眼力があればどうにかなる

秋山　鬼束さん、初めて買ったCDはなんですか？

鬼束　「たま」です。

秋山　えっ！ たま？ おれも2番目に買ったCD、たまですよ。

鬼束　じゃあ最初に買ったのは？

秋山　「ランバダ」ですね。♪しょーらんずしふぉい……。

鬼束　「ランバダ」って日本語のもありますよね!?

秋山　♪ジーリジリと灼けつくその瞳ー。石井明美さんのカバーですね。

鬼束　歌うまいっすねー！

秋山　いや、鬼束さんに言われると思わなかったな（笑）。

鬼束　あと秋山さんがすごいのは、目にね、狂気があるんですよね。天才だなって思う。

秋山　ああ、何考えてるかわかんないってよく言われますね。でも鬼束さんも目に主張がありますよね。

鬼束　うん、眼力。

秋山　眼力あったらいろいろどうにかなりますよね。

鬼束　白目も剥けます（と白目を剥く）。

秋山　わ、なかなか白目剥くミュージシャンっていないですよね。

鬼束　♪ I am GOD'S CHILDッ！

秋山　それそんな白目剥きながら歌う曲じゃないでしょ！（笑）

ストイック＆オリジナル

秋山　このアルバムを聴いてて思ったんですけど、鬼束さんってストイックですよね。そこがいいなって。

鬼束　私は逆に秋山さんのネタこそがストイックだと思う。秋山さんはいつも完全オリジナルじゃないですか。

秋山　確かに作るときのテーマとして、ほかの何かに似てるとか、誰かが見たことあるとか、そういうものは絶対イヤですね。ちょっとでも何かに似てたらどんなに面白くてもやらないって決めてるんです。だから何か思いついたらいろんな人に「こんなの聞いたことある？」って話して。例えば「トゥトゥトゥサークル」っていうネタも……。

鬼束　♪トゥツトゥツトゥツトゥツ。

秋山　わ、鬼束さん完璧だな！ 素人がやると「トゥトゥトゥトゥ」になるのに、鬼束さん「ツ」のところ、裏（裏拍）をちゃんと言ってる。

鬼束　いや、そこがポイントですよ。

秋山　それ初めて言われたなあ。馬場ですら裏は言えてないから（笑）。

鬼束　あはは（笑）。

秋山　で、そういう新しいネタを考えたとき、最初は周りのみんな「よくわかんないな……」って言うんですよ。けど一応お客さんの前でやってみる。これ伝わんなかったら10分間地獄だなって思いながら（笑）。それでウケたときは特別うれしいですよね。

鬼束　やっぱり、私と秋山さんってなんか共通項が多い気がします。ストイックなところとか、オリジナリティを大事にして他人のものをパクらないところとか。

秋山　そうですね。でもその分すごく考えてる部分もありますよね。勢いだけじゃなく。これって新しすぎてお客さんにはウケないんじゃないかって。

鬼束　全然ありますよね。売れないんじゃないかとか。でも私は自分のオリジナリティを貫くしかないし。

秋山　それすごくわかる。これお客さんに親切じゃないかもな、とか思うでしょ？

鬼束　半々ですね。お客さんに伝えたいっていうのと、私が永遠に残したいっていう気持ちと。

秋山　確かに。残したいって思いますよね。無難にウケるものよりは、ハズしてもいいからとんでもないことやらかしたい。そういうものを残したいですね。