ナタリー PowerPush - Prague
気鋭のロックバンドが描く「刹那の美学」とは
3ピースの新たな可能性を追求するロックバンド、Prague(プラハ)が、ミニアルバム「花束」を完成させた。1stアルバム「Perspective」から10カ月、改めて自分たちのアイデンティティに向き合ったことで生まれてきた5曲。そこには、グラマラスな艶を持った歌声、刺々しくも耳に残るメロディ、肉感的なうねりを見せるサウンドと、バンドの持つ個性が凝縮されている。
独特のグルーヴ感と美学を武器に、自らの道を突き進む3人。その心情を語ってもらった。
取材・文/柴那典
直接手渡しするような音楽を作りたかった
──3つの楽器の組み合わせで今までにない驚き、美しさや心地良さを生み出すというのは、Pragueというバンドがデビューしてからずっと追求していることだと思うんです。今回のミニアルバムを聴いても、そのことをすごく感じて。
鈴木雄太(Vo, G) そうですね。それはあります。
──その上で、1stアルバム「Perspective」で自分たちがやりたいことを一旦すべて出したことで、次のステップが見えてきたんだろうな、ということも思ったんですけれども。昨年にアルバムを出してからの10カ月で、そういう感じはありました?
鈴木 1stアルバムを出したときは、生まれたばかりのような、溜まっていた息を吐き出すような感じだったんですよね。だから、期間を空けて呼吸が落ち着いたときに、改めて次は何をしようかを考えることができた。自分たちのスタートを切れたから、今度は「どう人を幸せにしようか」ということを考えられたんだと思います。
──今回「花束」というミニアルバムを作っていくにあたって、スタート地点はどういうところにあったんでしょう?
鈴木 1曲1曲の濃さを強くしていくという考えが最初にありましたね。だから、楽曲も艶っぽくしたいと思って。結果的に「花束」というタイトルになったんですけれど、まさに花束のように誰かに何かを届けたかったんです。どこかに放り出して、それを拾い上げてもらうのではなくて。そこにいる人に僕らが直接手渡しするような音楽を作りたかった。もっと直接的に、もっとストレートに届くようにしたい、という気持ちがありました。そういうメンタル面での変化がスタートだと思います。
金野倫仁(B) 今までだったら「これやったらPragueじゃないよね」って言ってたようなことにもチャレンジする。奇をてらうんじゃなくて、スタンダードになるようなものをやる。僕の場合は、そういう気持ちがスタートになりました。
伊東賢佑(Dr) 自分は楽曲にも、ドラムに対しても、もっと血を通わせたかったんです。温度を持たせたかったというか。
今作のテーマは、ちゃんと当事者になるということ
──「花束」というミニアルバムは、聴き手がバンドの特徴だと感じる2つの面があると思うんです。1つは3ピースによるグルーヴの部分。そしてもう1つはメロディ。Pragueらしいメロディというものが、5曲に共通してあると思うんですが、作っている側にはそういう意識はありました?
鈴木 自分の癖を理解してきたところはありますね。今回は伸びやかなメロディラインがたくさん生まれてきたんですけど、その中でも残っている“上がりきらない部分”“下がりすぎない部分”というのが「結果的に僕の個性なんだ」と思いましたね。
──僕は、逆に刺々しいメロディにPragueの個性があると思いましたけれど。そこが逆にフックになっている気がする。例えば「仇花」とか。
鈴木 「仇花」のメロディラインって、もともと自分の好きなポジショニングのメロディなんですよ。コードの構成音から入らないのが僕の個性。そのコードとメロディの関係性に、僕は清涼感を覚えるんです。そういうところが特徴になっているとは思います。
──ミニアルバムには、「仇花」「サーカスライフ」「夢人」「手に触れて」「ナイトフライト」の5曲が収録されているわけですけれども。これは、たくさんある楽曲の中から選んだんですか?
鈴木 そうですね。ものすごくたくさん作った中から選びました。自分たちが聴いてほしいと思うもの、伝えたいことがストレートに届くものはなんだろうと考えた上での5曲ですね。
──自分達の今の個性が出た5曲ということ?
鈴木 はい。今回の制作のテーマとして置いていたのが、ちゃんと当事者になるということだったんです。ちゃんと舵を握って、誰かに何かを提供するということ。さっきも言いましたけど、誰かに僕らの音楽を手渡したかったんで。
Prague(ぷらは)
鈴木雄太(Vo,G)、伊東賢佑(Dr)、金野倫仁(B)による関東出身のスリーピースバンド。同じ高校で3年間同じクラス、軽音楽部、プライベートも一緒にいた腐れ縁の鈴木雄太と伊東賢佑の2人が、同じ音楽専門学校に進み、2006年に金野倫仁と出会って結成。自主制作盤を2枚出したところでレコード会社の目にとまる。2009年9月9日シングル「Slow Down」でキューンレコードよりメジャーデビュー。2010年7月には1stアルバム「Perspective」をリリースし、独特の音楽性と高い演奏力で大きな注目を集めている。