ナタリー PowerPush - ポルノグラフィティ
ポルノグラフィティ15年の軌跡
この15年でバンドとしての下地を築き上げることができた
──デビュー時にシーンへ与えたインパクトはポルノとして未来への指針になり得るものだったと思うのですが、同時に大きなプレッシャーとの戦いを強いられてしまった部分もあったのかなと。そのあたりはいかがですか?
岡野 うん。デビュー時についたイメージを覆してやろうっていう気持ちで苦しんだことはありました。ただ、やっぱりあれだけのスタートダッシュを切れたというのは、楽曲の力があったからこそだと思うので、今となってみればものすごくありがたいこととして受け止めていますし、苦しむ必要もなかったなとは思うんですよね。
新藤 ちょっと時代的には先の話になるんですけど、僕らは2010年に自分たちの楽曲だけで構成した初めてのアルバム「∠TRIGGER」を作ったんですよ。そこではほんとに自分たちのやりたいことだけをやったんです。でもね、結果的にはむちゃくちゃアバンギャルドな曲が生まれるということはなく、案外理路整然としたものになったんですよね。それはつまり、メンバーが作っていない曲で生まれたデビュー当時のポルノのイメージと僕ら自身の持っている音楽性が全然かけ離れたものじゃないんだってことで。マンガの「デトロイト・メタル・シティ」みたいに、本当はボサノバやりたいのにデスメタルをやることになってるというようなギャップはそもそもなかったんですよね。
──だからこそ15年も活動を続けてこれたんでしょうし。
新藤 ほんとにそう思いますね。
岡野 デビュー当時のイメージのままで止まっている人がいるということはもちろん認識しているし、いまだにそこと戦っている自分もいるにはいるんです。でも、この15年でバンドとしての下地をしっかり築き上げることができたのは本当にラッキーだと思うし、だからこそより自由にいろんなことができるようにもなりましたからね。今は意外とそのイメージみたいな部分に関しては多少楽観的になってはいるかな。
“今”がないとその前の時代が持つ意味は見えづらい
──では、2人組のポルノグラフィティとして歩み出してからの楽曲が収められた“EpisodeII(DISC2)”の時代はどうでしょう?
岡野 デビューから自分たちの足取りを振り返る間もなく2人になってしまったので、「シスター」(2004年リリース)を出したときは「とにかくやるしかないぞ」っていう気持ちでしたね。“EpisodeI”とはまた違った走り方だったというか。その中でふつふつと自我が芽生え始めた時期でもあると思います。
──自我の芽生えのきっかけになった大きな出来事は何かあったんでしょうか?
岡野 2006年に「ハネウマライダー」という、最近のライブでも中心に持ってきている楽曲を作ることができたのが大きかったと思います。活動の中での安心材料にもなったし、だからこそ「自分たちだけの手で制作をしてみたい」という気持ちが強くなったんだと思う。その後に、今の制作スタイルにつながるきっかけみたいなものが詰まった「ポルノグラフィティ」(2007年リリース)というアルバムをリリースしたのもそういうことだったんだと思います。
──より深く濃く楽曲に関わりはじめた時期だということですね。
新藤 そうですね。要は過渡期なんですよ、この“EpisodeII”は。デビュー以来のポルノのイメージに対して、何か変えていきたいんだっていう気持ちが交錯してる時期だから、このディスクの意味みたいなものはなかなか言葉にしづらいんですよね。重要な時期であるのは間違いないんだけど。
──でも、今回はその後の時期の曲を収録した“EpisodeIII”も一緒にパッケージされているわけなので、リスナーは“EpisodeII”が持つ意味合いをしっかり感じることはできると思うんですよね。
岡野 なるほどね。確かにそうかも。
新藤 “今”がないと、その前の時代が持つ意味は見えづらかったりするものですからね。今後もし“EpisodeIV”とか“EpisodeV”が出たとしたら、今の“EpisodeIII”が「迷ってる時期ですね」とかってことになるかもしれないしね。
バンドとしての地力のなさを実感した
──では、現状の最新タームである“EpisodeIII(DISC3)”について伺いましょう。
岡野 “EpisodeII”で芽生え始めた自我が、本間さんと離れてみたことで形になり始めている時期です。自分たちで楽曲のすべての責任を負うことに決めたわけですけど、そこで強く実感したのはバンドとしての地力のなさだったんですよ。「おいおい、これはヤバいぞ」と。今まで本間さんが埋めてくれていた穴を今度は自分たちでどう埋めていくかというのを大きなモチベーションとして動き出した感じでしたね。でもね、この年齢になって、ある意味真っ白な状態で音楽と向き合えるのはありがたいことでもあって。今までの礎があるうえで「もっと歌がうまくなりたい」「もっといい曲を書きたい」「自分をもっと磨いていきたい」っていう気持ちが持てているわけだから。
新藤 キャリアを重ねてやることがなくなっていくよりは、やることがあるというのはいいことですから。まあそれはポジティブにとらえた場合ですけどね(笑)。だって、今の僕らがやっていることって普通ならデビューのタイミングでやっていなきゃいけないことなわけだから。
- ベストアルバム「PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary“ALL TIME SINGLES”」2013年11月20日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [3CD+DVD] 4500円 / SECL-1431~4
- 初回限定盤 [3CD+DVD] 4500円 / SECL-1431~4
- 通常盤 [3CD] 3900円 / SECL-1435~7
CD収録曲
DISC 1
- アポロ
- ヒトリノ夜
- ミュージック・アワー
- サウダージ
- サボテン
- アゲハ蝶
- ヴォイス
- 幸せについて本気出して考えてみた
- Mugen
- 渦
- 音のない森
- メリッサ
- 愛が呼ぶほうへ
- ラック
DISC 2
- シスター
- 黄昏ロマンス
- ネオメロドラマティック
- ROLL
- NaNaNa サマーガール
- ジョバイロ
- DON'T CALL ME CRAZY
- ハネウマライダー
- Winding Road
- リンク
- あなたがここにいたら
- 痛い立ち位置
- ギフト
- Love,too Death,too
DISC 3
- 今宵、月が見えずとも
- この胸を、愛を射よ
- アニマロッサ
- 瞳の奥をのぞかせて
- 君は100%
- EXIT
- ワンモアタイム
- ゆきのいろ
- 2012Spark
- カゲボウシ
- 瞬く星の下で
- 青春花道
- 東京デスティニー
- ひとひら
初回限定盤DVD収録内容
- 青春花道 Video Clip
- 東京デスティニー Video Clip
- ALL TIME SINGLES CM COLLECTION
ポルノグラフィティ
岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューを果たす。2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに起用され、大ヒットを記録。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「幸せについて本気出して考えてみた」「メリッサ」などヒット曲を連発させる。2013年9、10月には「青春花道」「東京デスティニー」と立て続けに新曲をリリースしデビュー15周年イヤーに突入。同年11月には全シングル収録のベスト盤「PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary“ALL TIME SINGLES”」をリリースする。