音楽ナタリー Power Push - 尾崎裕哉×蔦谷好位置×いしわたり淳治
もがき続けた日々からの解放
シンガーソングライター、尾崎裕哉が初のCD作品「LET FREEDOM RING」をリリースした。
尾崎豊の息子として生を受けた彼が、父親の没年齢を超えた27歳の今、“解放”をテーマにして作り上げた本作。サウンドプロデューサーに蔦谷好位置、ワーズプロデューサーにいしわたり淳治を迎えたことで、自身の豊富な音楽知識と圧倒的なクリエイティビティがより鮮烈な色彩を放つ仕上がりとなった。収録されるのは、昨年9月にデジタル1stシングルとして配信され話題を呼んだ「始まりの街」のリアレンジバージョンを含む全4曲。これまでに抱えてきたさまざまな葛藤をサウンドへと昇華し、力強く前へと進み始めた新たな決意を感じることができる、まさに“始まり”にふさわしい1枚だ。
今回、音楽ナタリーでは尾崎裕哉と、本作にプロデューサーとして参加した蔦谷好位置、いしわたり淳治による鼎談を実施。ついにベールを脱いだ大型新人アーティストの実像に迫った。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 後藤壮太郎
解放されて上を向いていく姿勢を表した作品(尾崎)
尾崎裕哉 お二人に会うのはちょっとひさびさですよね。制作のとき以来なんで。
いしわたり淳治 うん。でも、ついこないだまで作ってた気もするけど(笑)。
蔦谷好位置 つい最近までやってたよね。僕が最初に裕哉くんと顔合わせしたのが去年の12月で。そこから本格的に制作を始めて1月末くらいまで作業してたから(取材が行われたのは2月下旬)。
──今回リリースされた「LET FREEDOM RING」は尾崎さんにとっての初のCD作品となります。ご自身としてはどんな内容にしようと思っていましたか?
尾崎 当初はコンセプトありきで作ろうと思っていたんですけど、結果的にはそうはならなくて。それぞれの曲を詰めていく中で、全体としての整合性を取っていくスタイルになったんです。ただ、この作品を通して描きたかったこと、全体のテーマは結果として最初のコンセプトと同じになりましたね。
──そのテーマとは?
尾崎 “解放”です。それは自分の胸の内の解放であり、自分自身の存在を世に解放していくという意味合いでもあります。これまで抱えてきた苦悩をベースとしながら、ここから前を、上を向いて行く姿勢を表した内容になったと思います。
尾崎豊の存在はこれから活動していく中で絶対に避けられない(蔦谷)
──制作にあたって蔦谷さんといしわたりさんを起用したのはどうしてだったんですか?
尾崎 蔦谷さんに関してはスタッフからの提案でしたね。今をときめくプロデューサーなので「いいんですか?」みたいな感じでしたけど(笑)。
蔦谷 淳治くんの参加は僕のアイデアなんですよ。サウンドだけでなく、歌詞に関してもプロデューサーとしてアドバイスしてくれる人がいてくれたほうが絶対にいいと思ったので、スタッフの皆さんと相談したうえで、今まで何度も一緒に仕事をしてきた淳治くんに声をかけました。
いしわたり うん。で、最初の顔合わせでめっちゃしゃべったんだよね。7時間くらい(笑)。
尾崎 最初のセッションが長かったですよね。僕の中では収録曲の「サムデイ・スマイル」の歌詞をどうしようかなっていう問題があったんですよ。自分としては「上を向いて歩こう」みたいなイメージを持っていたんだけど、具体的にどんな歌詞にすればいいかを悩んでいたので、いしわたりさんに細かいアドバイスをたくさんいただいたんです。
いしわたり 初日は顔合わせだって聞いてたから、そんなつもりじゃなかったんですけどね。僕が声をかけてもらった段階ではまだ音源もなかったから予備知識ゼロだったし。でも気付いたらそういうセッションの流れになってました(笑)。
蔦谷 僕も2度目に会ったときはそういう感じでしたよ。僕のスタジオに来てもらったんだけど、4曲分くらいのメロディに手を付けて、ほぼ完成型まで固めた感じで。
いしわたり その場で作ったの?
