ナタリー PowerPush - サッズ
新作は偶然が生んだ産物 清春がサッズの魅力激白
7年ぶりに突如復活したサッズが、フルアルバム「THE 7 DEADLY SINS」に続く最新ミニアルバム「Lesson 2」をリリースした。清春(Vo)、K-A-Z(G)、クボタケイスケ(B)、GO(Dr)という個性的な布陣で制作された本作。ラウドロックの流れを組むアグレッシブなサウンドはそのままに、疾走感あふれるファストチューンからダンサブルな楽曲、聴き応えのあるミディアムナンバーまで、ミニアルバムとは思えないほど濃厚で聴き応えのある作品に仕上がっている。
ナタリーでは、黒夢の再始動も控えた清春にインタビューを敢行。新作制作の経緯や新生サッズの現状、サッズを通じて清春が得たもの、そしてサッズや黒夢の今後についてなど、気になる話をたっぷり訊いた。
取材・文/西廣智一
本当は出すはずじゃなかった「Lesson 2」
──7月にアルバム「THE 7 DEADLY SINS」が出て、5カ月という短いスパンで「Lesson 2」が発売されました。本作はミニアルバムとはいうものの8曲入りですし、フルアルバムと呼んでもおかしくないボリュームだと思います。
そうですね、僕らが子供の頃には8曲入りフルアルバムなんてたくさんありましたし。
──そもそもなぜ矢継ぎ早に作品をリリースすることになったんですか?
いや、本当は出すはずじゃなかったんです。「THE 7 DEADLY SINS」を7月に出して、その後に東名阪だけで3本ツアーをした。このツアーが終わったら黒夢の制作に入る予定だったんですけど、ちょっと名残惜しい気持ちがあって、もうちょっとツアーをやりたいと思ったんです。
──それが、11月からスタートしたツアー「ANDROGYNY INSANITY」ですね。
はい。で、ツアーをやるんだったら「THE 7 DEADLY SINS」には入ってないようなタイプの曲もやりたいなと思って。そうしたらいろいろ曲ができたので、「じゃあアルバム作っちゃう?」ということになったんです。
──あっ、なるほど。
普通はアルバムを出してからツアーなんですけど、今回はアルバムが出る前にツアーで全曲披露して。ツアーが終わったらアルバムを出して、一旦サッズを休もうということになったんです。だから、予定していた活動期間を延長してるんですよ。
──本当に予定外だったんですね。それだけ、新しいサッズに魅力を感じたということなんでしょうか?
可能性を感じてるのかもしれない。人気がどうとか、動員がどうとか、チャートがどうとかっていう以上にサウンドの可能性ですね。メンバーはみんな出身ジャンルがバラバラだし、だからこそバンドとしてどこに到達すればいいのかをすごくみんな考えていて。メンバー4人の個性をぶつけ合って、互いを殺すのではなくて生かしていくという目標ができたんです。だから、K-A-Zくんのギターの音はゴリッゴリのままでも、僕はこれまでどおりの歌い方で歌って、クボちゃん(クボタケイスケ)も泥臭い感じのままベースを弾いて、GOくんもツーバスを踏みまくる。たぶんこういう音楽をやってるほかのバンドよりも、すごく可能性がある気がしているんです。
今のサッズは4人の最小公倍数を探す作業が楽しい
──どうしても復活後のサッズを活動停止前のサッズと比較して見てしまうんですが、以前のサッズって清春さん中心に動いているイメージがあったんです。でも今は、ライブでも4人の個性がバラバラで際立っていて。それぞれが別の方向を見ているんだけど、最終的にひとつの束になってぶつかっていくようで、バンド感が以前とは違う印象があります。
そうですね。以前のサッズみたいに僕だけフィーチャーするのが嫌で以前のサッズを辞めたんで。「THE 7 DEADLY SINS」っていうアルバムは、本気でメンバー同士の音がぶつかって戦ってる感じにしたかったんです。よくインタビューで「この4人じゃないと、このアルバムの音は出せません」って言ってる人がいるじゃないですか。でも僕は、80%ぐらいのバンドはメンバーが変わったって同じ音が出せると思うんですよね。だけど、このサッズはそれぞれバラバラすぎて無理なんです。4人の最小公倍数を探す作業がすごく楽しいんですよ。
──サッズをまた始める際に、今みたいな形を想像できてましたか?
