ルーツは「ぼのぼの」
──この「章」の歌詞について、ほかの皆さんはどう感じました?
小林 「寄り道したい」というフレーズが、切り口として秀逸だなあと思って。「回り道」ではないんですよね。あくまで1つの目的に向かって生きている中で、遠回りをしているわけではなくて、1回その線から離れるというか、分岐を作るというか。それがリアルだなと思いました。基本的にそのメインの線からは離れられないけど、一度離れたいという願望は常にあるし、大人になってもそれだけは忘れられないはずで。気を張って生きている人に、休む場所を与えるような楽曲になっているのは、この「寄り道」という言葉が大きいのかなと思います。
peppe この曲の歌詞は、私にとっても教訓になってますね。私は「無駄なことができない」という悩みを抱いていたことがあって……効率化にとらわれて、1日の作り方とかを考えて、自分で自分を制して苦しめていた時期があったんです。例えば、今はGoogle Mapsがあるから、行きたい地点までいかに短い時間で到達するか?みたいなことが可能じゃないですか。そういう便利さもありながら、「寄り道」とか「無駄」とか、そういうキーワードにハッとさせられたタイミングが、私にもあったなと。
長屋 この歌詞というか考えのルーツになっているのが、大好きな「ぼのぼの」という作品で。そのアニメの曲で「近道したい」という曲があるんです。道の行き方は全然違うけど、「たまには近道をしたいだめかしら」「常識なんて誰かが決めた事」というシンプルな歌詞にハッとさせられたことがあって、すごく好きだったんですね。そういう要素も出したいなと思い、「寄り道したい」という歌詞にたどり着きました。
──「ぼのぼの」といえば、原作の4コママンガの第1話は、川から流れてきたぼのぼのが、杭に当たってスイーッと向きを変えて、そのまま流れていくだけでしたからね。あれも、無駄と言えば無駄ではあるんだけど……。
長屋 そうそう(笑)。そういう哲学的なところが好きなんですよね。
穴見 「ぼのぼの」歴、長いよね?
長屋 長い。子供の頃から好き。
──真吾さんはこの曲の歌詞についてどう感じましたか?
穴見 「長屋って最近、こういうことを考えてるんだな」というのが率直な感想です(笑)。普段から似たようなことを話してはいるけど、こうして作品にされると、改めていい言葉だなと。Bメロでちょっと転調しているところがあって。“転調しているかしてないかわからない”ぐらいのキワを攻めて、「揺らぐ」みたいなイメージで曲を作っていたんですけど、そこにドンピシャの歌詞が来たので、すげえなと思いました。
──後半の「あらすじにない余白は / 未完の私で埋めていく」のあと、拍も変わって一瞬プログレのようになりますよね。
穴見 それも「月夜行路」の持っているカオティックなミステリーの感じをイメージしていて。ここで車が走り出す!みたいな(笑)。
長屋 いろんな事件に巻き込まれていく感じね。
──随所にスパイスは効いているものの、楽曲自体は正統派ですよね。
穴見 そうですね。去年ぐらいから、そういうモードに僕が入ってるのかもしれないです。
長屋 でも、まっすぐに作ったら出ないけどね。こういう転調とか。すごいなと思う。
穴見 「なんでこうなったのか?」というのは、なかなか自分でも解説できないんだけどね。でも「自分の中のなるべくピュアな部分を掘り起こそう」みたいなマインドがあるのかもしれないです。
「ha-jさんというプロフェッショナルの技が混ざったら」
──「章」のアレンジは真吾さんと、嵐の楽曲でおなじみのha-j(ハージェイ)さんが担当されています。
穴見 うちの制作スタッフと、アレンジのこととは全然関係なく「嵐ってヤバいよね」という話をしていて。技巧派なオケであるということに、昔は気付かなかったけど、よく聴くと音楽的に相当ヤバいことしてるよねって。その感じをリョクシャカだったら体現できるんじゃないかな?、僕らというフィルターに、ha-jさんというプロフェッショナルの技が混ざったら、めちゃくちゃ面白いんじゃないか?と思ったんです。シンプルに嵐の皆さんが大好きだし、ha-jさんがアレンジした曲も大好きだし。そういういろんな思いをまとめてボンと、ha-jさんにお願いした感じです。コクを出してもらったというか、素材の味を消さない程度にスパイスを加えてもらったというか……絶妙なアレンジをしていただきました。ha-jさんは楽器もめっちゃうまくて、プレイヤー兼アレンジャーとして勉強になりました。
長屋 どの楽器も、リョクシャカにとって入れ方が新しい感じがして。レコーディングも新鮮でしたね。同じプレイヤーでもこういう可能性があるんだ、という気付きにもつながりました。
──そこでも緑黄色社会の冒険心が生きてますよね。新しい扉を開くことに、ちゃんとワクワク感を持って臨めているわけで。
長屋 そうですね。みんな「おー、いいじゃん!」という感じでした。
小林 ha-jさんと最初に打ち合わせをしたとき、まず僕らのスタンスみたいなところをしっかり確認することから始めてくださって。「普段どういうふうにレコーディングしてるの?」「フレーズはどういう順序で作ってるの?」って。そういう擦り合わせが最初にできたのはすごくよかったです。
穴見 ライブ映像も前もって観てくれてたからね。
長屋 そう。だから「ライブを想定しなくてもいいです」って伝えて。
小林 「リョクシャカのみんなは、できることが多そうだから、どうしよう?」って、僕らのことをアゲてくださって、気分のよくなったところで打ち合わせが始まったしね(笑)。
長屋 だからか、けっこう難易度の高いアレンジでしたね(笑)。
小林 ha-jさんのアレンジって、ご本人がいろんな楽器を弾けることが大きく影響していると思うんだよね。それぞれの楽器が緻密に混ざり合って、お互いに邪魔しないように住み分けがなされていて、しかもそれぞれの楽器が無理なことをしていない。
