りりあ。クリスマスイブに贈る「最後のバイバイ。」は「一番感情を乗せた」失恋バラード

りりあ。が12月24日に新曲「最後のバイバイ。」を配信リリースした。

11月1日にはミテイノハナシとしても活動するAru.を迎えたデュエットソング「恋って難しい。feat. Aru. from ミテイノハナシ」を配信し、11月22日の“いい夫婦の日”にテレビアニメ「わたしの幸せな結婚」のオープニング主題歌「貴方の側に。」を収録したCDをリリースしたりりあ。。リアルな恋愛模様を描き、ティーンを中心に共感を呼んでいる彼女がクリスマスイブに発表した新曲「最後のバイバイ。」は、自身の経験をもとに胸を締めつけるような切ない思いを表現したラブバラードだ。

音楽ナタリーでは、りりあ。に「恋って難しい。」「貴方の側に。」、本日リリースの「最後のバイバイ。」の3曲の制作エピソードをメインに話を聞きつつ、実体験にもとづく歌詞表現や来年の目標について語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 飛鳥井里奈

コロナ禍でも音楽活動に変化はない

──年末に公開されるインタビューということで、今回は2023年に発表されたりりあ。さんの楽曲を振り返りつつ、最新曲「最後のバイバイ。」についてお聞きできればと思います。今年は世の中的にコロナが落ち着いて、少しずつ以前の日常が戻ってきた感がありましたが、りりあ。さんにとっては音楽活動を含めてどんな1年でしたか?

日常生活に関しては、規制がいろいろ緩和されたことで外に出る機会も増えて、頻繁に遊びに行ったりするようにはなりました。ただ、音楽活動に関しては大きな変化はなくて。そもそもコロナ禍から本格的に始めたので、活動しやすさという点ではそんなに変わらずでした。

りりあ。

──制限のあった日常の中で活動を始めたから、そこまで窮屈と感じることなく、自分のペースでやれていたわけですね。

そうですね。今と同じように、SNS中心に活動していましたし。そもそもライブをしていなかった分、やりやすい環境だったのかなと思います。

──ライブを基盤としたアーティストは大変だったけど、りりあ。さんに関してはコロナ禍に左右されることなく、SNS中心の活動に生きやすさ、やりやすさを見出していたと。

はい。SNSじゃなかったら私は音楽を発信できなかったと思うくらいなので、すごく生きやすいです。

──ちょっと話題から外れてしまいますが、リアルな日常生活におけるりりあ。さんはどんな感じなんですか?

……ダラけてますね、スタッフさんがいる前ではちょっと言えないぐらいに(笑)。

海外リスナーからのうれしい反応

──今年はまず、7月にテレビアニメ「わたしの幸せな結婚」のオープニング主題歌として「貴方の側に。」が配信リリースされました。この曲はアニメの影響もあり、反響も大きかったのではないでしょうか。

そうですね、ありがたいことに。「貴方の側に。」は原作に登場するセリフを歌詞の中に取り入れたりしていて、かなりアニメに寄り添った内容に仕上げられたんじゃないかなと思います。

──そのせいもあってか、「貴方の側に。」を聴いていると自然とアニメの映像が頭に浮かんできます。この曲のように、お題を与えられて、そこに寄り添った楽曲を制作することで何か得られたものはありましたか?

自分が思っていることを好きなように表現するのとは違って、今までにない新しい経験でした。もちろん、テーマがあると最初はやりやすさを感じるんですけど、逆にそこから外れてはいけないという縛りもあるので、難しくもあります。

──タイアップがなければ、その曲の内容に関する決定権はすべてりりあ。さんにありますからね。

そうなんです。テーマソングとなると紐付く作品があるのはもちろん、そこに携わる方がたくさんいるので、そういう人たちの意見も取り入れることがある。そこが全然違うから大変でしたけど、やってみていい経験になりました。

──でもその結果、「わたしの幸せな結婚」というアニメを通して今まで以上に楽曲が広まっていったわけですから、ご自身の中でもかなり手応えを感じているんじゃないでしょうか。

確かに。今まではSNS中心に曲が広がっている実感がありましたが、最近は「アニメを観てりりあ。さんを知りました」という声をいただく機会もかなり増えていて。「『貴方の側に。』を知ってから、ほかの曲も聴くようになりました」と言っていただけることも多いので、アニメファンの方々にちゃんと曲が届いていることは、すごくうれしいです。それに、アニメは海外にも配信されるので、いろんな国の方からリアクションがありましたし、ファン層もかなり広がったことを感じています。それは2023年において、一番大きかったことじゃないかな。

CDはファンにとっても新鮮

──11月22日には、この曲を軸にしたCD作品「貴方の側に。EP」も発売。フィジカルでのパッケージは昨年の「記録」以来でした。

最近はCDを買って音楽を聴く方が少なくなってきている分、手元に残る作品というのが私のファンの方の間でも新鮮みたいで。身近な方に私のCDをプレゼントするとすごく喜んでいただけるので、いろいろと好評です。

──デジタル作品とはまた違って、手触りも含めて所有するという感覚がより強まりますし、作品に対する愛着が湧きますよね。

そうなんです。お部屋に飾ったりもできますし、そうやって目にすることで「もっと聴いてみようかな」という気持ちになるかもしれませんし(笑)。

──「貴方の側に。EP」には、アニメで斎森美世役を務めた声優の上田麗奈さんが歌ったバージョンの「貴方の側に。」も収録されています。

「あっ、美世が歌ってる!」と驚きましたし、歌も本当に素晴らしくて感動しました。それに、自分が作った曲を声優さんが歌ってくださるという、あまりない体験だったのですごくうれしかったです。あと、同じメロディ、同じトラックでも歌っている人の声によって曲の印象がこんなにも変わるんだという驚きもありました。

そうそう、これ!

