「楽園都市」は絶対カラオケ映えする
──先ほどミュージシャンの演奏のレコーディングに時間をかけたとおっしゃっていましたが、ご自身のボーカル録りに関しては?
めっちゃ楽しかったですね。コーラスがたくさんあったので分量的には大変だったんですけど、メインボーカルのレコーディングはサクッと終わりました。すでにライブ(オーイシマサヨシ「仮歌ワンマンツアー2019」)でも歌っていますけどやっぱり楽しいですし、言ってしまえばカラオケ映えする曲なんじゃないかと思っていて。
──カラオケの字幕が似合いそうな曲でもありますね。
ああ、確かに!(笑) 自画自賛になってしまうんですけど、やっぱりメロがすごくキャッチーでなぞりやすいので、男子が歌うと絶対に気持ちいいはずなんですよ。そういう音符の並べ方をしましたし、実際歌ってみたらわかると思います。
──ちなみに、コーラスをたくさん入れた意図は?
アレンジの段階でちょっとラテン要素が強すぎて、なんか昼ドラっぽくなっちゃったんです。家族のドタバタ喜劇みたいな、軽い感じに。やっぱりラテンは暑い国の陽気な音楽なので、今回はそういう夏っぽさを夜っぽさに持っていく必要があったというか。「コップクラフト」という作品に漂うおどろおどろしいニュアンスを出すための足し算を、コーラスワークで行いました。
──一方のメインボーカルは、ちょっとクセがありますね。
そうですね。がなり声というか、僕はダメージボイスと呼んでますけど、それを随所に入れつつ、昭和歌謡的な、いわゆるコブシを回す歌い方をあえてしてます。例えば桑田佳祐さんだったり、僕が大好きな日本のボーカリストさんたちへのオマージュも節々に潜ませていますね。
──「楽園都市」も令和のポップスとして残ってほしいですね。
まだ始まったばっかりじゃないですか(笑)。いや、僕としてもいいポップスができたという手応えはあるんですけど、まずはアニソンとして、この曲を通じて「コップクラフト」という作品の面白さが伝わったらいいなと。「コップクラフト」には「もしもベタなバディモノの相棒が異世界の少女だったら」みたいな面白さもありますけど、作品の本質はハードボイルドに展開していく刑事ドラマだったりするので。ひょっとしたら異世界モノがあふれ返る昨今、「コップクラフト」を「また異世界モノか……」とスルーされる方もいらっしゃるかもしれない。
──でも、「コップクラフト」は別に主人公が異世界に転生するお話でもないですし。
そうそう。もっと言うと「楽園都市」に関しても、オマージュが悪目立ちしちゃうんじゃないかという危惧も実はあるんですけど、騙されたと思ってフルコーラス聴いていただけると、どれくらい手の込んだことをやってるかがわかると思います。
オーイシマサヨシのボーカルは聴き取りやすい
──カップリングの「Hero」はアニメ「モンスターストライク」の新シリーズ「ノア 方舟の救世主」の主題歌で、ストレートなロックナンバーですね。
はい。「Hero」は作詞も作曲もアレンジも別の方がなさっていて、つまり僕は歌唱だけなので、楽曲の色味も「楽園都市」とはかなり変わったものになりましたね。歌詞の内容的にはずばり「モンストアニメ」の世界観を歌っていて、楽曲もラウドロック的で、いい意味でのイナタさもあって、シンプルにカッコいい曲です。実際、アニメの絵が付いた状態で視聴するとヒーローを盛り上げてる感がすごくて、ちゃんとしてるなあって(笑)。
──ご自身で作詞・作曲・編曲をなさる方が、ほかの作家さんが手がけた曲を歌うのって、どういう気持ちなんですか?
単純に楽しいです。用意された曲に対して、自分がボーカリスト単体として「どう料理しようかな」みたいな、そういうチャレンジでもあるので発見もありますし。ちなみに「Hero」を作詞した園田(健太郎)くんは「Hands」(オーイシの3rdシングル表題曲で、特撮ドラマ「ウルトラマンR/B」オープニングテーマ)を作ってくれた、僕もよく知っている信頼できる作家なので何の心配もなかったです。
──「Hero」のボーカルも、先ほどおっしゃったダメージボイスが軸になっていますね。
そうですね。普通にきれいな声を聴かせるよりも、ダメージボイスを収録することに特化したというか、「Hero」のほうがよりがなってる感じはありますね。昔、バンド時代にある方に言われたんですけど、僕のボーカルのいいところは言葉が聴き取りやすいところだって。
──いわゆる声優アーティストのような?
