ナタリー PowerPush - Prague
エネルギッシュな新曲でバンドの本質をアピール
独自のグルーヴ感とメロディセンスで、徐々に支持の輪を広げているスリーピースバンド・Prague。TVアニメ「銀魂」エンディングテーマとしてもオンエアされている新曲「バランスドール」は、彼らにとっても代表曲になるであろう1曲だ。パーカッションを意欲的に導入したサウンドと急き立てるような疾走感、「叫んでも 壊しても 満たせないものがあるな」という歌詞が印象的な、エネルギッシュなナンバーになっている。
昨年にリリースしたアルバム「Perspective」、そして今年5月のミニアルバム「花束」を経て、「一筋縄ではいかない」バンドの美学がいよいよはっきりしてきた彼ら。新曲に反映されているバンドの今を訊いた。
取材・文 / 柴那典
純粋だからこそ、昔にはできなかった
──「バランスドール」が完成したのはいつ頃でした?
鈴木雄太(Vo, G) 完成したのはそう遠くないですね。新鮮な感じです。
金野倫仁(B) 最近できた曲です。一番新しいもの。
──これは「銀魂」のエンディングテーマということを踏まえて作ったんでしょうか? それとも曲が完成してからそれがタイアップに選ばれた?
鈴木 曲ができてからですね。今までとなんら作り方は変わってないです。
──では、これはどういうところをきっかけにできあがった曲なんでしょう。
鈴木 元々サビのメロディが昔にあって。それを思い出したタイミングでギターのリフも考えて。その出会いでできた感覚があります。
金野 歌自体、実はすごく前からあったんです。でもこのコード進行って、昔はできなかったんですよね。それを今できたというのは大きなことですね。
──「昔はできなかった」というのはどういう理由ですか?
金野 多分恥ずかしかったんだと思います。
鈴木 それにつきますね。そのときの自分たちがやる曲じゃないと思ったんで。
金野 純粋だからこそ、当時の自分たちに合う曲だと思えなかったんです。今はそれをバンドの雰囲気的にも技術的にも、自分たちの音楽として演奏できるようになったという感じです。
たとえみっともなくても、なるべくあがいていたい
──それはミニアルバムの「花束」以降にバンドが変わったからでは? あの作品は、自分たちの音楽をどう届けるかということを意識したミニアルバムでしたよね。そういう作品を作ったことで、恥ずかしさや照れくささが消えていったというか。
鈴木 一見照れくさいって思う音楽とか、ちょっと恥ずかしいものを、ちゃんとPragueとして提供できる技術が身についてきたという感覚ですね。
金野 特に歌詞に対して、その“技術”を感じますね。恥ずかしいとか照れくさいとか考えずに、言いたいことを言えるようになったと思います。
──どうでしょう? 歌詞を書いている当人としては。
鈴木 言えるようになったということよりも、言いたくなったって感じですね。昔にできたサビのメロディから曲を作れたのも、「バランスドール」という言葉が発せられるのも、すべて今というタイミングのおかげだと思います。
──具体的な歌詞についても訊かせてください。「叫んでも壊しても 満たせないものがある」「退路はどこにもない」。激しくストレートな歌詞ですが、この言葉はどういうところから出てきたんだと思います?
鈴木 まず「バランスドール」というタイトルは、目に見えないところにいろんなバランスがあるということを表しているんです。それが自分たちを生かしているというのもあるし。踊らされてる感覚もある。そういうことを感じて、自分が何かに踊らされてると思うと、自分を卑下したりさげすんだりすることもあって。それでもなるべく力強く生きていきたいと思った曲なんです。なので、そういう言葉がサビですっと出てきたのも、曲が呼んでくれて言いたくなった言葉なんだと思います。「バランスドール」というテーマがあった上で生まれた言葉ですね。
──「バランスドール」という言葉は、どういうものから生まれたんでしょう。
鈴木 世の中にたくさんある“バランス”に対して、何をするかを歌っていきたいと思ったんです。それを考えたら「ドール」という言葉が出てきましたね。それは皮肉で言っちゃえば、踊らされてる人なんですけれど。
──「ドール」というメタファーには、血が通ってないものという意味合いも込められている?
鈴木 そうですね。踊らされてるときって、自分でちょっと血の通ってない感覚になると思うんですよね。「今、生きてんのかな?」とか。
──そういうときに、地に足をつけたい、何かに振り回されるんじゃなく世界の手触りを取り戻したい、という意識はあった?
鈴木 そうですね、バランスをとっちゃうんですよ。僕自身もそう。だけど、それを後悔するのはもったいないと思ったんです。バランスをとってるときって、ちょっと恥ずかしかったりするんですよね。自分が何をやりたいかわからずにフラフラしている。それはみっともないと思うんですけれど、それでもいいから、なるべくあがいていたいという感覚がありました。
この曲をレコーディングしたことで何かをたぐり寄せられた
──そういうことを歌うのって、この3人の鳴らす音の感覚とも、それぞれの人柄ともつながってるんじゃないでしょうか?
鈴木 そうなんですかねえ。
──だって、「俺が100%正解、俺についてこい!」みたいな人間だったら、こういうことは歌わないと思うんです。どうやらそういうタイプではない人間がスリーピースバンドを組んでいるのでは。
鈴木 うーん………。
金野 それは本当に「そうです」としか言えないんですけど、(鈴木は)いくら訊いてもそうは言わないと思います(笑)。言えない人間なんですよ。「バランスドール」はもはや自分たちみたいなところはありますね。自分たちみたいな感覚を持っている人は、実はたくさんいるんじゃないかと思ってますし。
──ここで歌っているような危うさとある種のジレンマは、きっと多くの人が共有しているものである、という?
金野 そうですね。この曲をレコーディングしたことで、何かをたぐり寄せられた感覚があったんです。近づいたし、近づいてくれるような。ぐっとたぐり寄せた感覚があって。この感覚はなんだろう、これが「気持ちがリンクした瞬間なんだ」って。
CD収録曲
- バランスドール
- サイ
- Light Infection'(Live@Prague-Stream Vol.4 2011.04.10)
- バランスドール(Instrumental)
DVD収録曲
- バランスドール(Music Clip)
- Distort(Live@Prague-Stream Vol.4 2011.04.10)
Prague(ぷらは)
鈴木雄太(Vo, G)、伊東賢佑(Dr)、金野倫仁(B)による関東出身のスリーピースバンド。同じ高校で3年間同じクラス、軽音楽部、プライベートも一緒にいた腐れ縁の鈴木雄太と伊東賢佑の2人が、同じ音楽専門学校に進み、2006年に金野倫仁と出会って結成。自主制作盤を2枚出したところでレコード会社の目にとまる。2009年9月9日シングル「Slow Down」でキューンレコードよりメジャーデビュー。2010年7月には1stアルバム「Perspective」をリリースし、2011年5月には初のミニアルバム「花束」を発表した。8月にリリースする最新シングル「バランスドール」はTVアニメ「銀魂」のエンディングテーマに起用され、独特の音楽性と高い演奏力で大きな注目を集めている。