岡本信彦|カオス全開!濃厚な“Chaosix”の世界

声優の岡本信彦が1月27日に6枚目のミニアルバム「Chaosix」をリリースする。

ミニアルバムを制作するにあたって、岡本はYouTube上で本作のリード曲をファン投票で決めるという企画を実施。ミニアルバムにはそこで決定したリード曲「Overture」をはじめ、リード候補曲であった「2人いるパズル」「キミとなら」など、「Chaosix」という作品タイトル通りの多種多様な6曲が収録されている。

音楽ナタリーでは岡本に初のインタビューを実施。ミニアルバムの制作にまつわるエピソードから、アーティストデビュー8周年を迎えた今の心境まで、じっくりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき

タイトルは毎回造語

──岡本さんはアーティストデビュー以来ミニアルバムを多数リリースされていて、今作「Chaosix」で6枚目になります。そこにはこだわりがあるんですか?

いや、こだわりはそれほどないんですが、柿原(徹也)さんとのコラボCD「trust and play」(2020年4月発売)では、お互いのいろんな個性を見せるために3曲ずつ出し合えるミニアルバムという形態を意識的に選んだりはしました。

──シングルよりも収録曲の多いミニアルバムは、1枚としてのストーリーを描きやすいのかなと思ったりもするのですが。

ああ、そうですね。自分なりの方向性を決めたうえで、コンペで曲を選んでいくことが多いので、確かにミニアルバムのボリューム感がちょうどいいところはあると思います。あと僕が感じているミニアルバムのよさというのは、タイトルを自由に付けられるところで。シングルだとリード曲がそのままCDのタイトルになるけど、ミニアルバムだとそうじゃなくてもいいという。

──なるほど。タイトルには毎回こだわられている印象があります。

2ndミニアルバム「Enjoy☆Full」のときから、ミニアルバムのタイトルは造語にしようって決めてますね。ただ、造語にしたことによってCDショップの方とか購入してくださるファンの方々はけっこう大変みたいで。どう読んでいいかわからないらしいんです(笑)。3枚目の「Parading」は“パレーディング”と読むんですけど、“パラディン”って読まれてる方がけっこういたりとか。4枚目の「Questory」も皆さん悩んだみたいです。正解は“クエストーリー”なんですけど。そういう部分では多少ご迷惑をおかけしていますが(笑)、でも「これってどう読むんだろうね?」って話し合ったりするのも楽しいかなと思うところもあって。造語のタイトルがファンの方々のコミュニケーションのきっかけになったら僕としてはうれしいです。

──では、今回の「Chaosix」の読みは?

カオスな曲たちを集めた6枚目のミニアルバムということで、“カオシックス”です。“チャオシックス”と読まれている方もいらっしゃるみたいですけど、実は“Chao”という挨拶の意味合いも含めてはいるので、それもあながち間違いではないです(笑)。

投票で決めたリード曲

──ミニアルバムは毎回コンセプトを定めて制作されるそうですが、今回はどうだったんですか?

「Chaosix」豪華盤ジャケット

今回は明確なコンセプトはないんですよ。全体としての方向性を決めるというよりは、ちょっと新しい試みをやってみたい気持ちのほうが大きかったというか。それがYouTube上で行った投票でリード曲を決めるということなんですけど。

──ミニアルバム収録の3曲を先行公開して、そこからリード曲を選んでもらおうという企画ですよね。ファンの間ではかなり話題になっていました。

今さらですけど、「時代はYouTubeだ」みたいな(笑)。あと、Kiramune公式チャンネルを盛り上げられたらいいなという狙いもあったので、僕から企画を発案させてもらいました。「Overture」「2人いるパズル」「キミとなら」の3曲を提示して、「リードにするならどれ?」「どの曲のミュージックビデオを観てみたい?」という視点で投票してもらった結果、「Overture」が選ばれました。「2人いるパズル」は僕が作詞をしていますけど、そのことは明かしていなかったので、皆さん余計な先入観なくそれぞれの楽曲に向き合ってくれたんだと思います。

──投票結果に関して、ご自身ではどう感じていますか?

