音楽ナタリー Power Push - ReN

どん底の挫折からシンガーの道へ

無我夢中で作ったデビュー曲「生きる」

──けがが完治するまで、どのぐらいかかったんでしょうか?

ReN

だいたい1年はかかりました。どん底でしたね。けど日本でも海外でも、レースに出場するときはいつも身近にギターがあったんです。必ずレース前にはギターを弾かないとカートに乗り込めなかったし、恐怖心を取り除いてくれたのもギターでした。それで寝たきりになっていた頃、じっくりギターを弾いてみたんです。

──それが音楽活動へとつながっていくことに。

そうですね。事故後レーサーという夢の訣別に踏み切らなければならない事態となって、1年間は毎日のように泣いていました。それで「えーい!くそっ!」って気持ちでギターを弾いて、自身の気持ちに折り合いをつけていて。天井を見ていると悔しさや怒り、悲しさが湧き上がってきて……。少年時代からの憧れに向かって無我夢中で走っていったのに、現実は僕が描いたほど純粋ではない、ということを幾度も突き付けられました。それで事故に遭って、行き着く果てが「これかよ」って……。その思いを込めたのが「生きる」なんです。

「百戦蓮磨」を経た先に

──そして「生きる」を完成させたのち、昨年はライブ活動をスタートさせましたが、「百戦蓮磨2015」という企画も実施していましたね。

ReN

年間100本ライブを行うという内容でした。音楽活動を続けていくための覚悟を、しっかりと自分の中に宿らせたかったんです。最初は当然、僕のことは誰も知らないし、お客さんがほとんどいない日も多かったです。それでも僕自身が、どういう形で生きていけばいいのか探し当てたかったんです。

──やってみてどうでした?

レースよりきつかったです(笑)。もう音楽しかなかったから。死ぬことを恐れずに走った、レース以上の覚悟が必要だった。

──そんな中ReNさんの活動では、幼い頃からの友人2人もスタッフとして参加されていますね。

彼らとは幼い頃から同じ街で育ってきたんです。一緒に将来を夢見て生きてきて。それで僕が「百戦蓮磨」をスタートする際、一緒にライブ100本達成という夢を達成したくて誘いました。アルバムに収められている楽曲「Friends Forever」は2人のことを歌っているんです。

──そして12月には100本目としてワンマンを開催し、目標達成となりました。その頃の心境はどうでした?

誰もいないライブもありましたが1本ずつ丁寧に、反省と改善を繰り返して回数を重ねました。そして100本目では100人以上のお客さんが集まってくれて。達成感よりも、来てくれた人たちに対する感謝の気持ちが強かったし、次の目標に向かって走る力が湧いてきました。12カ月間の活動で生まれた、僕ら3人の強い友情は宝物です。

「よく研究したな」ってエドに言われたい

──プロフィールにはColdplay、エド・シーランから影響を受けたと書かれていましたが、聴き始めたきっかけは?

Coldplayは中学生のとき、友達のお父さんから教えてもらったんです。まだ日本で流行る前だったかな? 初めは不思議なカッコよさを感じたんですけど、聴き込んでいったら空間系の音作りに魅力を見い出して。初めて音を通して、景色が見えたアーティストでしたね。アルバムジャケットもこだわってましたし。

ReN

──UKロックがお好きなんでしょうか?

そうですね。エド・シーランは2011年に知りました。2010年にイギリスに行ったんですけど、翌年日本に戻ってきたあとも、イギリスでずっと聴いてたHallam FMっていうラジオ局をチェックしてたんです。当時の流行音楽をリピートしてオンエアしてたんですけど、その中にエド・シーランの楽曲が含まれてて。

──当時Hallam FMではどんなジャンルの楽曲が人気でしたか?

ダンスミュージックがよく流れてて、僕自身も好きでした。レース前もそれを聴いて気持ちを奮い立たせていましたし。それでダンスミュージックの合間にエド・シーランの「The A Team」って曲が流れたときはびっくりして。速攻ダウンロードしました。YouTubeでライブの映像を観たらものすごい数の音を重ねてて。

──エドもReNさんと同じく、Loop Stationを使ってますよね。

Loop Stationの存在自体は以前から知ってて、なんだか気にはなっていたんです。でもエドは全然見たことのない使い方をしていて。カッコいいな!って思って、「生きる」を完成させたあと試しに使ってみたんです。

──エドに感じたカッコよさはどこだったんでしょう?

1人であそこまで音を構築させてしまうところですね。たくさんの人が演奏しないと出せないような音を、さも平気な顔でこなしてしまう姿に感動したんです。自分もやってみて、「よく研究したな」って本人に言われるぐらい使いこなしてみたいです。

1stアルバム「Lights」2016年6月1日発売 / 2500円 / Booost music / REN-1002
「Lights」
収録曲
  1. Illumination
  2. Sheffield
  3. Me&You
  4. Stars
  5. 時間切れ
  6. Friends Forever
  7. 生きる
  8. Goodbye
  9. Lights
  10. 生きる(Acoustic Live Session)
ReN(レン)
ReN

1994年生まれのシンガーソングライター。幼少期からギターに親しみつつ、12歳でモータースポーツ選手としての活動をスタートさせた。2014年に試合中のけがによる選手引退を機に、シンガーソングライターとしての道を歩む。2015年には1年間で100本のライブを行う「百戦蓮磨2015」に挑戦。野外フェス「FUJI ROCK FESTIVAL '15」への出演を挟み、12月の東京・原宿ストロボカフェでの単独公演をもって年間ライブ100本を達成した。2016年4月からはFm yokohamaにて、自身がパーソナリティを務める番組「おれん家へようこそ!」の放送が開始。6月に自身初となるアルバム「Lights」をリリースする。