陰陽座|覇道を進み、邪魔を取り除く明王であれ

陰陽座がアニメ「バジリスク ~桜花忍法帖~」オープニングテーマ「桜花忍法帖」を含むニューアルバム「覇道明王」を6月6日にリリース。前作「迦陵頻伽」から約1年半ぶりのアルバムとなる本作は、このバンドの芯であるヘヴィメタルを高い純度で表現した作品に仕上がっている。

音楽ナタリーでは、リーダーの瞬火(B, Vo)、黒猫(Vo)、招鬼(G)、狩姦(G)にインタビューを実施。「陰陽座こそが覇道の明王であることを宣言するべきだと思った」という瞬火の意志を込めた「覇道明王」の制作プロセスを中心に、ブレることのないバンドのコンセプト、ヘヴィメタルに対する強い思いなどについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

原点回帰ではなく、原点と共に進んでいる

──瞬火さんは以前から「バンドの活動は点ではなく線で捉えている」とおっしゃっていて。ニューアルバム「覇道明王」の構成も、前作「迦陵頻伽」の制作中には決まっていたそうですね。

瞬火(B, Vo) 構想とタイトルは前作を作っているときから決めていました。ただ、その時点ではメンバーに伝えていないんですよ。僕が先々まで見ているからと言って、すべてをメンバーに伝えてしまうと、目の前のことに集中できないかもしれないので。まあ、僕が勝手に気を回しているだけなんですが。

黒猫(Vo) (笑)。

瞬火 前作「迦陵頻伽」は音楽的に幅広さがあって、全体的にメロディアスなアルバムだったんです。なので「次の作品はまったく違う肌触りにしたい」と思っていました。力強く、勢いがあるアルバムと言いますか。

──陰陽座の軸であるヘヴィメタルサウンドを前面に押し出したアルバムですよね。これは原点回帰ということでしょうか?

瞬火(B, Vo)

瞬火 いや、そうではないですね。回帰する必要があるとすれば、原点から離れていたということ。陰陽座は結成したときからコンセプトや活動理念が明確で、原点と共に進んでいるバンドだという思いがあって。今回も原点回帰にはあたらないと思います。陰陽座はヘヴィメタルの可能性を追求し、広げてきたわけですが、今回のアルバムでは自分たちの芯の部分を強調したということでしょうね。

黒猫 瞬火からアルバムのコンセプトを聞いたときは、必然と言いますか、我が意を得たりと感じました。バンドを1本の木に例えると、前作「迦陵頻伽」はいろいろな方向に伸びた枝、豊かに茂った葉などにスポットを当てたアルバムだったと思うんです。今回は太く育った根と幹、つまり根幹の部分に視点を移したということかなと。

招鬼(G) 「覇道明王」というアルバムのタイトルからして「すごいものを作ろうとしているんだな」という瞬火の気合いが伝わってきました。この題名に負けないような力強いギタープレイが必要だと思ったし、そのための心構えをして制作に臨みました。

狩姦(G) 今作のタイトルを聞いただけでもすごい力強さを感じましたし、内容もとてもハードなものになると聞いていたので、おのずとテンションが上がりました。それに見合う演奏をしなくてはいけないと気合いも入りましたね。

“覇道明王”と書いて“おんみょうざ”と読む

──瞬火さんは「いつか“覇道”という言葉をタイトルにした作品を作りたい」と思っていた?

瞬火 昔から温めていたわけではないですが、前作に取りかかった頃に「そろそろ『陰陽座こそが覇道である』と宣言しておく必要がある」と思ったんです。陰陽座は結成から19年になりますが、「自分たちがいいと思う楽曲、音楽を作る」「それをできるだけいい形で実演する」という2つのことを粛々と続けてきたバンドなんです。それこそが王道だと信じていたのですが、かなり早い段階で、それは理想論であり、いい曲を作り、いいライブをやってさえいれば生き残れるような世界ではないということに気付いて。つまり我々が王道だと思っていた道は、邪道、覇道だったということですね。覇道という言葉にはよくない意味もありますが、自分たちは「覇道を堂々と進んでいきたい。もし邪魔になるものがあれば、それを取り除く明王でありたい」と思っていて。覇道の明王=陰陽座と言いますか。

──「覇道明王」というタイトルは陰陽座そのものである、と。

瞬火 はい。“覇道明王”と書いて“おんみょうざ”と読んでもらっても構いません(笑)。

黒猫(Vo)

黒猫 今の瞬火の話はすごく腑に落ちますね。私個人も、ボーカリストとしては覇道を歩んできたなと思っているんです。ヘヴィメタルのボーカリストの王道である“パワフルでハスキー”とはまったく違う声質ですから。それを貫いてきたからこそ、今もこうやって活動が続けられていると思っていて。メンバー全員、音楽に対する姿勢にブレがないし、この4人で一緒に歩いてきたからこそ、20年近くバンドが続いているんだと思います。

瞬火 ブレない姿勢と言えば聞こえはいいですが、ここまで世の中の流れを無視しているというのは、頑固で柔軟性がないということでもあって。このやり方でよく続けて来ることができたなと。我ながら驚きですね。ありえないです。

──約20年にわたって一貫してヘヴィメタルを追求してきた、そのモチベーションはどこにあるんですか?

