ナタリー PowerPush - Perfume Clips

関和亮が語るPV制作の裏側

「マカロニ」

──「マカロニ」のPVはこれまでと雰囲気がガラッと変わりましたね。

このビデオは初めは作る予定じゃなかったんです。でも「Baby cruising Love」との両A面だから、こっちも必要でしょってことになって。ずっと彼女たちの人間らしい部分を見せないようにしてきたけど、曲調もこういう感じだし、逆方向に振り切って「休日のPerfume」みたいなイメージでやろうかなと。

──これは実際に8mmフィルムのカメラを使って撮影してるんですよね?

関和亮

そうです。フィルムがどんどんなくなっていくので、今のうちにそれを使いたいなっていう気持ちがあって。あと、普段「テクノ少女」って言われてる子たちがノスタルジックな映像の中で天真爛漫に動いてると、もしかしたらこの子たちはもう存在しないんじゃないか、これは30年前の姿なんじゃないか、みたいな見方もできるんじゃないかって。まあ、それは映像では語ってない裏テーマなんですけど。

──絵コンテは作ったんですか?

ほぼ作ってないです。あらかたのストーリーというか、街を歩いて川に出て、最後に走り出して3人が出会ってみたいな、そういうのは考えたんですけど。撮影では3人まとめて1日中引きずり回しました(笑)。夕方までに終わらせないといけないから、朝の5時くらいからスタートして。

──今回のDVD/Blu-rayにも特典映像として入ってますが、最初からソロバージョンを3種類作るつもりだったんですか?

いや、まったくなかったです。勢いで「これだけ撮ったら3人分作れるね」って言ったら、それを担当さんがまんまと聞いてて「お願いします!」ってことになって(笑)。だからこれに関しては、素材を余すところなく使い切ってるというか。ある意味コンタクトシートを見せてる状態だから、いいところも悪いところも全部映ってるんですよね。まあ、それがよかったんだと思います。

「love the world」

2008年7月9日リリース「love the world」通常盤ジャケット

──ノスタルジックな映像という意味では、次の「love the world」も全編モノクロで、古い無声映画みたいな雰囲気がありますよね。

まずCDジャケットのアートワークを考えてるときにモノクロがいいなって思って。じゃあ思い切ってビデオもモノクロにしちゃって、そういうコンセプトで撮ろう、っていう感じでしたね。

──「モノクロームエフェクト」の頃に通じるようなレトロな雰囲気を感じました。

ある種のドラッグ映像のような、映像の繰り返しの妙みたいなものを意識してるんです。曲を聴いて「ワールド」という言葉が指すものを考えたときに、3人の中で回る世界みたいなものをイメージしたので。あとは、3人が同じ格好をしてるのがレトロ感につながってるというのもあると思います。最初の頃は立て続けに同じ格好をさせてたんですけど、3人それぞれの個性も必要だってことで、衣装はだんだん形も含めてバラバラになっていったんですよ。でも僕は制服っぽい感じが好きだったので、また衣装を揃えてみたんです。

──衣装はすごくビビッドな赤なのに、ジャケやPVはモノクロだから赤が一切出てこないんですよね(笑)。

そこは本人たちもすごく楽しんでくれてて。アー写だとグレーなのに、同じ服を着てテレビとかで取材を受けると真っ赤なので(笑)。意外な驚きがあっていいって、本人たちもノリノリだった記憶がありますね。

「Dream Fighter」

2008年11月19日リリース「Dream Fighter」通常盤ジャケット

──「Dream Fighter」は本人たちにとってもファンにとっても特別な曲という位置付けになってますよね。

3人が初めて武道館でコンサートをやるっていう、ミュージシャンとしての1つの目標を達成したタイミングでの曲でしたからね。曲自体も、何かそういうのを示唆するような内容だったし。

──ビデオを初披露したのも、その武道館のステージ上でしたよね。映像を作る段階で、これがモニュメンタルな作品になるという気持ちはあったんですか?

