ナタリー PowerPush - サッズ

新作は偶然が生んだ産物 清春がサッズの魅力激白

今まで何をやってきたか、どう生きてきたか

──もうちょっと歌詞について訊かせてください。「THE 7 DEADLY SINS」や「Lesson 2」の曲タイトルや歌詞って、ちょっと邪悪な要素が強いですよね。これって最初から狙ったものだったんですか? それとも、サッズの音に導かれてこういう内容になったんですか?

どうなんでしょうね。本当に普段から「Satan」とか「Evil」とか考えてるわけじゃないし。僕は演者であることを念頭に置いてやってます。海外のアーティストだったら宗教の問題、人種の問題、政治の問題が歌詞に反映されてもおかしくないと思うんですけど、日本って荒れてはいるけど基本的には平和じゃないですか。そこで例えばエミネムみたいな歌詞が書けるか、KORNやマリリン・マンソンみたいな歌詞が出てくるかっていうと、嘘になっちゃうと思うんですよね。エンタテインメントの部分でいかに演じきることができるかというところでは、こういうメタリックなサウンドで邪悪なものを演じるのはアリなのかなって。要はCDを作ってライブでプレイして、そこまでで世界観が完成されてればいいと思うんです。

──音と音が本気でぶつかり合うライブでサッズの曲を聴くと、ヒリヒリ感がCD以上に強まっていて、説得力がさらに増していると思います。

要するに、今まで何をやってきたか、どう生きてきたかってことだと思うんです。例えば42歳の普通のサラリーマンが「Evil」って歌ったとしても、ちょっと茶化してるんだなって思われちゃいますよね。

──普段の生活とかけ離れてますしね。

僕はヘヴィメタルとかヘヴィロックとかまったく詳しくないんですけど、それでも耽美な音楽やポジパン、日本のロックを聴いてきてるから、そういった経験が今になって役立っているんじゃないかな。特に僕のキャリアはいろんな色が付いてるから、それを生かすも殺すも自分次第。例えば何をやってもヴィジュアル系って枠に括られることがあるけど、逆にそれをうまく利用できるかできないかだと思うんです。

サッズを聴いてこなかった人や若い世代に聴いてもらいたい

──せっかくすごく強烈な作品を立て続けに生み出してきたのに、ここで一旦活動を止めてしまうのは、ちょっとさみしいですね。

僕も自分で何やってんだと思います(笑)。何を忙しくしちゃってるんだろうって。

──でも、今後もタイミングさえ合えば、またこのメンバーで活動するんですよね?

そうですね。何カ月か後にまたレコーディングを再開して、フルアルバムを作って。メンバーみんな、プレイヤーとしてまだやってないことがある、今だったら自信があるって言ってるんですよ。僕にはそういう感覚がないので、その違いが楽しいんですよね。僕にできる挑戦は、今よりもいい曲やこれまでとちょっと違う曲を作って、それを今までサッズを聴いてこなかった人やもっと若い世代に聴いてもらうこと。次に向けていい作品を作って、いいライブをやりたいです。

──清春さんは黒夢やソロ、他のみなさんもそれぞれの活動に戻っていくんですね。

またばらけて、いろんな世界で活動して、いろんなものを通過していくと思います。みんな本当にナイスガイだし、本当に音楽でサバイブしてきた人たちだけど、僕と感覚が全然違いますからね。僕はナタリーのニュースでもそうですけど、載るならバーンと載らなきゃ嫌だと思っちゃう。だけど、彼らにとっては自分がそのシーンに存在してることが第一なんですよ。だって、今はiTunesもYouTubeもあって触れる機会はいくらでもあるのに、彼らは人気のあるバンドをほとんど知らないですから。特にK-A-ZくんとGOくんはテレビもほとんど観ないし、彼らの子供もヘヴィメタルしか聴かない(笑)。それくらい感覚が違うんです。ずっと肉しか食ってなくて、魚の味がわからないみたいな感じ。そんな人たちが僕と一緒にバンドをやってくれてるっていうのは、すごくうれしいですね。

最初から黒夢用に曲作りをすることはない

──黒夢についての話も訊かせてください。来年1月29日にニューシングル「ミザリー」が発売されます。ひと足先にデモを聴かせてもらいましたが、聴いた瞬間に「あっ、黒夢だ!」って確信できる楽曲ですよね。この曲は最初から黒夢用に書いたものなんですか? それとも曲作りの流れで「これは黒夢っぽいな」と振り分けたんですか?