瞬火 そうですね……「こっちのほうがいい」「やっぱりあっちがいい」といろいろなことをやってしまうと、せっかく積み重ねてきたものが崩れるような気がするんです。これまでの自分たちを否定することにもつながりかねない。それはあまりにももったいないし、損得を考えてのブレだとしたら、それは恥ずかしいことだと思うんですよ。バンドの音楽が大きく変化したとして、リスナーに「いったい、あのときにやっていたことはなんだったんだ?」と問い詰められて「テヘ」っと笑って誤魔化さなくていいようにやりたいですよね。

黒猫狩姦招鬼 (笑)。

──でも、多くのバンドは変化していきますよね。特にヘヴィメタルという音楽の一部は90年代以降「ヘヴィロック」と呼ばれるようになり、ヒップホップ、テクノなどと融合したりと、さまざまな変化を繰り返してきました。そのことについてはどう捉えているんですか?

瞬火 そのバンドのメンバーが「今はこれが面白い。自分たちの音楽に取り込みたい」と強く思い、「新しいものを作るんだ」という信念を持ってやっているのであれば、何も誹ることはないですし、陰陽座では結成当時から果敢にヘヴィメタルの可能性を追求することを理念としていますので、むしろ新しいものに挑戦するという意味では陰陽座にとってはそれがブレないということです。ただ、売り上げ、人気が落ちたことで人目を引こうとして、「こうすれば売れるのでは」という気持ちで変化したのであれば、やはりちょっと恥ずかしいのではと思いますね。個人的には「そんなバンドいないはずだ」と信じているんです。どんなバンドも前を向いて、よりよいものを目指した結果として変化していると思うので。

──その考え方はメンバー全員が共有している?

招鬼 そうだと思います。新しい引き出しを作りたい、今までなかった要素を取り入れたいと思うことはありますが、自分のスタイルがブレたり、何をやりたいのかわからなくなることはないので。1つのところに留まることなく、信念を持って進んでいくことが大事なのかなと。

狩姦 ブレないようにしようなんて、考えたこともないです。単純にギターが好きで、陰陽座というバンドが大好きで、それに応えるギタープレイをしたいだけなので。変わったのは髪型と体形だけですね(笑)。

陰陽座「覇道明王」
2018年6月6日発売 / KING RECORDS
陰陽座「覇道明王」初回限定盤

初回限定盤
[CD+ブックレット]
※特製スリーブケース仕様
3456円 / KICS-93715

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陰陽座「覇道明王」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / KICS-3715

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収録曲
  1. 覇王(はおう)
  2. 覇邪の封印(はじゃのふういん)
  3. 以津真天(いつまで)
  4. 桜花忍法帖(覇道MIX)(おうかにんぽうちょう)
  5. 隷(しもべ)
  6. 腐蝕の王(ふしょくのおう)
  7. 一本蹈鞴(いっぽんだたら)
  8. 飯綱落とし(いづなおとし)
  9. 鉄鼠の黶(てっそのあざ)
  10. 無礼講(ぶれいこう)
初回限定盤仕様
  • カラーフォトブックレット封入

ライブ情報

陰陽座全国ツアー2018「覇道」
  • 2018年8月24日(金)
    福岡県 DRUM LOGOS
  • 2018年8月26日(日)
    佐賀県 SAGA GEILS
  • 2018年8月29日(水)
    愛媛県 WStudioRED
  • 2018年9月1日(土)
    大阪府 なんばHatch
  • 2018年9月8日(土)
    青森県 青森Quarter
  • 2018年9月11日(火)
    宮城県 Rensa
  • 2018年9月14日(金)
    北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2018年9月21日(金)
    富山県 MAIRO
  • 2018年9月23日(日・祝)
    愛知県 DIAMOND HALL
  • 2018年9月25日(火)
    岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2018年9月29日(土)
    東京都 TOKYO DOME CITY HALL
陰陽座(オンミョウザ)
1999年に大阪にて瞬火(B, Vo)、黒猫(Vo)、招鬼(G)、狩姦(G)の4人で結成。“妖怪ヘヴィメタル”というコンセプトのもと、人間のあらゆる感情を映す“妖怪”を題材とした楽曲を男女ツインボーカル&ツインギターで表現するスタイルが高い評価を集め、2001年にキングレコードよりメジャーデビューを果たす。コンスタントに楽曲をリリースしながら精力的にライブ活動を行っている。現在までに13枚のオリジナルアルバムを発表しており、2018年6月には14枚目のアルバム「覇道明王」をリリースした。