ナタリー PowerPush - Perfume Clips

関和亮が語るPV制作の裏側

「微かなカオリ」

2011年5月18日リリース「レーザービーム / 微かなカオリ」通常盤ジャケット

──「微かなカオリ」のPVは「動く写真集」をコンセプトにしているそうで。

等身大の女の子をきれいに撮るのがテーマだったんですけど、ただ撮ったんじゃ面白くないから写真集みたいにしようって提案して。写真集って普通、同じシーンは何ページも続かないじゃないですか。ベッドにいる写真の次は洗面台の前で、ページをめくったらごはん食べてて。映像でそれを表現してみたいなと思ったんです。あと、写真集に載せるカットって基本は縦向きで撮るじゃないですか。なのでこのビデオも縦で撮ろうって。

──縦長のPVを作るって面白い発想ですね。

この頃、友達からスマートフォンで撮った映像が送られてきたんですよ。「関くーん」みたいな。それを見て「あれ? 映像が縦だ!」って、けっこう衝撃を受けたんですよね。よく考えたらスマートフォンとかタブレットって縦横関係ないじゃないですか。だからiPhoneやiPadで観る人にとっては、縦の映像があっても全然おかしくないんだって気付いて。フレームの縦横とか、もう関係ないやって。

──あー、スマホ向けに作った映像だったんですね。

もともとそうやって観てほしくて(笑)。でも、それだとテレビでオンエアできないから横長にしてくれってことで、両サイドに黒を入れて作ったんです。今回の特典に入ってる、映像が横向きになってる「縦型Version」っていうのが最初にイメージしてた形なんですよ。で、その「縦型Version」って一度だけテレビでオンエアされたんですよね。面白がってやってくれたんですけど、アホだな、最高だなって(笑)。まあ、これを観るためにテレビを縦にするのは大変だと思うけど、最近は画面を横向きにできるノートパソコンとかもあるので、そういうので観てみてほしいです。観え方が違って面白いと思うので。

「GLITTER」

──「GLITTER」は「コンピューターシティ」や「Dream Fighter」と同じくダンスを見せるタイプのビデオですね。

そうですね。シンプルに踊りを観てもらおうと思って。それと「GLITTER」っていうタイトルなので、光がキラキラしているところを撮りたいというのもありました。それで鏡とかを使ったりして。最後はどうしようかなと考えたときに、すだれの花火を思いついて、あれをすごくやってみたくなったんです。

関和亮

──ああ、なるほど。

前半はとにかく踊りを撮るようにして、演出はすごく抑えめにしたんですけど、3人とも大人っぽくなってて、それだけですごくきれいだったんですよ。だから「GLITTER」っていうのは本人たちの輝きのことなのかなって思って。あのとき、3人をシンプルに強く見せるために、あえて周りには何もなくしたっていうのをすごく覚えてますね。

──ダンスコンテストの課題曲だったから、ダンスがわかりやすいようにしたのかと思ってました。

そういうのもあるとは思いますね。ただ、そこが出発点というわけではなかったです。最初にあったのは単純に「キラキラさせたい」というイメージだったので。

「FAKE IT」

──「FAKE IT」はもともと「ねぇ」のカップリングだったので、初めてリリースされてから2年も経ってビデオが作られたんですよね。

「Perfume Global Compilation "LOVE THE WORLD"」を作るときに、アルバムのコンセプトがダンスミュージックだし、リード曲に一番ふさわしいんじゃないかということになって。当時EDMがすごく来てる時期だったし、Perfumeも攻めてますよってアピールしようと。で、ビデオを作ろうって話になったとき、本人たちから「この曲のイメージはライブだから、ライブ感を出したい」っていう話があって。

──あ、本人たちの希望だったんですか。

そうなんです。すごくライブで盛り上がる曲だからって。

──PerfumeがライブシューティングでPVを作るのはこれが初めてですよね。

そうですね。やっぱり彼女たちはライブに対する自信がありますし、ライブが自分たちの魅力の1つだっていう自負を持っているので、このビデオはそこを伝えられるものになったんじゃないかと思います。

──ライブハウス全体を使ってバレットタイム(被写体の周りを複数のカメラで囲む、映画「マトリックス」などで知られる撮影手法)をやるって、かなり大変なことなのでは?

大変でしたね。カメラメーカーに協力していただいて、フロアを囲むように何十台っていうカメラを並べて。ライブ映像なのでその中にファンの方々も入れなきゃいけないし。でもライブ会場でこういうことをやってる映像って観たことがなかったから、単純に興味があったんですよ。

Perfumeとの運命を感じる

──過去作をまとめて振り返ってみて、どうですか?