穴見 無理なことをしてないけど、プレイヤー的にはちゃんと大変だしっていう(笑)。
長屋 私たちの曲って「これはピアノの曲だね」「これはギターの曲だね」ってカテゴライズされがちなんですけど、この曲はそうならない気がしていて。ちゃんとどのパートも立ってる感じがいいなあと思います。
peppe ha-jさんは歌詞をすごく重要視されていて。歌詞の季節感や場所、年代とか、そういうことを捉えてくださって、イメージしたものを形にしてくださるんですよね。私もフレーズを作るときは歌詞からイメージを引っ張ってくるんですけど、ha-jさんに「このフレーズ、どうやってできたんですか?」って聞いたら「歌詞からだよ」とおっしゃっていて。それが個人的にはうれしかったです。
“緑黄色社会らしさ”がちゃんと見えてきた
──緑黄色社会はデビュー当初から「国民的バンド」を目指すと語っていたバンドでもある一方で、「ほかの誰にもできない緑黄色社会だけの音楽」も追求し続けているわけですよね。それを両立しながら前進するって、想像以上に難しいことじゃないかと思うんですが。
長屋 「スタンダードになりたい」と言いながら、いろんなジャンルの音楽をやるのは一見矛盾しているかもと感じたんですけど、ここ数年で「緑黄色社会らしさ」がちゃんと見えてきたなと思うんです。いろんなことをやっても、緑黄色社会として聞こえるのが“らしさ”だから。その自信が「何でもやろう」というスタンスにつながっているのかな。
小林 特に今回みたいに名指しで僕らに依頼してくださる場合は、自由にやりやすいよね。
──それは裏を返せば、「自由にお願いしても、確実に緑黄色社会らしい魅力を持った楽曲が生まれてくる」という信頼の表れでもありますよね。
長屋 とは言っても、自分たちでも何が出てくるのか、本当にわからなくて(笑)。ほかのメンバーも曲を書いてるけど、みんな全然違うから。
小林 ガチャガチャみたいな感じだよね。当たりが出るまで、何回も引いてるだけで。
長屋 そう(笑)。トライし続けてはいるからね。
──音楽的にもスタンス的にも、緑黄色社会は本当の意味で“どこにでも行けるバンド”だし、いよいよ我々の見たことのないアーティストになりつつある……ということを、「章」を含むここ最近のリリースから強く感じました。
小林 でも、僕ら的にはまだ殻を破れていないところも絶対あるし、伸びしろはまだまだ全然あるんじゃないかなと思います。
──リリースペース的には、実はすぐこのあとにアルバムが控えてます!と言われても驚きませんので。
一同 (笑)。
長屋 早くアルバムを作りたい気持ちはいつだってあるので。またびっくりするようなものを作りたいですね。
公演情報
緑黄色夜祭 vol.13
- 2026年4月13日(月)大阪府 Zepp Osaka Bayside
<出演者>
鈴木愛理 / 緑黄色社会 - 2026年4月16日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
<出演者>
jo0ji / 緑黄色社会
緑黄色大夜祭2026
- 2026年4月25日(土)愛知県 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)
<出演者>
ORANGE RANGE / CUTIE STREET / 大塚 愛 / 緑黄色社会
スペシャルゲスト:見取り図 - 2026年4月26日(日)愛知県 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)
<出演者>
スキマスイッチ / BE:FIRST / 礼賛 / 緑黄色社会
スペシャルゲスト:ジェラードン
緑黄色社会アリーナツアー2026
- 2026年9月19日(土)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
- 2026年9月20日(日)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
- 2026年10月10日(土)福岡県 マリンメッセ福岡A館
- 2026年10月11日(日)福岡県 マリンメッセ福岡A館
- 2026年10月23日(金)大阪府 大阪城ホール
- 2026年10月24日(土)大阪府 大阪城ホール
- 2026年11月13日(金)愛知県 IGアリーナ
- 2026年11月14日(土)愛知県 IGアリーナ
- 2026年12月5日(土)神奈川県 横浜アリーナ
- 2026年12月6日(日)神奈川県 横浜アリーナ
プロフィール
緑黄色社会(リョクオウショクシャカイ)
高校の同級生だった長屋晴子(Vo, G)、小林壱誓(G)、peppe(Key)と、小林の幼馴染・穴見真吾(B)によって2012年に結成された愛知県出身の4人組バンド。2013年に10代限定のロックフェス「閃光ライオット」で準優勝したのを皮切りに活動を本格化させる。2018年に1stアルバム「緑黄色社会」をリリースし、それ以降、映画・ドラマ・アニメの主題歌を多数手がけるなど躍進。2020年発表のアルバム「SINGALONG」は各ランキングで1位を獲得し、リード曲「Mela!」はストリーミング再生数が5億回を突破するバンドの代表曲に。2022年9月には初の東京・日本武道館公演を2日間にわたり開催し、同年12月に「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2025年2月に5thアルバム「Channel U」を発表。翌2026年3月にシングル「風に乗る」、4月に新曲「章」をリリースし、同月に対バンイベント「緑黄色夜祭 vol.13」「緑黄色大夜祭2026」を開催。9月から5都市を回るアリーナツアーを実施する。