僕が作曲するときは、後から割り振るようにしてます。キャッチーな曲を続けて書くと、その反動でハードな曲を作りたくなる。結果的に1日に2~3曲作るんですけど、それを2週間ぐらいやって3~40曲作って、後から「これはサッズで使おう」「これは黒夢にしとこう」「これはソロで」って分けます。

──自分の中から出てくるものを、とにかく曲にしていく感じですか。

そうです。黒夢は、サッズのツアーをしながら人時くんと一緒にレコーディングを進めてたんですけど、ツアー中で声がガラガラなのでそのときはオケだけ録ってたんですよ。黒夢では、ギターとドラムはその曲に合ったミュージシャンを迎えて録音してます。

──シングルリリース後には、代々木体育館でのライブも決まっています。今の段階で、どういう感じにしようか考えてますか?

2月26日のライブについてはまだ何も考えてないですね。僕と人時くん以外のメンバーも正式には決まってないし、どういう曲をやるのかも決まってないし、どういうふうにプレイするのか、どうリアレンジするのかも決まってない。ちょっとどうなるのか、僕も楽しみですよ。

サッズを先に始めたことでバンドに対する感覚が変わった

──黒夢の後には、サッズもまた動きだすでしょうし、2011年も忙しくなりそうですね。

そうですね。僕も去年までは、まさか2バンドとも復活するとは思ってなかったし。

──そもそも、どうして復活することになったんですか?

世話になってた雑誌の編集長が急に亡くなって、すごく考えさせられて。彼がいかに黒夢やサッズを愛していたかを思い出して……単純にそれだけの理由だったんです。去年の黒夢の武道館にも彼が来てくれて、「本当に最高でした!」と言ってくれたので、黒夢もサッズも復活して何か届いたらいいなと。

──そのきっかけがなかったら、黒夢もサッズも復活してなかった?

うん。本当に去年の1月で、黒夢はジ・エンドだったんですよ。またやる気もなかったし。ただ、サッズを先に始めたことで僕の中でバンドに対する感覚がすごく変わって。今のサッズの楽しさっていうのは、今まで体験したことないものだったんです。人時くんに対しても……僕が25歳で彼が21歳のときに黒夢でデビューしたんですけど、それが今では42歳と38歳。活動停止してから去年の1月まで、10年間まったく会ってなかったし、電話番号も知らないから連絡も取ってなかった。お互いが何をしてるかは雑誌で知るだけだったし。それが去年再会して、ちゃんと黒夢を解散させて。その後に、彼は僕が大好きなDEAD ENDのMORRIEさんがやってるCreature Creatureでベースを弾き始めたので、ライブを観にいくようになったんです。そういうことを積み重ねて、今また一緒にレコーディングしてるのは本当に不思議ですね。

ミニアルバム「Lesson 2」 / 2010年12月8日発売 / avex trax

  • TYPE A[CD+DVD] / 2800円(税込) / AVCD-38208 / Amazon.co.jpへ
  • TYPE B[CD] / 2000円(税込) / AVCD-38209 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. WASTED
  2. ANDROGYNY INSANITY
  3. DISCO -album mix-
  4. SILLY
  5. WHITE HELL
  6. RESCUE
  7. GRAVE
  8. AMARYLLIS
TYPE A DVD収録曲
  1. ANDROGYNY INSANITY
  2. WASTED
サッズ

1999年、黒夢を無期限活動停止させた清春(Vo)が結成したロックバンド。同年7月7日にシングル「TOKYO」でメジャーデビューを果たし、後期黒夢にも通ずるメロウでスピーディーな楽曲で人気を博す。2000年にリリースした4thシングル「忘却の空」はドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主題歌に起用され、大ヒットを記録。精力的なライブツアーを続けながら、音楽性をアルバムごとに変化させていき、黒夢時代のファンのみならず新たな層にもアピールしていった。2003年7月にベストアルバム「GREATEST HITS ~BEST OF 5 YEARS~」を発表した後に、バンドは活動停止。清春はソロ活動へと移行した。しかし2010年1月29日、突如サッズ再始動を発表。清春、K-A-Z(G)、クボタケイスケ(B)、GO(Dr)というこれまでとは異なるメンバーで、同年5月に日本武道館で復活ライブを行った。デビュー記念日となる7月7日には、再始動後初のアルバム「THE 7 DEADLY SINS」をリリース。これまで以上にヘヴィでメタリックなサウンドと、英語詞を中心とした楽曲で従来のファンを驚かせた。