ONE OK ROCK|“台風の目”である覚悟

ONE OK ROCKが約2年ぶり、通算9作目となるアルバム「Eye of the Storm」を2月13日にリリースした。

前作「Ambitions」のリリース後には、日本でのドームツアーと大規模なワールドツアーを成功させた彼ら。そんな活動を経て完成した本作はパンクやラウドロックといったカテゴライズを脱し、新たなサウンドを追求した作品となっている。ONE OK ROCKの新たなターニングポイントになるであろう、“台風の目”と題された新作についてTaka(Vo)に聞いた。

取材・文 / 粉川しの

まだONE OK ROCKとして生きたい

──これまでのONE OK ROCKのサウンドやスタイルから大きく飛躍したアルバムになりましたね。

ええ。

──ほとんど別物と言ってもいいくらいの変化を感じますが。

僕たちは常にライブをやって音源を作ることを中心に13年間やってきたバンドなんですけど、その中で今回は社会人として大人になっていくような感覚があったんです。中学から高校に上がるとか、高校を卒業して大学生になるとか、そういう学生時代の成長とは違って、大人として社会に出ていく責任みたいなものを強く意識したというか。「Eye of the Storm」はそのくらい大きな変化だってことですね。

──前作「Ambitions」はONE OK ROCKがモダンロックを極めたアルバムという認識だったんですけど、今作はギターが主流のONE OK ROCKのバンドイメージ自体を大きく転換させたというか。サウンド自体はむしろ非常にシンプルですよね。バンドの音圧で攻めるタイプのアルバムではなく、プロダクションの段階でスケール感やダイナミズムを作り出している。

そうですね。

──何か転機になることが具体的にあったんですか?

ありましたね。僕らがアメリカに最初に渡った当時は、自分たちで全部やる、セルフプロデュースでやっていこうっていう感覚だったんですよね。でもその後、向こうでいろいろな交流が生まれて、多くの出会いがあったんです。そこで自分たちの音楽性を理解してくれているプロデューサーを立てて、1回アルバムを作ったんです。

──プロデューサーにジョン・フェルドマンを迎えて、初めてアメリカでレコーディングした「35xxxv」(2015年2月発売)ですね。

はい。でも、前作の「Ambitions」から向こうのレーベルのFueled by Ramenとしっかり契約してリリースしていくことになったので……それがやっぱり大きかった。日本を中心にやっている分には自分たちの思う通りにやればよかったんですけど、アメリカで契約して、アメリカを拠点にバンドとしてリリースしていくことになったので。そうすると当然現地のレーベルからの意見も入ってきますよね。でも、最初は彼らがONE OK ROCKに求めてくるものが理解できないことがあって。

──「Ambitions」で初めてアメリカ市場と真正面から向き合って、そこでジレンマを感じたと。

ええ。

──じゃあ、「Eye of the Storm」に通底する突き抜けた感覚は、そんなジレンマを乗り越えたからこそなんでしょうか?

だと思います。外部からの客観的な意見を受け入れられるようになって、それによって今までとは違うサウンドになった。もちろん、アメリカに行ったときから、ONE OK ROCKは恐らく変わっていくだろうっていうことは承知してたんですよ。ただ、今回は本当に……それぞれONE OK ROCKとして生きていくのか、それとも一個人として音楽が好きな人間として生きていきたいのかっていう、そういうギリギリのラインに自分たちは立っていると感じたんです。

──決断が必要だったと。

それで目の前の選択を迫られたとき、僕はまだONE OK ROCKとして、音楽人として生きていきたいって思ったんです。

ONE OK ROCK「ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018」大阪・大阪城ホール公演の様子。(撮影:浜野カズシ)

ONE OK ROCK「ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018」大阪・大阪城ホール公演の様子。(撮影:浜野カズシ)

「郷に入っては郷に従え」「なるようになってしまえ」

──今作もアメリカレコーディングですよね。

前作から続いてロサンゼルスと、あと今回はイギリスでもやりました。

──具体的な新作の作業はいつ頃からスタートしたんですか?

実は「Ambitions」のワールドツアーが始まったのと同じタイミングで作り始めてはいたんです。でも、あのツアーは1年くらい回っていて、確かライブの回数としても100本くらいやったんじゃないかな。その間に3カ月くらいどうにか時間を作って。そこから中断して、延びて延びてここまできたから。実際の日数でいうと1年もかかっていないんですけど、ツアーをやりながらアルバムを作るとなると、どうしても時間がかかってしまうんです。そこが自分的には苦しいところです。

──じゃあ、根詰めてやれたのはこの1年弱くらい?

そうですね。実質は去年からかな。

──スタッフクレジットを見せてもらいましたけど、今回もプロデューサーやコラボレーターにすごいメンツがそろっていますね。人選はTakaさんのチョイス?

レーベルのA&Rの提案で。「この人どう?」って紹介されて。

──そうすると初めて会って、セッションしながら相性を探っていく形に?

はい。正直ね、わかっているんですよ。自分たちのことを理解してる人とやったら自分の思うようなサウンドを作ることができるっていうのは。でもそれって日本で散々やってきたことなので。今、僕らに必要なことって、“わかっていること”をやることじゃないんですよ。“わからないこと”が必要なんです。少なくとも、やってみないとわからないことをやるっていう。そのスタンスが大事だなと思っているんです。だからもう今回は郷に入っては郷に従え。悪く言うと、なるようになってしまえみたいな(笑)。

──(笑)。

でも、その中で毎回確実に得られるものがあるんですよね。

──例えば?

なんだろう……セッションのやり方とかですかね。やっぱり前回はいきなりプロデューサーに引き合わされて、いきなりやれって言われても具合がわからなくて戸惑ったんですけど、今回はそこを乗り越えられたと思います。