ナタリー PowerPush - サッズ
新作は偶然が生んだ産物 清春がサッズの魅力激白
バンド名は一緒だけど活動停止前とは別のバンド
──前作「THE 7 DEADLY SINS」は7という数が印象的な、コンセプチュアルなアルバムでした。今回の「Lesson 2」も事前に何かコンセプトを用意していたんですか?
「THE 7 DEADLY SINS」は本当に速い曲ばかりだったので、ライブで疲れちゃうっていうのがあって。僕もですけど、お客さんもそんなに若くはないんで(笑)。それで、ライブのメニューを考えたときに「こういう曲があったらいいな」っていう、「THE 7 DEADLY SINS」にはないようなミディアムテンポの曲を増やしたんです。
──前作は曲間にSEが入っていて、演劇的というか作り込まれている印象がありました。でも今回は、もっと直球な構成ですね。
そうですね。まあミニアルバムなんで、単に曲が並んでるだけっていう感じになりますよね。
──サッズはアルバムごとに毎回かなり変化してきたと思うんですが、「THE 7 DEADLY SINS」から「Lesson 2」の流れは、変化というよりはよりディープになった印象があります。
バンド名は一緒なんですけど、活動停止前と今とは別のバンドのつもりでいますからね。今はバンド名を変えてもいいぐらいの気持ちもあって。過去のサッズは事実上解散してたしね。メンバーも、4人でデビューしたのにすぐ3人になっちゃったり、ドラムがいなくなったりで、バンドというよりは企画色が僕の中で強かった。今はバンドとして「THE 7 DEADLY SINS」からスタートしてる感じですね。だから、急に音楽性も変えようがないし、変えたらメンバーの個性を殺すことになると思うので、この4人のまま新しい冒険ができればなって思ってます。
英語詞のほうが単純に音の響きとして気持ちいい
──歌詞についてもお訊きしたいんですが、前作から英語詞が中心になってますよね。そして、今回はさらにその比重が高まってます。英語詞でやろうっていうのは、最初からコンセプトとしてあったんですか?
特にないんですよ。たぶん日本語で歌詞を書いたとしても、今のサッズでは英語っぽく歌うと思うんです。ただ、それをやるんだったら最初から英語でいいじゃんって(笑)。よく日本語で歌ってるのに英語っぽく聴こえるように歌う人もいるけど、ちょっと「空耳アワー」みたいな感じになっちゃって、カッコ良くやりたいのにただ面白いものになってしまう可能性もあるので。あと、日本語の歌詞ってやっぱり耳に引っかかるもんなんですよね。ときにリズムさえも打ち消してしまうこともあるので、いろいろ考えた結果、特にこういう音楽には英語のほうがスムーズに聴こえるんじゃないかなと。
──確かに、英語詞の曲の中に突然日本語詞が入ってくると、その瞬間すごくハッとさせられますね。
やっぱり日本人だから、ハッとしちゃうんですよね。僕はその部分に関してはわざとやってるんですけど。サッズの3rdアルバム「THE ROSE GOD GAVE ME」(2001年発売)は、8割ぐらい英語詞なんです。その頃にもらった手紙とか、インターネットのBBSとかには「やっぱり日本語がいい」っていうファンからの声が多くて、その後の作品で日本語に戻したことがあったんですよ。でも、解散してまた英語になってるっていう(笑)。やっぱり英語詞のほうが単純に音の響きとして気持ちいい。発音とか面倒なんで本当は日本語がいいんですけど、ここがまた難しいところで。
──確かにヘヴィロックを英語で歌うのは、洋楽を聴いてきた人にはすごく自然に聞こえます。
そうですね。昔も日本のロックは日本のロックでちゃんと存在してたけど、こういうサウンドって当時は洋楽にしかなかったものだったし。今やってる速い曲を日本語で歌ったら、早口になってもっとグダグダになるか、笑えるものになってしまうと思うんですよね。だから、バランス的にはたまに日本語が出てくるくらいが一番良いのかなって。
まだやれるってことを確認したい自分がいる
──今の清春さんは昔みたいにサッズ1本だけというわけではなく、黒夢も控えているし、ソロをやりたくなったらソロもできる。いろんな選択肢があるから、サッズは英語で歌うという表現方法を取れるのかなと思います。そういう意味では、以前よりもやりやすくなっているんじゃないですか?
分け方はハッキリしてますよね。メロウな曲はソロでやればいいし、ポピュラリティのあるものは黒夢でっていうイメージは漠然とあるんですけど。ただ、自分が高校生のときに憧れていたのは、ソロシンガーの人たちよりもバンド。やっぱりサッズには可能性を大きく感じているし、今までの僕を知らない人も含めていろんな人を驚かせることができると思う。僕らは平均年齢40歳ぐらいなんで、本気でやれる感じじゃないとバンドをやってる意味がないんですよ。若い奴らみたいに、これから売れて夢をつかみたいとか武道館でやりたいとか、そういうのでもない。僕はそういうのも一応通過してきたから、これからやるんだったらやりがいがあるものじゃないと、もうできないんです。せっかくいい大人が集まってやるんだから、肉体的にも精神的にも戦って、まさにこの歳で無理してるっていう感じで限界までやろうとしないとね。楽しさがマヒしてるから、今まで経験してきた楽しかったことよりも楽しくないとできないんですよ。
──楽しさややりがいの部分で今までにないものがあるから、突き進んでいけるんですね。
うん。もうこれは本能だと思っていて。自分がデビューして何年か経って、42歳になった。男性としては今が最高に働き盛りなんですけど、ミュージシャンとしてこの手の音楽をやるとなると、あと何年続けられるかわからない。たぶんそれはK-A-ZくんもGOくんもクボちゃんも、みんな感じてると思う。でも、その反面まだやれるってことを確認したい自分もいて。僕ら4人とも、そこがすごく気持ちいいんだと思うんですよね。この、自分を痛めつけてる感じが快感でもあって。若い奴らには負けないっていうレベルの話じゃなくて、みんな自分自身に負けたくないんですよ。
CD収録曲
- WASTED
- ANDROGYNY INSANITY
- DISCO -album mix-
- SILLY
- WHITE HELL
- RESCUE
- GRAVE
- AMARYLLIS
TYPE A DVD収録曲
- ANDROGYNY INSANITY
- WASTED
サッズ
1999年、黒夢を無期限活動停止させた清春(Vo)が結成したロックバンド。同年7月7日にシングル「TOKYO」でメジャーデビューを果たし、後期黒夢にも通ずるメロウでスピーディーな楽曲で人気を博す。2000年にリリースした4thシングル「忘却の空」はドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主題歌に起用され、大ヒットを記録。精力的なライブツアーを続けながら、音楽性をアルバムごとに変化させていき、黒夢時代のファンのみならず新たな層にもアピールしていった。2003年7月にベストアルバム「GREATEST HITS ~BEST OF 5 YEARS~」を発表した後に、バンドは活動停止。清春はソロ活動へと移行した。しかし2010年1月29日、突如サッズ再始動を発表。清春、K-A-Z(G)、クボタケイスケ(B)、GO(Dr)というこれまでとは異なるメンバーで、同年5月に日本武道館で復活ライブを行った。デビュー記念日となる7月7日には、再始動後初のアルバム「THE 7 DEADLY SINS」をリリース。これまで以上にヘヴィでメタリックなサウンドと、英語詞を中心とした楽曲で従来のファンを驚かせた。