さわやかなのに内容はものすごくドロドロ
──先ほどパーソナルな表現について触れましたが、「Love You」「Hot and Cold」は身近な相手やシチュエーションを題材にした曲になっています。「Fallin'」「HURRICANE」とは対照的です。
「Love You」はラブソングにも聴こえるし、大切な仲間たちに向けた楽曲だと捉えることもできるんじゃないかな。自分でも制作していくうち、「本当はこういう解釈じゃないか?」と歌詞の意味が変わっていくこともあって。以前はそれをよしとしなかったんですけど、最近はその変化も面白いんです。
──「Love You」はトロピカルな雰囲気のサウンドですが、当初からこのようなアレンジだったんでしょうか?
最初はレゲエ調で、エレキギターで弾いたりしましたね。最終的にアコースティックギターをメインにして、シャッフルのリズムを使った曲になりました。作っているうちにアイデアがポンポン出てきて、完成までの過程を含めてかなり挑戦的な曲になったので、聴いた人がどう感じてくれるか楽しみです。
──「Hot and Cold」もラテンをはじめ、ワールドミュージックからの影響を強く感じました。
「Hot and Cold」はまさにロサンゼルスのセッションを経て生まれた曲です。初めてセッションをやったスタジオが牧場の中にあったんですけど……。
──すごい場所ですね(笑)。
本当になんにもなくて、馬とか豚とかがいました。それこそ馬小屋みたいなスタジオで、デイブというプロデューサーとセッションしたんですけど、セミアコがあったので触らせてもらったら、すごいいい音がして。そこから一気に新しいビートが思いついて、すぐにメロディも完成しました。暑すぎず寒すぎない、まさに「Hot and Cold」な質感のサウンドになっています。でも、歌ってる内容はものすごくドロドロで(笑)。
──この曲では男女のすれちがう心情が描かれていますが、お互いにドライな関係も描写されていて。
感情が高ぶったり冷めてしまったりする、そのもどかしさをあえてさわやかなサウンドに乗せて歌ってみました。
──今作では唯一「Hot and Cold」がすべて英語詞になっていますね。
日本語だとストレートに意味を伝えることができるんですけど、英語だと日本語では描ききれなかったり、言葉にできなかったりするムードを表現できるんです。「Hot and Cold」は日本語で歌うと、とんでもなく重たくなってしまうので……(笑)。こういった言語の使い分けもうまくできるようになりましたね。
──楽曲の捉え方の違いは本作全体のキモとなりそうですね。
今まで作ってきた曲は「これはこういう曲だ!」と題材を明確にしてきたものがほとんどだったので、大きな変化だと思います。「HURRICANE」も力強さを打ち出しつつも優しさを残したかったので、聴いてくれる人にもその二面性を感じていただきたいですね。4曲だけのタイトな作品ですけど、だからこそバラエティに富んでいるので、楽しんでもらえたらうれしいです。
会場全体でグルーヴを生み出すライブ
──今作には5月に東京・新木場STUDIO COASTで行われたワンマンの映像を収めたDVDも付属します。前回のマイナビBLITZ赤坂でのワンマンから2倍近い広さの会場となりましたが、いかがでしたか?
僕のライブではわーっと盛り上がってくれる人もいれば「これ、どうなってるんだろう?」と不思議そうに観ている人もいて。その2組が混在していて、どんどんお客さんも増えてきているぶん、さまざまなグルーヴが生まれているんです。このタイミングで、その様子を一度記録に残しておきたかったんですよ。
──新木場公演ではLoop Stationだけでなく、キーボードやリズムパッドなども使用していました。
本当はあんなにたくさん機材を使うつもりはなかったんです(笑)。最近の楽曲は必要な音の数が増えていて、その結果あんなすごいことに。機材の量は正直これがマックスかなと思います。
──このセッティングは新木場STUDIO COAST公演のみだったんでしょうか?
そうですね。「HURRICANE」や「Shake Your Body」はギター1本では表現しきれない音になっていて、そこはMPC(※AKAI Professionalのサンプラー)で補っています。でもライブの醍醐味はその場で音を作ったり重ねていく、その工程の楽しさだと思うので、余計な楽器やサウンドは加えないよう気を付けています。
──「HURRICANE」「Shake Your Body」は音源とは大きく異なるアレンジが施されていて、とても驚きました。バンドと一緒に演奏しているようなグルーヴが生まれていました。
なるほど。これまでのライブではまだグルーヴが生かしきれていない部分があって、「もっとクオリティを上げないといけない」と反省していたんです。STUDIO COASTでのワンマンは、ようやく理想のグルーヴへと近付けた気がしました。
──ReNさんも積極的にステージを動き回ったりしていて、演奏以外のパフォーマンスの部分でも大きな変化が見られました。
あれはお客さんとの一体感を生み出すためには必要なアクションだったと思います。Loop Stationは一定の音が鳴り続けるから、ステージングの自由度も高くなるんです。この点は自分でも意識しましたね。
──ほかにもステージ後方のスクリーンにReNさんの足元のLoop Stationを映す演出もあり、どのように音が重ねられていくのかがわかりやすいものとなっていました。
Loop Stationは実際に音を重ねていくところが見えないと、どうやって操作しているのかわかりづらいので。その工程をしっかりと見せたかったんです。あとは見た目的にも映えるので(笑)。
──新作「Fallin'」に収められた「HURRICANE」以外の3曲も、今後ライブだとどのような反応がもらえるか気になるところですね。
「Fallin'」の4曲は、ライブだと音の取捨選択がとにかく大事なんです。ただの四つ打ちに聴こえても、その間に入っている細かい音がものすごく重要なので。意外とみんなは気付かないかもしれないけど、1つの音がなくなったり、変わったりするだけで全然印象が変わってしまうんですよ。その見極めがしっかりできるかが今後の課題ですね。
──今月リリースツアーが始まりますが、目標はありますか?
僕もお客さんも一緒に楽しみたいですね。会場の規模感をただ大きくしていくのではなく、ちゃんと自分が表現したい世界観を作り込んでいきたいし、みんなが求めているものにも応えたい。自分だけでなく、会場全体で生み出すグルーヴを意識したいです。今度のツアーはその部分を追求することになると思いますね。
ライブ情報
- ReN ONE MAN「HURRICANE」TOUR 2019-2020
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- 2019年11月28日(木)福岡県 DRUM Be-1
- 2019年12月6日(金)東京都 Veats SHIBUYA
- 2019年12月16日(月)愛知県 CLUB UPSET
- 2019年12月19日(木)大阪府 Shangri-La
- 2020年2月6日(木)宮城県 darwin
- 2020年2月12日(水)大阪府 BIGCAT
- 2020年2月16日(日)北海道 cube garden
- 2020年2月20日(木)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2020年2月22日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2020年2月24日(月・振休)広島県 LIVE VANQUISH
- 2020年3月1日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO