岡本信彦|カオス全開!濃厚な“Chaosix”の世界

ようやく念願が叶った

──そしてミニアルバムのラストに収録されているのが「キミとなら」です。

この曲の作詞・作曲は、僕の大好きなNEWSの「生きろ」という曲を手がけているヒロイズムさんにお願いしました。2、3年ぐらい前からずっとお願いしたいと思っていたので、「Overture」のCHI-MEYさん同様、ようやく念願が叶った感じで。ものすごくキャッチーな素晴らしい曲を聴いた瞬間、やっぱり天才だと思いました(笑)。

──耳馴染みのいいメロディが印象的ですよね。

そうなんです。メロディラインがすごくキレイで、しかも何度も同じメロディラインが出てくるから聴いていると頭にどんどん刻み付けられていくという。そこがこの曲の持つキャッチーさの理由だと思います。さわやかなラブソングというオーダーをさせてもらっていたので、もっとキラキラした曲になるかなって予想をしていたんですけど、わりともの悲しい雰囲気を持った仕上がりになっているところもすごく気に入ったところで。「ヒロイズムさんにお願いするとこういう雰囲気になるんだ!」という驚きがありました。明るいだけではない切なさを感じさせる世界観、その大人っぽさにはオシャレだなという印象も受けましたね。

──僕個人としてはこの曲のMVも観てみたいなと思いました。

そうですよねえ。僕やスタッフの間では「2人いるパズル」で大人っぽいMVを作ろうかみたいな話を当初していたこともあったので、ホントにどれが選ばれてもおかしくなかったんだと思います。みんなきっとめちゃくちゃ迷ったんだろうなあ(笑)。

中二病っぽい要素をふんだんに込めました

──ミニアルバムにはあと3曲が収録されています。それらもかなりカラフルで面白い仕上がりになっていますよね。

「Chaosix」通常盤ジャケット

そうなんですよ! 2曲目の「Extremes World」は、パークミュージックをコンセプトにしたミニアルバム「Parading」からの流れにある曲です。ディズニーランドで行われたショーにインスパイアされた内容になっていますね。1番と2番で順番に天使と悪魔が登場して、違ったメロディをそれぞれが歌い、最後には両者が戦い合うようにミックスされていくという構成です。

──天使と悪魔を演じ分けている岡本さんのボーカルに注目ですよね。

この曲はライブでこそ世界観がしっかり伝わる曲だと思っていて。天使と悪魔、それぞれに踊りを用意して、最後のサビではどちらか好きなほうをお客さんにも踊ってもらえたらいいなというアイデアもあったりするので、いつか実現できたらいいなと思っていますね。音源だと声が混ざり合ってわけがわからない……それこそカオスな感じになっていますけど(笑)、ある意味、声優という本業に近しい部分を表現できる曲はやっぱり楽しいです。

──3曲目には「恋のエール」という曲が収録されています。

毎回ミニアルバムを作るときには、プロデューサーがいいと思う曲を入れるようにしているんです。作品が自分の嗜好だけになっちゃうよりは、チームとしてオススメできる曲も入れた方がいいかなという判断で。今回に関してはそれが「恋のエール」だったんです。こういったミディアムテンポの楽曲が入ることで作品全体のバランスもよくなるし、この曲自体も、他の曲もより映えるんじゃないかなという。

──サウンド的にもメッセージ的にもちょっとホッとできる曲ではありますよね。

そうそう。濃いとんこつ醤油のラーメンを食べてる中、箸休め的な感覚であっさりしたそばや素麺を食べるみたいな感覚で(笑)。こういった曲を好きな方もきっと多いと思うし。

──ちなみに岡本さんの嗜好だけでアルバムを作ると、濃厚でカオスな曲ばかりになってしまう可能性もあるわけですか?

まさにその通りです。怖いですよねえ(笑)。僕の中の好きなアーティストのトップにいるのはSound HorizonやLinked Horizonですから。どうしても趣味全開になってしまうんですよね(笑)。

──そしてもう1曲、「Game」というナンバーが収録されています。ハードロック的な世界観を持った、これまた濃密な1曲です。岡本さんが作詞をされていますね。

過去にアニソンチックな曲をまとめたミニアルバムを出したことがあったんですけど、その流れを汲んだものを今回も1曲入れようと思ったんです。曲自体は柿原さんと作った「Dear chooser」(ミニアルバム「trust and play」収録曲)と同時期に作ったもので。ちょっとビジュアル系にも近いテイストを持った曲ではありますが、歌詞は一応ラブソングとして書かせてもらいました。

──タイトル通り、ゲームの世界を想起させるファンタジー要素のある歌詞になっていますよね。こういった内容はどうやって思い浮かぶんですか?

僕の場合はとにかく曲を聴いて、そこから想像を膨らませていく感じです。「Game」の場合は「負けられない」という言葉が最初に出てきたので、「これはバトルの曲でしょ」みたいな。で、「じゃあ何と戦うの?」「人生かな」という。その発想を元に世界観を構築していきましたね。僕の中にある中二病っぽい要素をふんだんに込めました(笑)。

書きたいことの方向性が定まってきた

──「Extremes World」や「Game」のように過去のミニアルバムのコンセプトをまとった楽曲が収録されたという意味では、8年間のアーティスト活動を振り返りつつ、最新の岡本さんを表現した作品でもあるような気がしますよね。

ああ、確かにそうですね。全体としてのコンセプトを設けなかったことで、これまでの集大成的な意味合いを持った作品になったのかもしれないです。今まで培ってきたものをもう一度見つめ直したというか。

──ご自身の中で8年分の成長を実感するところはありますか?

どうですかねえ。歌詞に関しては自分として書きたいことの方向性が定まってきたような気がします。“人間は1人じゃ生きていけない”“人生は楽しんだもん勝ちだ”という一貫したテーマを、いろんな世界観の中で表現していく。そこが明確になってきたのはやっぱり応援してくれるファンの人たちがいてくれるからこそ。ただ、自分をアーティストとはまだ呼びづらいんですよ。この8年で手に入れた技術はもちろんたくさんあるけど、歌の表現に関してはまだまだだと思うから、アーティストではなくエンタテイナーとしての自分を提示しているところはあって。声優としてのスキルを突き詰めていきながら、それを音楽活動にもしっかり落とし込んでいくことで、自分にしかできないアーティスト像を生み出していくことを目標にして、ここからもがんばっていこうと思います。