いや、まったく。今までとは違うジャンルの人と一緒にやってみたくて。去年の1月に黒夢の武道館ライブが終わってサッズをやろうってときに、やっぱり可能性を感じるメンバーとやりたいなと考えて、黒夢の武道館ライブで一緒にやったK-A-ZくんとGOくんに声をかけたんです。クボちゃんは僕がソロでやってるときのベーシストで、キャラクターが面白かったし今まで感じたことのない"匂い"がしたんで、サッズで一緒にやったら面白いだろうなと思って。普通だったらいわゆるヴィジュアル系出身と言われるアーティストが一緒にやろうと思わないメンツですよね。でも、僕もある程度キャリアを重ねてきて、違うジャンルの人たちにもぶつかっていける、面白いことがやれると思ったんです。
──人間って年齢を重ねてくと落ち着いたり、丸くなったりする人が多いと思います。バンドでも何年かのブランクの後に再結成すると、当時のイメージとちょっとかけ離れてたりすることもあって。
わかるわかる。歳食ったけど、当時のイメージを再生しようとがんばってみたり、曲も昔に近づけようとしたりね。
──でも、今のサッズはガンガン攻めまくっていて。この音でメンバー同士がぶつかり合ってる40代のバンドって、今の日本の音楽シーンではほとんど見当たらないように思います。
人間が歳を取って丸くなっていくのは理解力が増えていくことだと思うんで、それ自体は全然いいと思うんですよ。僕は今のサッズでは、インディーズの頃からひっくるめても過去最高に激しい音楽をやってるけど、K-A-ZくんやGOくんにとってはこれが普通のことなので、一緒にやるなら負けたくなかったんです。
──彼らはただ激しいだけじゃなくて、技術的にもレベルが高いですしね。
僕はもう42歳だけど、今のサッズは激しさの面では20代前半とか30歳ぐらいまでの音楽ですよね。でも、やっていることはかなりテクニカルで、そういう意味では年相応なのかもしれない。彼らの演奏能力には本当に感心してるし、尊敬してます。
CD収録曲
- WASTED
- ANDROGYNY INSANITY
- DISCO -album mix-
- SILLY
- WHITE HELL
- RESCUE
- GRAVE
- AMARYLLIS
TYPE A DVD収録曲
- ANDROGYNY INSANITY
- WASTED
サッズ
1999年、黒夢を無期限活動停止させた清春(Vo)が結成したロックバンド。同年7月7日にシングル「TOKYO」でメジャーデビューを果たし、後期黒夢にも通ずるメロウでスピーディーな楽曲で人気を博す。2000年にリリースした4thシングル「忘却の空」はドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主題歌に起用され、大ヒットを記録。精力的なライブツアーを続けながら、音楽性をアルバムごとに変化させていき、黒夢時代のファンのみならず新たな層にもアピールしていった。2003年7月にベストアルバム「GREATEST HITS ~BEST OF 5 YEARS~」を発表した後に、バンドは活動停止。清春はソロ活動へと移行した。しかし2010年1月29日、突如サッズ再始動を発表。清春、K-A-Z(G)、クボタケイスケ(B)、GO(Dr)というこれまでとは異なるメンバーで、同年5月に日本武道館で復活ライブを行った。デビュー記念日となる7月7日には、再始動後初のアルバム「THE 7 DEADLY SINS」をリリース。これまで以上にヘヴィでメタリックなサウンドと、英語詞を中心とした楽曲で従来のファンを驚かせた。