?
牧 この曲を作ったのは、時期で言うとアルバム「Lab.」の制作を進めていたタイミングと重なってたんですけど、並行していくつか作っていた原型トラックの中にこれもあったんですよ。その音から坂本だったり周りのキャラクターたちのイメージがなんとなく見えてきたんで、「これを形にしたいな」と思って歌詞も含めて構築していきました。
セイヤ 最初にデモを聴いたときは、哀愁がめっちゃあるなと思って。説明されずとも歌詞の世界観とかもスッと入ってきたし、ドラマーとしてはシンプルにこの歌世界を感じてもらえる音にするだけだなと思いました。
プリティ 哀愁がありつつも、“日々が続いていく”というイメージをすごく感じて。それがまさに「DAYS」という作品タイトルにふさわしいなと思ったので、ベースは1音1音をグルーヴに噛み合わせるというよりは泳ぐ感じか、漂うようなイメージでプレイしました。
柳沢 歌メロがすごく美しかったんで、僕はそれを邪魔しないギタープレイをしたいなと。それと、イントロのリフやサビのカッティングなどの象徴的なフレーズがデモの段階ですでに入ってたので、それを踏襲しつつ一番効果的な音色を探っていきました。エレピがすごく効いているアレンジなので、それに寄り添うような音色で弾いた結果、すごくうまい感じにまとまったなと思っています。
──皆さんがおっしゃる通り、抑えの利いたアレンジだなと感じました。たぶん若いバンドにはなかなかマネできないだろうなと。
牧 そうですね。我々ももう若くないんで(笑)。
セイヤ 確かに(笑)。
牧 バンドを始めたばかりの頃だったらこの方向性でいこうとは思わなかったでしょうし、そもそもこういう曲を作ってなかっただろうな、とは思いますね。
まるで坂本本人が作詞したかのよう
──「ダンデライオン」というモチーフは、坂本の“帰るべき場所”を象徴する妻が葵、娘が花という名前だから、それに並ぶものとして?
牧 それはありますね。ダンデライオンは坂本を表してるんですけど、僕の勝手な解釈として、彼は自分の手が血で汚れていることに引け目を感じている部分があるなと思ったんです。殺しの世界とは無縁の平和な社会で幸せに暮らす人たちに本当は混ざりたいけど、その引け目があるから心の奥底では混ざり切れない。そういう、美しい花々を遠くから眺めているタンポポのイメージ。
──なるほど。
牧 それと、「ダンデライオン」って語源としては「ライオンの牙」という言葉からきていて、強い者の象徴なんですよ。でも、タンポポは綿毛になって飛んでいくじゃないですか。そのちょっと吹いたらなくなってしまうはかなさが、平和な生活を失うことに対する坂本の不安や恐怖感に通ずるなと思って。だからこそ、坂本にはライオンではなくて花であってほしい。葵と花という花々と同列の存在に坂本もしてあげたいなという思いから、ダンデライオンというモチーフを選びました。
──牧さんは坂本のことが大好きなんですね。
牧 はははは! もちろん好きですよ(笑)。めちゃめちゃ好きです、はい。
セイヤ まるで坂本本人が作詞したかのような歌詞ですよね。最初に読んだとき、まずそれがすげえなって思いました。
プリティ 「死も厭わない」というフレーズもあったりして、強い情熱が込められてはいるんだけど、それを強く言わないのも坂本っぽいですよね。淡々としているというか、熱量の高い言葉をさらっと言う感じ。
──最初は正直、あまり坂本にタンポポのイメージはないなと思ってたんですけど、お話を伺っているとすごくぴったりに思えてきました。
牧 そうですよね。あとそうだ、花言葉も調べたんですよ。これが面白くて、花が咲いているときは「幸せ」とか「永遠の愛」なんですけど、綿毛になった途端に「別れ」「離別」になるんです。その相反しているところも坂本のイメージにマッチしているなと。
プリティ 坂本って、キャラとしての懐が深いですよね。カッコよくもあるし3枚目でもいけるから、「こういう坂本はイメージと違うな」というのがあまり浮かばない。
柳沢 あと、坂本は敵を絶対に殺さないじゃないですか。葵さんとの約束で。
セイヤ 確かに! ライオンって、オスは狩りしないもんね。獰猛なイメージが強いけど、実は殺さないっていう。
柳沢 タンポポというよりライオンの話ですけど(笑)、そこも似てるなと思いました。
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