3曲ともリードにすることをめがけて作った曲ではあったので、どれが選ばれてもおかしくないなという気持ちはありました。ただ、結果が出た今になってみると、「Overture」は選ばれるべくして選ばれたような気もします。もともとは「2人いるパズル」と「キミとなら」の2曲から選んでもらう予定だったんですけど、「Overture」の仕上がりがものすごくいいものになったので、急遽候補曲に加えたという経緯があったんです。なので、僕らとしても思い入れがすごく強い曲だったんですよね。それに、実際はかなりカオスな曲ではあるんですけど、パッと聴いたときの印象は僕の王道的なポップな雰囲気を持っていたりもする。1stミニアルバムに収録されていた「未来スケッチ」の雰囲気に似ているというコメントがあったりもしたので、そういった部分がファンの方々の心にヒットしたのかもしれないです。

──どれもいい曲だから選ぶのが大変だったという声も多かったですよね。

そうそう。そういう感想を持ってくれたのがすごくうれしかったです。どれも気に入ってくれたうえで、ある意味、冷静に判断してくれたところもあったんだろうなって。こういった企画はファンの方との距離感が近く感じられるのもいいですよね。初めてのことでしたけど、やってみてよかったなって。

王道だけどカオス

──まずはリード候補になっていた3曲について話を伺いましょう。ミニアルバムのオープニングを飾るのがリード曲となった「Overture」です。

僕は昔から嵐の「Monster」という曲が大好きで、その作曲をされていたCHI-MEYさんにずっと曲提供をお願いしたいなと思っていたんです。それが今回、ようやく実現した形ですね。こちらからの要望をすべて汲み取って、想像以上のものに仕上げてくださったので、本当に天才なんだなと思いました。内容的にはさっきも言いましたけど、サビだけ聴くと僕の王道的な雰囲気があるんです。でも、全体としては一番カオスで面白い曲になっていて。

──構成がくるくる変わっていきますからね。

そうなんです。イントロに入っているオーケストラのチューニング音はそこだけにしか出てこないものだし、2Aで急にラップになりますし、Dメロでは合唱みたいになりますからね。ふんだんに転調もしまくりますし。これはもう王道に見せかけたトリッキーな曲です(笑)。それにも関わらず、くどくなく聴きやすい仕上がりになっている。見事なバランスでまとめられているところがもう、さすがのひと言です。しかも歌ってみると、自分の声にめちゃくちゃマッチするんですよ。それにもびっくりしました。

──歌いこなすのが大変そうな曲ですけどね。

確かにそうですよね。ラップ部分なんかは最初なかなかうまく歌えなくて。でも何度もやっていくうちに、ノリを大事にすれば自由にやっていいんだなということに気付いたんです。アタックを強めに歌っていくことで、ちゃんとサウンドに合わせた表現ができたと思います。ほかの部分に関しても、歌い慣れていくうちに口が馴染んでいった感じでした。

ミュージカルチックな世界観

──「2人いるパズル」は岡本さんが作詞を手がけたラブソングです。

2019年7月に出した「奇跡の軌跡」というシングルを作っていたときに、実はこの曲がもうあったんですよ。リードになり得るカッコいい曲に仕上がったので、今回のタイミングまで温めていたという。歌詞に関しては、当時「グレイテスト・ショーマン」という映画にハマっていたこともあって、ミュージカルチックな世界観を意識して書いていきました。僕の場合、ネガティブな歌詞はあまり書かないタイプなんですけど、この曲ではちょっと悲しい雰囲気にもなっていて。そこもまた、悲劇のエッセンスによってドラマチックに展開していく「グレイテスト・ショーマン」からの影響だと思います(笑)。

──この曲をはじめ、今回のミニアルバムはライブが楽しみになる曲が多いですよね。

そうですね。今はコロナの影響でライブがなかなかできない状況ですけど、いつか今まで通りの状態でできるようになったら……ということを考えながら作っていった曲ばかりです。「2人いるパズル」のサビはみんなにも一緒に歌ってほしい雰囲気にもなっていますし。あと、Dメロの「やだよ やだよ 君がほしいよ」のところは、CDではメロディ通りに歌っていますけど、ライブであればセリフにしてもいいんじゃないかなと思ったりもしていますね。気持ちが入りすぎて思わずセリフになってしまうという、ミュージカルあるあるな感じで。