えっと……、3人が曲に対して抱いてる気持ちとか、彼女たちのそのときの状況とかは実はあんまり考えたことないんですよ。それは今も含めて同じで。

──背景が真っ黒で、ダンスに焦点を合わせた映像は「コンピューターシティ」に近いですね。

そうですね。「最近踊ってないね」「また踊りが観たいなー」って思って(笑)。だからこのときは「踊り切らせよう」っていう気持ちがあったんです。それで、シンプルにダンスを見せる代わりに、カメラワークだったり、場面ごとのつなぎを工夫して面白い映像にしようかなと。ちょうどそのとき自分の中に「球」っていうキーワードがあったんですよね。3人がたくさんの球になって消えて、またその球が集まって形を作るという。そんなイメージで作りました。

「ワンルーム・ディスコ」

2009年3月25日リリース「ワンルーム・ディスコ」通常盤ジャケット

──「ワンルーム・ディスコ」のPVは当時「撮影時間が過去最長」と言われていましたが、いまだに関さんが携わった作品の中で最長なんですか?

僕の中では最長ですね。ほかの監督さんで大変なのがあったって話は聞くんですけれど。いやー、これは本当に大変でした。3人をバラバラに撮ってるので、単純に時間が3倍かかるという。あとセットを頻繁に変形させたので、「無駄なことをちまちまやってた」という印象です(笑)。

──いろんなアイデアをたっぷり詰め込んでますからね。

ものすごく凝った作り方をしちゃったので、撮影中3人は自分たちが何をやってるかわかってないんですよ(笑)。まあでも、説明通りいきいきと動いてくれるので、そんなことは感じさせないんですけど。「できあがるまでわかんない」って毎回言われるんですよね(笑)。コンテ描いても僕は絵がヘタなんで、本人たちも伝わってるんだか伝わってないんだかよくわかんない感じで、いつも不安にさせたまま撮ってます(笑)。

──ほかの監督の撮影だと違うんですか?

いやもうばっちりやっていますよ。最近Perfumeのビデオを撮っていただいている田中裕介さんとかは、もう全部のカットにきれいな絵がありますからね(笑)。だからメンバーは「あ、撮影ってこういうもんなんだね」って言ってましたよ。「私たちいつもコンテないんですよ」とか言って(笑)。

Perfume「Perfume Clips」 / 2014年2月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
Perfume「Perfume Clips」初回限定盤ジャケット
Blu-ray / 初回限定盤 [Blu-ray Disc 2枚組] / 6300円 / TKXA-1020
DVD / 初回限定盤 [DVD 3枚組] / 5250円 / TKBA-1200
Blu-ray / 通常盤 [Blu-ray Disc] / 4725円 / TKXA-1021
DVD / 通常盤 [DVD 2枚組] / 3675円 / TKBA-1201
収録内容
  1. リニアモーターガール
  2. コンピューターシティ
  3. エレクトロ・ワールド
  4. チョコレイト・ディスコ
  5. Twinkle Snow Powdery Snow
  6. ポリリズム
  7. Baby cruising Love
  8. マカロニ
  9. シークレットシークレット
  10. love the world
  11. Dream Fighter
  12. ワンルーム・ディスコ
  13. I still love U
  14. 不自然なガール
  15. ナチュラルに恋して
  16. VOICE
  17. ねぇ
  18. レーザービーム -FULL Ver.-
  19. GLITTER
  20. スパイス
  21. 微かなカオリ -TV Ver.-
  22. FAKE IT
  23. チョコレイト・ディスコ -Historical Live Act Version-
初回限定盤 特典DISC
  • Perfume Clips 4倍速オーディオコメンタリー
  • マカロニ -A-CHAN Version-
  • マカロニ -KASHIYUKA Version-
  • マカロニ -NOCCHI Version-
  • I still love U -ネタばらしVersion-
  • 微かなカオリ -縦型Version-
  • TV-SPOT集(25種類)
関和亮(せきかずあき)

1976年生まれの映像作家。1998年より株式会社トリプル・オーに所属。2004年にPerfumeのシングル「モノクロームエフェクト」のジャケットを制作したことを皮切りに、PerfumeのPV監督やアートディレクションを手がけるようになる。その後、数多くのアーティストのビデオクリップ制作に携わり、2010年に公開されたサカナクション「アルクアラウンド」のPVは「第14回文化庁メディア芸術祭」のエンターテインメント部門優秀賞や「SPACE SHOWER Music Video Awards」のBEST VIDEO OF THE YEARを受賞。フォトグラファーやグラフィックデザイナーとしても活動し、NHK連続テレビ小説「おひさま」「ごちそうさん」のタイトルバックを手がけるなど幅広い活躍を見せている。

Perfume(ぱふゅーむ)

あ~ちゃん(西脇綾香)、かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」、11月にシングル「Sweet Refrain」をリリース。12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を成功させた。2014年2月には初のビデオクリップ集「Perfume Clips」をリリース。