尾崎 そうっすね。作曲セッションみたいなことが始まって。
蔦谷 淳治くんと同じく、俺もそんなことになるとは思ってなかったよ。でもスタッフの皆さんからのね、「やれよ、やれよ」っていう熱い視線を浴びてるうちに自然と(笑)。
いしわたり その視線、俺もものすごい浴びたよ(笑)。
尾崎 あはははは(笑)。
蔦谷 でも、そういった作業の合間には、裕哉くんの好きなものとかをいろいろ聞くこともできて。そのうえで、「じゃ、こんなやり方もありまっせ」みたいな感じで作業できたのは楽しかったですけどね。
──実際の作業を通して尾崎裕哉という人物を深く理解していった感じなんですね。
蔦谷 そうですね。裕哉くんのことはもちろんテレビで見て知ってはいたけど、具体的な人物像なんかは当然会ってみないとわからないわけなんで。僕は1回、2人で飲みにも行ったんですよ。
尾崎 うん、行きました。
蔦谷 そこでより深くお互いの話をすることができたのもよかった。裕哉くんにはものすごく偉大で素晴らしい、みんなが知っているミュージシャンであるお父さんがいたわけで。その存在はこれから活動していく中で絶対に避けられない部分だと思ったので、そこに関してはどう思ってるのかとか、そういう話もしましたね。
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収録曲
- サムデイ・スマイル
- 27
- 始まりの街(Soul Feeling Mix)
- Stay by my Side
尾崎裕哉「LET FREEDOM RING TOUR 2017」
- 2017年2月26日(日)
福岡県 BEAT STATION - 2017年3月2日(木)
大阪府 BIGCAT - 2017年3月11日(土)
東京都 EX THEATER ROPPONGI - 2017年3月15日(水)
愛知県 THE BOTTOM LINE - 2017年3月24日(金)
新潟県 新潟LOTS
尾崎裕哉 ライブツアー
- 2017年10月6日(金)
大阪府 NHK大阪ホール - 2017年11月3日(金・祝)
東京都 東京国際フォーラム ホールC
尾崎裕哉(オザキヒロヤ)
1989年、東京都で生まれる。2歳のときに、父でありシンガーソングライターの尾崎豊と死別。その後母と共にアメリカに移住し、15歳までボストンで過ごす。帰国後にバンド活動を開始し、大学生活と並行しながらライブや楽曲制作などを続ける。2010年から2013年に「CONCERNED GENERATION」、2013年から2015年に「Between the Lines」と、InterFMのレギュラー番組でナビゲーターを務めた。大学卒業後、2016年7月にTBSテレビ系「音楽の日」で初のテレビ生出演を果たし、大きな注目を集める。同年9月には東京・よみうり大手町ホールで初のホールコンサートを開催し、初の配信シングル「始まりの街」をリリース。2017年3月に初のCD「LET FREEDOM RING」を発表した。
蔦谷好位置(ツタヤコウイチ)
1976年生まれ、北海道出身。CANNABISのメンバーとして2000年にメジャーデビューし、その後NATSUMENの一員として活躍。2004年よりagehaspringsに在籍し、YUKI、Superfly、ゆず、エレファントカシマシ、木村カエラ、Chara、JUJU、絢香、back numberなど多くのアーティストのプロデュースを担当する。映画、CM音楽なども手がけている。3月17日公開のアニメ映画「SING / シング」日本語吹き替え版では音楽プロデューサーを担当した。
いしわたり淳治(イシワタリジュンジ)
1977年8月21日生まれ、青森県出身の作詞家 / プロデューサー。1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューした。SUPERCAR解散後以降に作詞家、音楽プロデューサーとしての活動を本格化させる。Superfly、少女時代、SMAPなどの作詞や、チャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、ねごとのプロデュースを務めた。3月17日公開のアニメ映画「SING / シング」日本語吹き替え版では日本語歌詞監修を手がけている。