途中でも言ったんですけど、こんなに長く関わるアーティストはなかなかいないと思うんです。そういうアーティストって、たぶんもう僕の人生であとにも先にもいないと思うんですよね。こうやって振り返るとつらいことがいろいろ思い出されるんですけど(笑)、自分にとって胸を張れるものになったと思うし、3人もそう思ってもらえてると思うので、つらいことも乗り越えてきてよかったなって思ってます。すげえ普通のことですけど(笑)。

──一緒に仕事をし始めて、もうすぐ10年ですもんね。

最初の頃って何が面白いんだろうとか、どうすればいいんだろうっていうのを探りながらやってる部分があったんです。けど彼女たちは本当にすごいので、ネガティブなことはあんまり言わなかったしやらなかったんです。いつまでも周りを信じてやり続けてくれる。それは今も変わらなくて。3人の周りにいろんな才能が集まってくるのもそれが理由なのかなとか、一緒に作品を作ってきた身としては感じますね。

──Perfumeから撮影中に意見を言われることって多いですか?

ダンスに関してはけっこう意見を言ってもらってます。例えば僕が「今のよかったね、じゃあ次やろうか」って言っても「もう1回やっていいですか?」って言われることがあったり。ぶっちゃけ、ちょっと間違ってるところがあっても編集でなんとかできるじゃないですか。だけど完璧にできるまでやって、自分で「あ、こっちのを使ってください」って言うんですよ。そういう意味では昔から、3人と一緒に作り上げてる感じはありました。

──最後に、関さんにとってPerfumeとの仕事ってどんなものなのか教えてください。

そうですね。もうライフワークとまでは言わないですけど、本当にずっとこの先もやっていくんだろうなと。どんどん忙しくなっていくと、やっぱりどうしてもタイミングが合わなかったり、お断りせざるを得ない仕事が出てくるものですけど、なぜか彼女たちの仕事ってスケジュールが合うんですよ。声をかけていただいたときに「うわ、もう今月超忙しいのに」って思っても、「この日は空いてますか?」って言われて調べると「あ、空いてます」って(笑)。もうこれはやるしかないんだなみたいな。

──運命的ですね(笑)。

最近本当に運命を感じますね。いずれ辞めろって言われる日も来るかもしれませんが、これからもずっとやり続けたいと思いますし、本当に出会えてよかったなって思います。

──これからも作品を楽しみにしてます。

まあ、今後のことはあんまり考えてないんですけど(笑)。自分が楽しめることをするのがいいのかなと思っているから、すごく変なオーダーも受け入れるつもりです。信頼関係ができてるというか、いろんなことが言い合える仲なので。すごく珍しいチームだなと思いますね。

関和亮
Perfume「Perfume Clips」 / 2014年2月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
Perfume「Perfume Clips」初回限定盤ジャケット
Blu-ray / 初回限定盤 [Blu-ray Disc 2枚組] / 6300円 / TKXA-1020
DVD / 初回限定盤 [DVD 3枚組] / 5250円 / TKBA-1200
Blu-ray / 通常盤 [Blu-ray Disc] / 4725円 / TKXA-1021
DVD / 通常盤 [DVD 2枚組] / 3675円 / TKBA-1201
収録内容
  1. リニアモーターガール
  2. コンピューターシティ
  3. エレクトロ・ワールド
  4. チョコレイト・ディスコ
  5. Twinkle Snow Powdery Snow
  6. ポリリズム
  7. Baby cruising Love
  8. マカロニ
  9. シークレットシークレット
  10. love the world
  11. Dream Fighter
  12. ワンルーム・ディスコ
  13. I still love U
  14. 不自然なガール
  15. ナチュラルに恋して
  16. VOICE
  17. ねぇ
  18. レーザービーム -FULL Ver.-
  19. GLITTER
  20. スパイス
  21. 微かなカオリ -TV Ver.-
  22. FAKE IT
  23. チョコレイト・ディスコ -Historical Live Act Version-
初回限定盤 特典DISC
  • Perfume Clips 4倍速オーディオコメンタリー
  • マカロニ -A-CHAN Version-
  • マカロニ -KASHIYUKA Version-
  • マカロニ -NOCCHI Version-
  • I still love U -ネタばらしVersion-
  • 微かなカオリ -縦型Version-
  • TV-SPOT集(25種類)
関和亮(せきかずあき)

1976年生まれの映像作家。1998年より株式会社トリプル・オーに所属。2004年にPerfumeのシングル「モノクロームエフェクト」のジャケットを制作したことを皮切りに、PerfumeのPV監督やアートディレクションを手がけるようになる。その後、数多くのアーティストのビデオクリップ制作に携わり、2010年に公開されたサカナクション「アルクアラウンド」のPVは「第14回文化庁メディア芸術祭」のエンターテインメント部門優秀賞や「SPACE SHOWER Music Video Awards」のBEST VIDEO OF THE YEARを受賞。フォトグラファーやグラフィックデザイナーとしても活動し、NHK連続テレビ小説「おひさま」「ごちそうさん」のタイトルバックを手がけるなど幅広い活躍を見せている。

Perfume(ぱふゅーむ)

あ~ちゃん(西脇綾香)、かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」、11月にシングル「Sweet Refrain」をリリース。12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を成功させた。2014年2月には初のビデオクリップ集「Perfume Clips」をリリース。