嫌いだった日本語と英語のミックス歌詞を克服「別にいっか」
──5曲目の「LONELY」はSUNNY BOYさんと共同で作られた感じですか?
そうです。「LONELY」と、10曲目の「143」はSUNNYのスタジオで同じ日に作ったんですよ。彼との最初のセッションでできた感じですね。「LONELY」は英語のパートがデモの段階でほぼほぼ決まってたんですけど、SUNNYに「日本語の歌詞も書いてみてよ」って言われて、今の形になったんですけど。
──以前のインタビューで「日本語と英語をちゃんぽんするのが嫌い」とおっしゃっていたのがすごく印象に残っているんですよ。
あははは。そうそう、もともとはめちゃめちゃ嫌いなんですよ(笑)。
──でも今回は1曲の中に英語と日本語が共存している曲が多いですよね。聴き手としては全然違和感がないんですけど、確かそんなことおっしゃっていたよなあと思って(笑)。
なんかね、「別にいっか」と思ったんですよ(笑)。それはSUNNY BOYと作業してる中での気付きというか。ここ最近の傾向ではあるんですけど、俺が作る曲は案外、洋楽インフルエンスが多い分、メロディのシンプルなものが多い。そうなると日本語が乗っけづらいことも多いんですよね。それが制約になってしまうこともあったので、だったら英語もミックスして、両方を行き来したほうがおもしろいし、曲としてもいい流れが生まれるんじゃないかなと思って。
──「143」は“I LOVE YOU”を意味するスラングですよね。ご自身で弾いたアコースティックギターと歌で聴かせるシンプルなラブソングです。
これは俺がリハのときにいつも弾いているコード進行があって。それをそのまま曲にした感じなんですよ。いつか曲にしたいなと思っていたものをSUNNYと一緒に形にできたのがうれしかったです。SUNNYもすごく気に入ってくれたみたいですね。いろんなビンテージマイクの音を再現できるモデリングマイクを買ったんで、それで録りました。自宅でもいい音で歌が録れちゃうので、いい時代だなあって改めて思いましたね(笑)。あとホーンセクションを置き換えたイメージのギターフレーズを入れられたのが、個人的にはすごく満足感がありました。ああいうギターの入ってるJ-POPって、なかなかあるようでないですからね。先手取ってやったぜって感じっスね(笑)。
──SUNNY BOYさんとはもう1曲、8曲目の「蜃気楼」でもコラボされていますね。
これは制作の最後にできた曲で。歌詞を書くのがまず大変だったし、さらにそれを歌に落とし込むこともすごく大変で。でも仕上がりとしては、SUNNYがなかなかアゲな感じのレゲトンを入れてくれたので、曲としていいバリエーションが生まれたなって思いますね。
──歌詞にはどんなこだわりを注いだんですか?
この曲ではJ-POPっぽい言葉遊びをすごく意識したんですよ。相反するものをうまく1つの文章にしていく、みたいな。そういうことは以前からやってみたかったんですよね。頭の部分の「線をなぞる」というパートは書道の話なんですけど、そこから自分が昔に見ていた夢や幻、そして今の現実みたいなものについて書いたつもりです。
──僕はこの曲の歌がすごく好きで。胸に迫ってくるものがあります。
あ、うれしい。がんばった甲斐がありました(笑)。以前の僕はガッツリ張って歌ったほうが自分のよさが出せると思っていたんですけど、SUNNYのボーカルディレクションを通して、実はそうじゃないってことに気付いたんですよね。力を抜いてソフトに歌ったほうがいい倍音が出るとかね。曲に合わせた強弱をすごく意識するようになったんです。それは大きな収穫でした。
クレさんは俺にとっての師匠
──6曲目の「想像の向こう」はかねてから大好きだと公言されていたKREVAさんが作詞、作曲、プロデュースを丸っと手がけられています。
クレさんは大学の先輩でもあるし、「心臓」の頃から毎回ライブにも行ってますからね。日本語で韻を踏むということに関しては、クレさんのファンクラブ「KFC」でやってたラップ講座で学んだんですよ。そういう意味では俺にとっての師匠と言っても過言ではないので(笑)、今回ご一緒できたことは本当にうれしかったです。
──歌モノになっていたのがちょっと意外でもありました。
そうなんですよね。でもクレさんはメロディメイカーでもあるし、歌詞の中にはフロウを意識した流れを感じることもできるので、さすがだなって。打ち合わせした次の次の日くらいにはもう曲が上がってきたんですけど、「何も言うことないっス!」みたいな感じで(笑)。タイトル通り、俺の“想像の向こう”にあるものを作り上げてくださいましたね。
──尾崎さんの歌に関して、KREVAさんは何かおっしゃってました?