いや、声優さんといえどもやっぱり歌になるとけっこう言葉が不明瞭になってしまうこともあるんですよ。でも、なぜか僕はどんな曲でも何を歌っているかわかりやすいらしくて、「それが武器だよね」と言ってもらえたんです。「Hero」にしても、どんだけボーカルにダメージを与えても歌詞を聴き取れちゃうんだぞっていう、限界にチャレンジした感じはありますね。それでいて、特にこういうラウドロック系の曲は、むしろ日本語に聞こえないように歌うことで生まれる響きのカッコよさもあると思うので、そこのバランスも自分で調整しながら。そういうことは実はOxTでもやってたりするんですけど、ソロ名義でここまでトライしたのは初めてかもしれません。
40歳の誕生日にアニソンをやめる?
──オーイシさんは、漢字の“大石昌良”とは別に、2014年にカタカナの“オーイシマサヨシ”という人格を獲得されました。それから5年が経ちますが、何か変化はあります?
なんか、仕事が増えてよかったですね(笑)。最近、MCの仕事とかもさせていただくことが多くなってきたんですけど、やっぱり歌手以外の役割を期待されることが、うれしい反面、不思議なんですよね。
──MC、向いてらっしゃると思いますけど。
いや、僕は屋号というか、キャッチフレーズとして「アニソン界のおしゃべりクソメガネ」を自称しているだけなので、しゃべれる体を装っている、あるいはしゃべらざるを得ないだけの話なんですよ。バンド時代はMCがヘタクソすぎて「お前はしゃべるな」ってメンバーに怒られてたぐらい口下手だったんです。でも、どうにかしてアニソンファンの方々を楽しませたいという一心でそのキャッチフレーズのもと活動していたら、いろんな仕事をいただけるようになって。こんなふうになるとは5年前は思ってもみなかったですね。
──“オーイシマサヨシ”に“大石昌良”が侵食されるようなことはあるんですか?
双方あるんじゃないですかね。やっぱり“大石昌良”はミュージシャンシップに則って良質なJ-POPを届けていくと共に、テクニカルな弾き語りのスタイルを追求しているので、楽器をやられてる方がライブを観に来てくださるパターンが多いんですよ。片や“オーイシマサヨシ”はエンタメに特化してるので、ライブも「来たい人はみんな来て、みんなで笑って楽しもうよ」みたいなノリだと思うんですね。でもそういうエンタメ精神が“大石昌良”にフィードバックしてる部分もありますし、逆に“大石昌良”がいろんなミュージシャンの方々とセッションしたり対バンしたりすることによって、“オーイシマサヨシ”が「あ、俺はちゃんとミュージシャンなんだな」って背筋を伸ばしたりできるという。
──お互いにいい影響を与えあっている?
まあ、そうですね。ただ、カタカナの“オーイシマサヨシ”は副業的に始めたので、やっぱり漢字の、シンガーソングライターとしての“大石昌良”が自分の芯であることは変わってないし……僕ね、ぶっちゃけた話をすると、5年前、35歳で“オーイシマサヨシ”を立ち上げたときにこう言っていたんです。「40歳の誕生日にアニソンやめる!」と。
──ええー。
「それまでは死ぬ気でがんばる」という前提でね。で、来年早々、1月5日に40歳の誕生日を迎えるんですけど、どうしよっかな(笑)。
──それ書いていいんですか? 「どうしよっかな(笑)」で記事が終わっても?
余韻を残してね。もしかしたら「楽園都市」が、“オーイシマサヨシ”として最後のリリースになるかもしれない。
──マジですか。じゃあ、みんな買わなきゃ!
そう!
公演情報
- オーイシマサヨシ「楽園都市」リリースイベント
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2019年8月24日(土)大阪府 あべのキューズモール 3F スカイコート
START 14:30 -
2019年8月25日(日)東京都 ダイバーシティ東京プラザ
[1部]START 13:00
[2部]START 15:00
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2019年8月24日(土)大阪府 あべのキューズモール 3F スカイコート