オーイシマサヨシ|「コップクラフト」OPに散りばめられたオマージュの数々を明かす

オーイシマサヨシがニューシングル「楽園都市」をリリースした。このシングルの表題曲はテレビアニメ「コップクラフト」のオープニングテーマ。カップリングにはYouTubeで配信中のアニメ「モンスターストライク ~ノア 方舟の救世主~」の主題歌「Hero」と、同アニメの挿入歌「Departure」が収められている。

音楽ナタリーでは今回、彼が自ら作詞・作曲・編曲を手がけた「楽園都市」(編曲のみ扇谷研人と共同クレジット)についての話題を中心に、オーイシにインタビューを実施。作家として、そしてボーカリストとしての彼の特性についてたっぷりと語ってもらった。そして、多忙を極める中でもうすぐ40歳を迎えるオーイシに今後についての話を聞くと、彼の口から意外な言葉が語られた。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 永峰拓也

昭和歌謡をオシャレなトラックでパッケージ

──ニューシングルの表題曲「楽園都市」はアーバンなラテンジャズでありながら、そこはかとなく昭和歌謡感が漂う、不思議なバランスで成り立っている曲ですね。

ありがとうございます。自分でも、ジャジーで展開もめまぐるしい、だけど乗ってるメロディはそういう懐かしさがあるみたいな、いいバランスで作れたかなと。

──なおかつ、アニメ「コップクラフト」のオープニングテーマとしてもハマっています。

そう言ってもらえるとうれしいです。曲を書くにあたって原作小説を拝読して、なおかつ脚本をはじめアニメ用の資料も可能な限り目を通させてもらいまして。実は原作はアニメ版よりもダークで、テレビで放送したら倫理的にマズそうな残酷な描写もあったりするんですよ。だから、もしかすると「楽園都市」は原作を知っている人には「ちょっとポップすぎないか?」という印象を与えるかもしれないんですけど、アニメの主題歌としてはむしろこのくらいポップなほうがどっしり構えられるんじゃないかなって。

──僕は恥ずかしながら原作未読なのですが、アニメを拝見するに「コップクラフト」は1980年代のアメリカの刑事ドラマのお約束を踏襲している?

そうそう。導入のナレーションとかもそうですし。

──主人公のケイ・マトバが乗っている車のナンバープレートが「ZAQ-178」なのも、ドラマ「特捜刑事マイアミ・バイス」のオマージュ(同作の主人公、ソニー・クロケット刑事の愛車である黒のデイトナ・スパイダーのナンバープレートと同じ)ですよね。

よくお気付きで。原作者の賀東招二先生も「マイアミ・バイス」が大好きだと伺ってます。

──あのベタを踏んでいく感じと、「楽園都市」の昭和感がシンクロしているというか、楽曲でもベタを踏んでいるのかなって。

うんうん。それは思いっきり狙ってましたね。まあ、言っちゃっていいのかわかんないですけど、昔のジャニーズ感とか、あるいは郷ひろみさんっぽさとか。

──僕は「お嫁サンバ」や「セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)」が脳裏に浮かびました。

そうですね。ああいう昭和のお茶の間を賑わせた歌謡曲って、今となってはすごくビンテージな響き方をするなと思っていて。今回はそれをおしゃれなトラックでパッケージしたらどうなるかなというトライアルでもあったんです。実はそこに至った経緯みたいなものもあって、「コップクラフト」の作中で、異世界からやって来たティラナという女の子が主人公の相棒になるんですけど、彼女がファルバーニ語という異世界の言葉をしゃべるんですよ。その言葉の響きがどこかラテン語っぽい感じがして。

──なるほど。

そのへんから着想を得つつ、物語の舞台であるサンテレサ市という街が、異世界人を含む多民族、多文化がごちゃ混ぜになってるんですよ。そういう雰囲気にもラテン音楽は合うんじゃないかなと。で、僕の音楽の師匠である扇谷研人さんがオルケスタ・デ・ラ・ルスというラテンのバンドに所属してらしたので、「師匠に相談したら一発でしょ!」と、扇谷さんを引き込んで一緒にアレンジをしていただいたんです。

オーイシマサヨシ

インストバージョンも聴いてほしい

──そのアレンジも洒落ていますよね。

例えばブラスのラインとかは、ほぼほぼ自分で作ったんですけど、そこにより玄人っぽいテイストを扇谷さんに足していただく感じで。なおかつ、レコーディングに参加していただいたミュージシャンの皆さんの演奏も素晴らしくて、ピアノやベース、ドラムそれぞれの楽器単体でも聴き応え十分なんですよ。

──僕は個人的にトロンボーンが大好きなんですけど、間奏でのソロが……。

めっちゃカッコいいですね。トロンボーンソロであれをやられちゃうと「ズキュン!」ってなりますよね。同様にトランペットソロも最高で、どちらもその場で吹いていただいたんですけど、こちらの期待以上の演奏をしてくださいました。

──あるいは2番のBメロやDメロでドラムがジャングルビートになっていたり。

あれも自分で「こういうのどうですか?」ってドラマーさんに提案したんです。いつもお願いしてるドラマーさんで、普段だったら1時間弱ぐらいで録り終えるんですけど、今回は倍近く時間をかけてもらいまして。ほかのミュージシャンの方々にしても「難易度高いね」とおっしゃりながら、じっくり録っていただいたので、ものすごい助かりました。

オーイシマサヨシ

──ボーカリストのオーイシさんを目の前にしてちょっと言いづらいのですが、インストバージョンも……。

ああもう、ぜひぜひ聴いていただきたいです。別にテクニックを売りにしているわけじゃないですけど、トラックはものすごい難しいことをしてるし、インストとしての面白みもあるので。歌モノというだけじゃない、音楽的な何かも感じてもらえたらうれしいですね。