──このCDと前後して、11月1日には今年2作目の楽曲「恋って難しい。feat. Aru. from ミテイノハナシ」が配信されました。

私が作詞作曲した曲を、ほかの歌い手さんが一緒に歌ってくださるということ自体が初めての経験で。これも新しい挑戦でしたね。

──1曲の中に女性目線と男性目線の歌詞が登場しますが、作詞において何か意識したことはありましたか?

この歌詞は私の実体験がモチーフなんですが、そこからどんどん広げていって。聴いた人にいかに共感してもらえるか、ということは一番意識したかもしれません。実はこの歌詞、最初は全部女性目線で書いたものだったんですけど、男性の歌い手さんが参加してくださることが決まったときに、「1番と2番で女性目線、男性目線と変えたほうが面白いんじゃないか?」とスタッフさんから提案があって。そこで「男性も女性も、恋愛に関して同じように感じる部分もあるよな」と思って、ちょっと言葉尻を男性っぽく変えてみました。

──そういった言葉遣いの違いや、男性が歌うか女性が歌うかで、こんなにも響き方が変わるものなんですね。実際、Aru.さんに歌っていただいてどうでしたか?

まず、Aru.さんの少年のような声がこの曲にぴったりすぎて。歌い方や気持ちの込め方もイメージ通りで、最初に届いたデモを聴いたときは「そうそう、これ!」と感動しました。あと、自分が作った曲を男性に歌ってもらうだけでこんなにも全体の雰囲気が変わるんだな、という驚きもありました。

──浅すぎず深すぎずという、気持ちの込め方のさじ加減が絶妙ですよね。

そうなんです。入りすぎてなくて、1歩引いているような感じもあって。

──そこがりりあ。さんの歌い方とマッチしていて。あと、2番でAru.さんのパートに移る際の転調も気持ちいいんですよ。

この曲、転調が何回もあるんですけど、このアレンジが本当に最高で。届いたときはうれしくて、ノリノリでした。でも、だからこそAru.さんは歌うのが大変だったんじゃないかと思います。

1つの恋愛からいくつも生まれていく

──「恋って難しい。」は実体験がもとになっているとおっしゃっていましたが、ご自身の経験をモチーフにすることは多いんですか?

以前はファンの方からの恋愛相談から歌詞が生まれることが多かったんですけど、最近は自分の実体験をモチーフにすることが増えていて。自分が経験していることなので作りやすいのかな。以前は「曲を作らなきゃ」と意識してからネタを探していたんですけど、最近は何か特別な体験をするたびに「あ、これは曲にできる」と考えてしまいがちなんです(笑)。実体験の場合、自然と「あ、これは曲にしなきゃ!」と思ってしまうことが多くて。

──なるほど。となると、歌いやすさや気持ちの込め方もだいぶ違うんじゃないですか?

全然違います! 特に私の曲は失恋ソングが多いから、実体験がモチーフだとより気持ちが乗せやすいですし、乗せたくなくても自然と気持ちが入っちゃいますね。

──自分の中からあふれ出た言葉だから、知らず知らずのうちに感情的になってしまうんでしょうね。恋愛ソングのほうが歌いやすい、歌にしやすいというのはあるんですか?

あります。恋愛ソング以外も作れるんだったら作りたいんですけど、最近は「私、恋愛ソングしか作れないのかな?」と気付いてしまって(笑)。

りりあ。

──でも、身近で誰もが共感しやすいテーマですからね。変なことを聞きますが、りりあ。さんは恋愛体質ですか?

どうなんだろう?(笑) 私の場合、1つの恋愛からいくつも曲ができていくんです。曲ごとに相手が変わっているわけではないので、1人の相手を擦って擦って、という感じです(笑)。

──1つの出来事でも、視点が変わるだけでだいぶ感じ方も変わりますよね。ご自身の経験をさらけ出すことに対しては、特に躊躇はない?

さらけ出しちゃいますね。ミュージックビデオに関しても、私が実際に行った場所とか「こういうことをしました」という経験を監督さんに話して、それを取り入れてもらうことが多いです。だから歌詞もMVも、私の中では超リアルなものなんです。

──確かに「貴方の側で。」や「恋って難しい。」のMVはすごくリアリティがあります。映像に歌い手さんが登場しない分、毎回ショートムービーを観ているような感覚になれて、没入感も強まるんですよ。

毎回ちょっとしたドラマを観終えたような満足感がありますよね。「私じゃなかったんだね。」(「記録」収録曲)のときに、自分は映像に登場しないながらもMVのロケ現場に行ったことがあって。そういう撮影を見学するのが初めてだったので、監督の指示出しや役者さんの演技を目の前で見て、すべてが新鮮でした。その経験があって以降は自分の中でイメージも作りやすくなって、MVの打ち合わせでより自分の思いを伝えやすくなったかもしれません。