三月のパンタシアが3月13日に2ndアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」をリリースした。
昨年8月より「音楽×小説×イラスト」が連動する自主企画「ガールズブルー」を展開し、n-buna制作による楽曲「青春なんていらないわ」「街路、ライトの灯りだけ」を発表してきた三月のパンタシア。約2年ぶりとなるアルバムもこの企画を軸として作られた作品で、みあ(Vo)による書き下ろし小説をもとに堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)やbuzzG、すこっぷ、40mP、ゆうゆといったクリエイター陣が新曲を制作した。思春期の女の子の憂鬱な気分、感情のアンバランスさを表現した今作は、これまで以上に三月のパンタシアの世界観が色濃く出た作品となっている。音楽ナタリーではみあにインタビューし、彼女がアルバムで新たに描いた6曲の物語について語ってもらった。
取材・文 / 中川麻梨花
三パシの色をもっと濃く出したい
──昨年8月に「ガールズブルー」の第1弾「青春なんていらないわ」、12月に第2弾「街路、ライトの灯りだけ」をYouTubeにアップされましたが、そもそもこの「ガールズブルー」という企画はどういった経緯で始めたものなんでしょうか?
最初は何か夏企画みたいな面白いことがしたいな、と漠然と思っていたんですよ。それでスタッフさんと打ち合わせをしたんですけど、私にとっては「こういう曲を作りたいです」と言葉で説明するよりも、「こういう物語が楽曲になったら面白いんじゃないかな」とストーリーを伝えたほうが楽曲のイメージを共有しやすくて、簡単なプロットみたいなものをスタッフさんにお渡ししたんです。そしたらスタッフさんから「この物語をちゃんと書いてみたら?」と言ってもらえて、それをきっかけに初めて自分で小説を書いてみることになり。その小説をもとにn-bunaさんに作っていただいたのが、夏をテーマにした第1弾の楽曲「青春なんていらないわ」ですね。アートワークに関しては、ダイスケリチャードさんが描く女の子のけだるい雰囲気が三月のパンタシアの世界観にぴったりなんじゃないかなと思ってお願いしました。
──夏企画をやりたいというところから始まり、結果その半年後にはアルバムが1枚できあがりましたが、どの段階でこの企画を継続的にやっていこうと決めたんですか?
「青春なんていらないわ」をYouTubeで公開したところ、リスナーの方のリアクションがすごくよかったんです。この曲をきっかけに三パシのことをいろんな人に知ってもらえたし、これまで三パシを応援してくれた人たちも私たちが新しいことをしているのを受け入れてくれたので、「じゃあ冬もやりたいね」とすぐに準備に取りかかりました。そういった流れの中で自然と次のアルバムも「ガールズブルー」の延長線上で楽しんでもらえるようなものにしたいねという話になり、今回の作品では四季をテーマに春、夏、秋、冬それぞれの物語を描いています。
──これまでも三月のパンタシアは青春時代の繊細な感情にスポットを当てて楽曲を届けてきましたが、思春期の女の子の憂鬱さや心の揺れを描いた「ガールズブルー」という企画は、そんなユニットの世界観がより濃密に凝縮されたプロジェクトになっていると思います。
三パシの色をもっと濃く出せるような作品作りをしていきたいというのは、この企画を始めた趣旨の1つとしてありました。これまでも三パシは “終わりと始まりの物語を空想する”というテーマで一貫して作品を作ってきたけど、その中でもよりテーマを絞って色味をわかりやすくしたほうが、リスナーに私たちの世界観が届きやすくなるんじゃないかなと。
──この企画で初めて小説を書いたのにも関わらず、夏からこの短期間で「青春なんていらないわ」「街路、ライトの灯りだけ」に加え、アルバムの新曲6曲分の小説を書き下ろしたのはすごいですね。
なかなか難しかったです(笑)。細かく書きすぎてもダメだし、でも書かないと伝わらないし。行間で物語を伝えるというのが一番大変でした。アルバムの初回限定盤に小説を収録した文庫本を付けているのですが、レイアウトにもかなりこだわって最後まで作らせてもらいました。
病み狂ったフレーズを入れてください
──それぞれの物語をどのクリエイターさんにお願いするかは、どういった観点から決めていったんでしょうか?
小説を書いている時点で、なんとなくこの物語の世界観はこの方に合うだろうなというイメージを持っていました。特に「ビタースイート」はすこっぷさんのピアノの旋律が物語のダークな世界観にぴったりだろうなと明確なイメージがありましたね。
──「ビタースイート」の原案の小説「グッバイパンプキン」には、恋人がいる男性と関係を持ってしまった女の子の“依存心”が描かれています。
最初は“秋”“別れ”というざっくりとしたテーマだけ決めていたんですけど、別れの物語を考えていく中で「私はこの人の恋人ではない」という1文を思いついたんです。そういった関係性の物語も面白いんじゃないかと思ったのと、あと実際に私の友達からそういった相談をされたことも思い出して。
──友達の実体験だとしたら、かなり悲痛な……。
第三者からしたら「そんな恋愛絶対やめた方がいいじゃん!」と思うんですけど、その子は自分でもわかっているのに相手から離れられないという……小説は当初「ほら、結局私はこの人にずっと依存してしまう」と相手から離れられないまま終わらせる予定だったんですけど、小説の中でくらいはちょっと光があってもいいかなと思って、最終的には少し救いのある終わり方にしました。
──この曲はアルバムの中でもかなりメーターを振りきった憂鬱さが描かれていますが、すこっぷさんにはどういったイメージを伝えたんですか?
「最後まで暗くていいので、すごく病んでいる感じでお願いします」とお伝えしました(笑)。病み狂ったピアノのフレーズをバンバン入れてください!と。
──病み狂った(笑)。
歌詞についても、この物語は“依存”がテーマなので「好きな人に会えなくて苦しい」とか「なんでうまくいかないんだろう」といった気持ちじゃなくて、「なんで私はこの人から離れられないんだろう」という自分に対する怒りややるせなさを描いてほしいとお話しました。そしたらイメージ通りの歌詞とメロディが上がってきたので、すぐにすこっぷさんに「これです!」と連絡しましたね。
──楽曲の世界観に合わせて、これまでにないようなけだるげな歌い方をされていますね。
この曲は歌うのも楽しかったです! こういった恋愛を歌うのは初めてだったので、ほかの曲の女の子とは違うようなけだるさや艶っぽい感じを表現してみました。
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本当の気持ちと、嘘の気持ち