ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←
初ベストアルバム発売記念 HIROカホン講座&曲作りセッション
ムチャ振りの克服は→Pia-no-jaC←における1つのキーワード
──現在は、9月7日から始まる全47都道府県ツアーのリハーサルをしつつ、早くも次のオリジナルアルバムの準備をしているそうですね。そこでここからはサウンドプロデューサーの樫原さんを交え、→Pia-no-jaC←がピアノとカホンだけでどうやって曲を作り上げていくのかに迫りたいと思います。まず、オリジナル曲を作るときは、どうやって作業を進めていくんですか?
HAYATO 大まかな流れがパーッと浮かんでくるときもあるし、じっくり構成を作り込んでそれを聴かせるときもあります。あとは、何かしら曲の断片を考えて持っていったり。あとは、そこからどう広げていくか話し合って、出てきたアイデアを1つひとつ試していきます。もちろん面白くなかったり、全然違うなってものもたくさんあるんですけど、その中に1つ「それいいんちゃうか?」ってものがあったら、それをどんどん突き詰めていって曲にまとめる感じですね。
樫原 僕はまず、2人が持ってくるものをスタジオで聴かせてもらう。そのアイデアをつないでいく作業プラス、フレーズ面やテクニック面で「もうちょっとこうやったら面白くなるよね」って課題を出して良い方向に導いていくのが僕の仕事なんです。ムチャ振りもするんですけど、そのムチャ振りに2人が面白いように応えてくれるので、ムチャ振りの克服こそが→Pia-no-jaC←における1つのキーワードかもしれないですね(笑)。
ベストを聴くと2人のスキルが曲を追うごとに上がってる
──ちゃんとムチャ振りをクリアしているのはすごいですね。
樫原 HAYATOのピアノテクニックの特徴として、左手の動きがすごいっていうのがあって。多分こんなに左手が動くピアニストはなかなかいないかなって思ってます。→Pia-no-jaC←はベーシストがいないからベースの代わりをHAYATOが左手でやっている。ベーシストがいなくても成立する→Pia-no-jaC←の音楽の肝は、実はHAYATOの左手なんですよ。その左手の動きでどれだけ曲を面白くすることができるかっていうのも、アレンジの肝になっているのかな。HAYATOは自分で複雑なフレーズをよく考えてきて。例えば右手のフレーズの断片と左手のフレーズの断片をバラバラに持ってきたりするんです。で、僕は「それ、一緒に弾けばいいんじゃない?」ってムチャ振りする(笑)。彼は一瞬固まるんですけど、3日後には「できました!」って電話をかけてくるんですよ。
HAYATO 毎回いろんなムチャ振りをしてもらって、それを克服していくんですけど、スタジオに入るたびにムチャ振りの数が増えていくんで、どこまで行っても追いかけっこで。でも、自分がそこまでって決めてしまったら、本当にそこで成長が止まってしまうじゃないですか。だから、ムチャ振りしてもらえることは楽しみでもあるんですけどね。そういう意味では、自分の中で毎回新発見がありますよ。
樫原 だからこのベストアルバムを聴くと、2人のスキルの上がり方が曲を追うごとに確かめられる。でも、それは僕が教えたわけではなくて、自分たちの力で成長しているんですよ。アルバムの制作もそうだし、ライブにおけるムチャ振りもそうだし、いろんな技をどんどん体得していってしまうんです。
HAYATO 僕ら2人とも負けず嫌いなんで。
HIRO 2人でスタジオに入っても「俺こんなんできるけど、お前できへんの?」「いや、できるよ」「じゃあ、こうしたほうがいいんちゃう」みたいに、お互いに対してムチャ振りし合ってるし(笑)。
樫原 ピアノにしろカホンにしろ、いろんな可能性を秘めた楽器だと思うんです。PART 1のカホン講座でもHIROが「カホンは自由な楽器」って言ってたけど、ピアノもこうやって弾かなきゃいけないっていう決め事はないと思うので、それをHAYATO流に弾くとどうなるのかをこれからも追求していってほしいですね。そしてライブを通じて、楽器の楽しさをどんどん伝えていってもらいたいです。
→Pia-no-jaC←にとってツアーは本当に大きな存在
──ムチャ振りの末、完成した楽曲が6曲なり7曲なり集まって1枚のアルバムになるわけですね。
