ORβIT|7人が同じ場所に集った今、音楽を通して話したいこと

人に疑われる“別人格”

──2曲目の「Shady」はミステリアスな雰囲気が漂うクールな1曲で、JUNEさんが歌詞を手がけています。

HEECHO 「Eclipse」をリードに決めて、「ほかの曲はどうする?」という話になったときに最初に決まったのが「Shady」なんです。JUNEが「『Shady』がいいんじゃない?」って言って、その流れで歌詞も書きました。

JUNE 大きくバーンと跳ねるような曲ではないんですけど、雰囲気のあるサビなんですよね。今までやったことない感じだったから、やってみたいなと思いました。

YUGO 僕もこの曲は絶対入れたいなと思っていて。デモを聴いた時点でこの曲の歌詞はJUNEだなというイメージがありました。JUNEがいい歌詞を書いてくれて、レコーディングでもいい歌を録れたので、この曲を選んでよかったです。

──「Shady」は“怪しい”“うさんくさい”というスラングのほうの意味ですかね? 人に疑われているような……。

JUNE

JUNE そうです。“別人格”があることを人に疑われているという。アルバムのコンセプトがもう決まってたので、そこに沿って書こうと思ったら書きやすかったです。

──JUNEさんならではのいい意味でゾクッとするような歌詞が、ミステリアスな感じのトラックにとても合っていて。前作の「Dionaea」も二面性があるというか、ちょっとドキッとするような歌詞だったと思うんですが、やっぱりこういう歌詞がお上手なイメージがあります。

JUNE ありがとうございます!

YOUNGHOON JUNEは歌詞自動販売機です。

JUNE 130円くらいね(笑)。

TOMO 安すぎる!(笑)

──JUNEさんの中では自分らしい歌詞というのは確立しているんですか?

JUNE うーん、どうなんですかね。でも、1stアルバムの「00」の頃とはちょっと変わったと思います。メンバーが書いた歌詞から影響を受けたりもしていますね。

──この曲のレコーディングはいかがでしたか? 歌声に怪しげな雰囲気がありつつ、一方でラップは力強く放っていくような感じもあって。

HEECHO 歌割りを僕が細かく分けすぎて、レコーディングするときはちょっと大変だったけど、できあがったものを聴いてみたら「うまく分けたー!」という気持ちです。この曲はリズムとかしゃくりとか、テクニック的なことをけっこう話し合いましたね。歌はうまい、下手がすべてじゃないけど、そういう表現があってこそ、その上があると思うので。

──この曲のラップのフロウ、とてもカッコいいですよね。

YOUNGHOON 実は僕も韓国語でラップの歌詞を書いたんですけど、JUNEに「これはゴミ箱に入れてください」と言われたんです。

JUNE 言ってないわ!(笑)

HEECHO あの日、練習室の外で泣いているYOUNGHOONを見て、僕は抱きしめて……。

YOUNGHOON 階段の床がめちゃくちゃ冷たかったんです……。

一同 (笑)。

JUNE 僕は「これでいきましょう!」ってノリノリだったじゃないですか! ひどいなあ(笑)。

──YOONDONGさんのラップパートもすごくカッコいいですよね。

HEECHO 完璧でした!

YOONDONG レコーディングするときに、僕のラップパートが始まる前に何かワードを入れたいなあという話になって。JUNEと2人で頭を使って、いいフレーズを現場で考えたので、ぜひそこも聴いてみてほしいです。

心配しないで大丈夫だよ

──3曲目の「Forever」の作詞クレジットはYUGOさんとJUNEさんですが、YUGOさんがメインで作詞して、JUNEさんがラップパートを書いているということでしょうか?

YUGOJUNE はい!

──フューチャーベースで透明感やさわやかな雰囲気がありつつ、胸をギュッとつかまれるような切ない感じもあって。このトラックとYUGOさんの柔らかい言葉遣いがとてもハマってるなと思ったんですが、どういう経緯でYUGOさんが歌詞を書くことになったんですか?

YOUNGHOON 「Forever」はさわやかな曲ですけど、YUGOの歌詞の書き方だったら、もっといろんな色が出るかなと思ってYUGOに頼みました。

YUGO

YUGO 「Shady」とかほかの曲のデモを聴いたときに、自分が書けるのは「Forever」かなと思ったんですよね。

──前作の「Never gonna get away」は大人っぽくて艶やかな歌詞でしたが、そこからまたガラッと変わって。言葉の書き方としては1stアルバムの「みずたまり。」のほうに近いと思うんですが、こういうまっすぐなつづり方をしたのは意図的なことですか?

