ナタリー PowerPush - RIP SLYME
「GOLDEN TIME」とリップの未来を考える
RYO-Zの感想
──ここからは1人ずつ、アルバムに対する印象や制作中の思い出を聞かせてください。まずはRYO-Zさんから。
RYO-Z 正直、制作期間内はこっちのラップのパートを録って、こっちのフックを手伝ってとか、いろいろ作ってたからあんまり全体を把握できてなくて。素材を録りきって、ミックスダウンも済み、曲順が決まり、マスタリングをいつものごとくロンドンでやってもらって、返ってきた音源聴いて、すごいいいアルバムだなと思いました。そこまではすごく雑多なアルバムになりそうで面白そうだなとは思ってたんだけど、明確に全部の作業が終わってから通して聴いてみて「おー、いいな」っていう。そこでやっと実感したって感じでしたね。
──じゃあリスナーにも1枚丸々聴いてもらいたいですよね、頭からこの曲順で。
RYO-Z そうですね。特にシングルの制作ってその曲を何度も何度も聴いてけっこう脂っこかったりするんで、アルバムの中で飛ばしてたくらいなんだけど、今回はシングルも含め最後まで全部スラーッと聴けたんで。1曲1曲の佇まいは違うけどバランスが取れてる、バラエティ豊かなアルバムだなと思いますね。
──「1曲1曲の佇まいは違う」というの、確かにそうですね。曲によってメインとなるメンバーが顕著に違くて、4MCで4等分されている曲が数曲しかない。
RYO-Z 全員が均等にラップしなくていいんじゃないかっていうのはけっこう前からあるんですけど、より棲み分けできてるってことですよね?
──はい。
RYO-Z そうそう。この曲2人でやってもいいじゃんとか、3人でやってもいいじゃんって曲はいっぱいあるんです。そこはPESくんやFUMIYAくんが「このフックはイルくんが歌うべきだよ」とか「ここはこういうふうにコーラスを積んでいこう」って監督感を出してくれて、そのディレクションに従いながら回していったって感じですね。
PESの感想
──監督的ポジションの1人だったPESさんは、どんなアルバムに仕上がったと思いますか。
PES ほんとのこと言うと、音数も少ないし、FUMIYAの出した手数も少ないと思うんですよ、今までのアルバムより。でも動き出しが早かったぶん準備に時間かけてるんで、最初に話す時間があったとこがよかったと思います。いい意味で力が抜けてるっていうか。リリックもちょっとラップが少なかったり。文字にして半分とまではいかないけど、少ないと思ってて。
ILMARI うん、普段よりラップ少ないね。
PES それも別に手を抜いてるわけじゃなくて、準備段階でどういうことやろうか話した結果なんですよね。慌てて言葉で埋めなくてもいいだろうという感覚もあったし。なんか「GOLDEN TIME」とか言ってバラエティに富んでる感じするんすけど、実はシンプルな楽曲が多いんじゃないかなと思うんですよね。ボーカルもなるべく多重で録らないように、ライブで再現可能な範囲でやりたいなっていうのは僕の中にありましたし。まあそれもなかなか難しかったですけど(笑)……今までのものよりは少しはシンプルなのかなと。
──PESさんとしてはもっともっとシンプルにしたかったりもするんですか?
PES それで、かつRIP SLYMEの楽しげな雰囲気を出せたら最高ですけどね。まあそれにはまだまだ、あと30年、40年かかると思いますけど。
ILMARI だいぶかかっちゃうね。
SU 80(歳)……。
PES もうキック「ドン」、3分後ぐらいに「ターン!」(笑)。これでOK。
SU いいねえ。
RYO-Z すげーシンプル。超いい曲。
PES あはは(笑)。でも、今回のは特にドラムの音がどれもよくて。そういった意味では、そことラップを聴かせて、さらにオカズがあればいい感じで聴けちゃいますからね、曲は。
SUの感想
──SUさんがアルバム全体に持ってる印象は?
SU ジャンルがもうわかんない。RIP SLYMEっていうジャンルっぽいなと。
RYO-Z それすごいアーティストっぽい、なんか(笑)。
SU だってほら、ヒップホップコーナーとかに置かれるの変じゃない?
──SUさんが考える、ジャンル「RIP SLYME」の要素とはなんですか?
SU ラップ調で……曲聴いたら体が動かしたくなって、韻踏んでることぐらいですかね。あといろんな人が歌ってんなーってこと。あんまこういうグループないですよね。みんなで歌ってますもんね。
──歌というと、今回SUさんがラップじゃなくて歌をやっている曲も強く印象に残ります。歌ったなという自覚はありますか?
SU うん、ちょっとだけ。PESくんが作ってくれて。
PES 人のラップって書けないんですよ。歌にするしかなかったんです。歌っていうかメロディのあるスキャットっていうか。
» SUの作詞観
- ニューアルバム「GOLDEN TIME」/ 2013年12月4日発売 / unBORDE
- 初回限定盤[CD+DVD] 3700円 / WPZL-30777~8
- 通常盤[CD] 3150円 / WPCL-11581
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CD収録曲
- GOLDEN TIME
- FAKE
- SLY(Album version)
- AH! YEAH!
- ジャングルフィーバー
- 気の置けない二人
- ROAD MAP
- アプリオリ
- 恋のシンキングタイム
- 断捨離ズム
- Run with...
- ロングバケーション
- Butterfly Effect
初回限定盤DVD収録内容
- 「RIP SLYME presents 真夏のWOW at STUDIO COAST」スペシャル映像(ライブ映像数曲入り)
RIP SLYME(りっぷすらいむ)
RYO-Z、ILMARI、PES、SU、FUMIYAからなる4MC&1DJヒップホップユニット。1994年に結成され、2001年3月にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。その後2ndアルバム「TOKYO CLASSIC」がミリオンヒットを記録する。さらに国内のヒップホップユニットとして初めての日本武道館ワンマンライブを行い、日本にヒップホップ文化を広く浸透させた。2005年にFUMIYAが病気療養のため一時ユニットを離脱するも、翌年8月に無事復帰。再び5人体制で精力的にリリースやライブ活動を行っている。2010年には、メジャーデビュー10年目を記念しベストアルバム「GOOD TIMES」とカップリングベストアルバム「BAD TIMES」をリリース。2013年12月には9枚目のオリジナルアルバム「GOLDEN TIME」を発表した。
2013年12月10日更新