HAYATO そうですね。できた曲を聴いてみて、全部暗い曲ばかりだと重い内容になってしまうので、そのへんはバランスを取りつつ収録曲を決めてます。でも、一番重要なのはライブのこと。この曲でこういうライブパフォーマンスをやったら面白いんじゃないかってことも考えます。例えば、「ライブでタオルを回したいよな」って思ったら、タオルを回せそうな曲を作ってみたり。アルバム全体のバランスも考えるんですけど、どちらかと言えばまずライブありきですね。新曲レコーディングのリハーサルをしていても、「この曲はライブではこういうパフォーマンスをしたいですね」なんて話をしつつ作ってます。
樫原 で、またツアー中にいい曲ができちゃうんですよ。リハーサルやライブのソロコーナー中にフレーズが降りてくることも多いみたいで。あとで録音したものをみんなで聴いて、そこからさらにアイデアを膨らませていくパターンもあります。そういう意味では、→Pia-no-jaC←の活動においてツアーっていうのは本当に大きな存在で、ライブをやってないと→Pia-no-jaC←の音楽は生まれないんじゃないかって。
DISC 1 [Original]
- 組曲『 』
- うさぎDASH
- 交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱」第4楽章 / ベートーベン
- 小フーガ ト短調 BWV 578 / J.S.バッハ
- 台風
- 花火 ~HANABI~
- Time Limit
- 美しく青きドナウ / ヨハン・シュトラウス
- 交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」第4楽章(First Best Ver.) / ドヴォルザーク
- 残月
- The Last Resort
- 輪舞曲 ~Rondo~
- 熊蜂の飛行 / リムスキー=コルサコフ
- ジ・エンターテイナー / スコット・ジョプリン
- Jack 2011
DISC 2 [Compilation&Collaboration]
- メインストリート・エレクトリカルパレード [ディズニーランドR] / 「Disney Rocks!」より
- ミッキーマウス・マーチ [ミッキーマウス・クラブ]&星に願いを [ピノキオ] / 「Disney Rocks!!」より
- さらば愛しきストレンジャー / 「NOT JAZZ!! BUT PE'Z!!!」より
- Typhoon (DAISHI DANCE Remix) / 「PIANO project.」より
- Pulse of the earth / 「PIANO project.」より
- 夜想曲第2番変ホ長調Op.9-2 / 「JAMMIN' with CHOPIN」より
- More SQ: クロノ・トリガー 風の憧憬 / 「More SQ」より
- Love SQ: ビッグブリッヂの死闘~妖星乱舞~片翼の天使 / 「Love SQ」より
→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)
ピアノのHAYATO、カホンのHIROにより2005年4月に結成されたインストゥルメンタルユニット。鍵盤を中心にしたシンプルな楽器編成ながら、ジャズともクラシックとも異なるエネルギッシュでオリエンタルなサウンドが、リスナーに強烈なインパクトを与えている。2008年の1stアルバム「First Contact」を皮切りに2年間で5枚のアルバムを立て続けに発表し、合計で45万枚のセールスを突破。国内外のフェス出演を含む、年間250本以上のライブを精力的に敢行している。2010年夏にはDAISHI DANCEとのコラボアルバム「PIANO project.」をリリース。さらに、同年8月発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。2011年1月には、クリエイティブディレクターの箭内道彦が手掛けるシューズブランド「ピーエフフライヤーズ」のCMソングに、アルバム「EAT A CLASSIC 3」の収録曲「ジ・エンターテイナー」を提供。同年4月からスタートした全国ツアー「Travellin' Band Tour 2011」のファイナル公演では、渋谷C.C.Lemonホールでのワンマンライブも実現した。なおユニット名は、左からピアノ、右からカホンと読むことができる。