改めての感想は聞いていないですね。「まだまだだね」って言われそうな気がしますけど(笑)。ちなみに最初はクレさんのハモりとかいろんな声がガッツリ入ってたんですけど、制作の過程でご自身が削ってしまったんですよ。でも俺はどうしてもクレさんの色を残したかったら、“ハッ!”っていう声やガヤなんかはあえて生かして、しかもだいぶ大きめにミックスさせてもらいました(笑)。あれはもうクレさんにしか出せない部分ですからね。
──7曲目の「Glory Days」は、2017年に一度リリースされた曲です。なぜこのアルバムにも収録しようと思ったんでしょう?(参照:尾崎裕哉、劇場版「エウレカセブン」主題歌含む新作リリース)
今の自分の代表曲になりつつあるし、振り返ってみれば蔦屋(好位置)さんといしわたり(淳治)さんにプロデュースしてもらったことでいろんな学びがあった曲でもあるので、改めてスポットを当てたかったんです。単純に歌ってて気持ちいいから自分も好きな曲ですしね。
ロックンロールスターにDMでオファー
──そして本編のラストを飾る「Rock'n Roll Star」では布袋寅泰さんがギターでフィーチャーされています。これはどんな流れで実現したんですか?
最初は「つかめるまで」のブリッジで弾いてもらおうかなと思ったんですけど、「せっかくなら『Rock'n Roll Star』がいいんじゃない?」ってトオミさんに言われて。確かにその通りだと思って、「じゃ布袋さんにお願いできないですかね?」ってスタッフに言ったら、みんな顔が青ざめちゃって(笑)。なので、俺が「じゃインスタでDMしますわ」みたいな流れでしたね。
──自らオファーしたんですか? しかもDMで!?
共通の知人がいるから、一度布袋さんと飲みにいったことがあるんですよ。その後はライブを観に行かせてもらったりもして。ちょっとかわいがっていただけてる感じだったんですよね。なのでDMしちゃったんですけど、そうしたら「まずは曲を聴かせろよ」と。で、聴いてもらったらお引き受けいただけました。すごく光栄なことだし、何よりぜいたくですよね。レコーディングのときは「指先の吐息が伝わったらうれしいね」みたいなことをおっしゃっていて。その音色を聴いた瞬間、涙が出ました。
──たっぷり尺を取ったアウトロで、布袋さんのギターと尾崎さんのフェイクが絡み合うところは感動必至ですよね。
自分の父親のことも知っている、本物のロックンローラーである布袋さんがギターを弾いてくださることで、曲に込めたテーマがより説得力を増した気がします。
──そしてボーナストラックには、以前にSKY-HIさんとコラボした「ハリアッ!!」がライブでの弾き語りバージョンで収録されています。
トラックものの曲をアコギ1本でどこまで再現するかっていうトライはけっこう好きなんですよ。そういう意味でこの曲はすごくいい題材でしたね。この曲があったからこそ、「Awaken」とか、ちょっとラップっぽいノリの曲がより乗りこなせるようになったところはあったと思います。
──この1stアルバムを携えて、尾崎さんは現在弾き語りツアー「HIROYA OZAKI/ ONE MAN STAND 2020」の真っ最中ですね。
今回のアルバムの曲たちを弾き語りでやることに関してはもう不安しかないんですけど(笑)、ツアーをやりながら磨いていけたらいいなと思ってますね。このご時世にライブをする意味みたいなものが問われるところもあるとは思うんですけど、変わらずにライブし続けていく自分の姿を通して、その答えを見出してもらえたらうれしいです。
──アルバムを通して“回想”が終わった今、ご自身の中には新たなフェーズが見えている感じですか?
そうですね。サウンド的にはもっとソウルな感じで、いなたいギターもどんどん入れていきたい。そして歌詞的にはもうちょっと社会的な出来事に目を向けつつ、それを通して自分自身のことについて、希望について描いていけたらいいなって思っています。
ツアー情報
- HIROYA OZAKI / ONE MAN STAND 2020
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- 2020年10月2日(金)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2020年10月4日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2020年10月9日(金)岩手県 the five morioka
- 2020年10月10日(土)宮城県 Rensa
- 2020年10月11日(日)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2020年10月16日(金)大阪府OSAKA MUSE
- 2020年10月17日(土)京都府 磔磔
- 2020年10月18日(日)奈良県 奈良NEVER LAND
- 2020年10月23日(金)福岡県 ROOMS
- 2020年10月28日(水)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2020年10月31日(土)和歌山県 和歌山CLUB GATE
- 2020年11月1日(日)兵庫県 神戸VARIT.
- 2020年11月3日(火・祝)愛知県 SPADE BOX
- 2020年11月7日(土)石川県 金沢GOLD CREEK
- 2020年11月8日(日)新潟県 ジョイアミーア
- 2020年11月13日(金)北海道 ふきのとうホール
- 2020年11月15日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)
- 2020年11月19日(木)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
- 2020年11月21日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1