YUGO はい。今回はまず、難しい言葉や遠回しな表現は使わないようにしようと決めて。歌詞の内容が心にスッと入ってくるようにしたかったんです。

TOMO 今回のミニアルバムでは「Forever」に限らず、みんな比較的まっすぐに歌詞を書いていると思うんですけど、その中でも「Forever」は曲調的に優しくてさわやかな雰囲気なので、「みずたまり。」の歌詞を書いていたYUGOが適任だと感じました。

──離れている人へのメッセージソングになっていますが、これはメンバーの皆さんのことを思って書いた歌詞のようにも受け取れる気がしていて。例えば「君の帰る場所は 僕が守ると決めたんだ もう何も恐れないで」という言葉は、7月にオンラインファンミーティングで読まれたHEECHOさんの手紙の「今までは上の3人がいないときの4人のことを心配しすぎていました。ですが、皆さんもご覧になったように、4人だけでも十分にいけます」という言葉ともリンクしているような……。

YUGO ああ、まさにそうです。韓国に行く前に僕たちの現状や今後のことを考えながら書いた歌詞で、合流してからもちょいちょい直したりして。そのフレーズには「心配しないで大丈夫だよ」という気持ちを込めましたね。でも、ORβITを知らない人でも、リスナーの皆さんがそれぞれの状況に重ねて聴けるような内容にもなっていると思います。

──メンバーの皆さんの心にも刺さったんじゃないでしょうか。

YOUNGHOON めちゃくちゃ感動をもらいました。

HEECHO 歌詞を見て、その日、YUGOの口に牛肉を入れました。

YUGO あはは。ご褒美をいっぱいもらいました。

YOONDONG 「Forever」のデモを聴いたとき、YUGOのことを思い出して、YUGOが書いてくれたらうれしいなと思ったんです。結果、歌詞を見たらやっぱりYUGOはうまいなと思いました。YUGOがサビを歌っているところが個人的に好きです。

TOMO 僕はこの歌詞の中でも「春の雪 夏の夜 時で色褪せないように」というフレーズを見たときに、なんとなくYUGOっぽいなあと思ったんですよね。そのパートは僕が歌ってるんですけど、自分がYUGOっぽい歌詞だなと思ったところを歌えてちょっとうれしかったです。

──皆さんそれぞれ気持ちを重ねられる曲ということで、歌いやすかったですか?

YUGO いやー……(笑)。

一同 (苦笑いで顔を見合わせる)

YOUNGHOON ……難しかったんです。

HEECHO 今回のミニアルバムは、スケジュールの都合でレコーディングを連続でやったんです。その中で「Foerever」が最後に録った曲だったから、みんな喉も疲れた状態で。苦労した記憶がありますね。

YOUNGHOON 曲の雰囲気はさわやかだけど、歌詞は切ないので、どう歌ったらいいのか、その真ん中を探してレコーディングするのが個人的には難しかったです。

──数年後もORβITの皆さんをずっと支えてくれるような曲になりそうですね。

YOUNGHOON 本当に歌詞を書いてくれたYUGOにありがたい気持ちです。

HEECHO YUGOは、ありがとうの宝物だー!

YUGO (笑)。

1人ひとりちゃんと思いを伝えることを大切にしたかった

──「Enchant」の取材で「Flor Lunar」の話をしていたときに「デモの中にもう1曲いいなと思うバラードがあったんですけど、そっちの曲は冬っぽい印象を受けたので、まだ隠し持っています」とおっしゃっていたのが、4曲目の「With」ですか?

YOUNGHOON おおー!

TOMO まさにそうです。

──作詞はTOMOさんが担当されていますが、どういうことを意識しながら歌詞を書いていきましたか?

TOMO

TOMO バラードだからこそ、語るように歌うためにも韓国のメンバー3人がどういう言葉だと歌いやすいかなと考えましたし、「Eclipse」や「Forever」と同様にストレートに思いを伝えることも意識しました。HEECHOさんが「Eclipse」で「地球」と書いて「ほし」と読ませてるのを見て、ギリギリのタイミングで「With」の「地球」も「ほし」と読む形に変えたりもしましたね。あと、僕は1stアルバムの「Showersnow」というソロ曲で冬の歌詞を書いたんですが、同じ冬でも今回は違う捉え方ができる歌詞にしようと思っていました。「Showersnow」では雪をいいものとして書いているんですが、「With」では雪が“壁”になっているようなイメージです。

──TOMOさんの歌詞は描写が美しくて絵が浮かんでくるようなイメージがあって、この曲においてもそういった個性を感じました。例えば出だしの「届かない夢を語る煌めきが 切なく夜飾り付けた」というところからして。

TOMO 絵が浮かぶような歌詞をがんばって書こうとしてるんですが、聴いてくださる人がどう解釈してくれるんだろうと考えると書き方が難しいところもあって。皆さんの反応が楽しみでもあります。その出だしの部分は、「飾り付けた」とか、そういうひと言に冬っぽさというか、イルミネーションが背景に見えたらいいなと思いながら書きました。

YOONDONG 雪が降ってるときに早くイヤフォンで聴きたいですね。

──1人ずつ歌い継いでいくような歌割りも素敵で。ORβITの歌割りはHEECHOさんが考えていることが多いと思いますが、「With」もそうですか?

HEECHO 「With」に関してはTOMOと2人で考えましたね。

TOMO 最初に僕のほうで割り振って、HEECHOさんに「こういうふうにしようと思ってます。どうでしょうか?」と相談しました。2人でも話し合ったんですけど、バラード曲に関しては歌割りをあんまり細かく分けたくなくて。1人ひとりちゃんと思いを伝えるということを大切にしたかったんです。

HEECHO 言い方が難しいんですけど、歌声で一発で“刺す”というか。

TOMO そういう感じだったよね。この曲はサビのフレーズを1番、2番、大サビで全部同じにしているんです。最初は変えることも考えていて、候補のフレーズもいくつかあったんですけど、それぞれのメンバーが同じ言葉を言うことに意味があると思って、最終的にそうしました。