「石川さゆりさんの次に沢城みゆき？ そんなことありうる？」

──最新アレンジへと進化した「ルパン三世のテーマ」（「LUPIN TROIS 2018 <ルパントロワ 2018> 」）を収録した「ルパン三世 PART5」のオリジナルサウンドトラック「LUPIN THE THIRD PART V～SI BON! SI BON!」が、いよいよリリースされます。今回、沢城さんはゲストボーカルとして、アニメのエンディングテーマ「セーヌの風に...（Adieu）」など3曲に参加されていますが、これはどういうきっかけだったんでしょうか。

大野　これまでエンディングテーマはずっとプロの歌い手でやってきたけど、今回はフランスからストーリーが始まるし、ちょっと力みを抜いた雰囲気のものがいいと思って。これはもう沢城さんにお願いしたいと。

──沢城さんはお話を聞いてどのように思われましたか？

沢城　「あの……無理です無理です！」って（笑）。それこそ大野先生がプロデュースされたFujikochansのアルバム（「introducing Fujikochans with Yuji Ohno ＆ Friends」）が大好きでずっと聴いていたので「なぜ皆さんがいらっしゃるのに私が？」っていう大きいクエスチョンが頭の中に浮かんで。でもお話を伺うと「今回は本職の歌い手じゃない人がいい」ということだったので、「それでよろしいんでしたらやってみますけど……本当にできるんですかねえ」ってずっと言ってた感じですね。「石川さゆりさんの次に沢城みゆき？ そんなことありうる？」と思いながら（笑）。

──今回の「セーヌの風に...（Adieu）」もエンディングにぴったりな楽曲です。レコーディングの際、大野先生はどういうアドバイスをされたんですか？

大野　ちゃんと歌わなくていいよって言っていたね（笑）。

沢城　最初の打ち合わせのときに「峰不二子ということにしばられるくらいだったら、のびのびやってくれ」と言われたんです。私と不二子さんではキーがずいぶん違うし、そもそも実態がある女の人ではない。だったら普段いろんな不二子さんを演じるように歌えば成立するなと思ったんです。アフレコのときも監督によって“俺の不二子像”がそれぞれおありになって、クールな印象を持っている方もいれば、かわいければかわいいほうがいいという方もいらっしゃるように、「シボン！シボン！」は可愛らしく、「セーヌの風に...（Adieu）」はぐっと大人っぽく。不二子さんを演じるときの沢城みゆきとなんら大差はないという感じですね。

大野　不二子のような、沢城さんのような。アバウトイコールだよ。

沢城　役だったら「その人だったらきっとこう」っていうことは得意なんですけど、私にスポットを当てられても、とてもじゃないけど自分では「夜明けが来ても帰らないで」とは歌えない（笑）。でも不二子さんだと思うと、別ですね。

「早く家に帰りたいな」くらいのテンションで

──エンディングテーマだけでなく、「シボン！シボン！」「ナイショdeクラリ」の2曲も沢城さんを迎えた楽曲なのはどうしてですか？

大野　最初は1曲のつもりだったけど歌ってもらったらすごくよかったので、「これは何とかあと2曲歌ってもらうことができないか」と思って（笑）。そんで、書いちゃったってわけ。

────「セーヌの風に...（Adieu）」「シボン！シボン！」「ナイショdeクラリ」、それぞれイメージの違う楽曲がそろいました。

沢城　見事に印象が全然違いますよね。

大野　沢城さんがやってる不二子のトーンで歌えば、フレンチに合うと思ったの。それはたぶんイタリアでもないんだ。僕のイメージで言うと。

沢城　へー！ じゃあ、ラッキーなタイミングでしたね。

大野　しかも、やたらキャピキャピ明るいとかでもない。

沢城　それ一度も通信簿に書かれたことないですもん（笑）。

大野　なおかつ彼女はこれまでいろいろ歌を歌っているわけで、それも当然聴いて。「ああ、こんなのやってんだ」と思って。すごいよね、全然違うんだもん。どれを聴いても。

沢城　キャラソンですからね。

大野　「なるほど、こういう感じなんだ」と思って。あとはもう勝手にアバウトイコールで書いていったわけ。

──沢城さんはフランスにどんな印象をお持ちでしたか？

沢城　私の中のフランスって、「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマがカヒミ・カリィさん（「ハミングがきこえる」）だったなってことぐらいしかなくて（笑）。なので、あんなふうに歌うのかなと思ってました。レコーディング中、大野先生は「『早く家に帰りたいな』くらいのテンションでいいんだよ」とおっしゃっていて。

大野　よく僕が言うのは「がんばって歌うんじゃなくて、『もう嫌だな』と思いながら座って歌ってるようなイメージ」ね。もちろん立ったままでいいんだけど。

沢城　力を抜くのって難しかったです。

大野　ボサノバの弾き語りで立ってギター弾きながら歌っている人を見たことない。必ず座ってるでしょ。あれはビジュアル的な理由もあるけど、座って歌うことに意味があるの。要するにがんばらない。ボサノバはがんばったらおしまいなの（笑）。ギターの人も、歌う人も「早く家に帰りたいな」「もう嫌だ」って感じじゃない？　

沢城　たぶんその感じが1番出せたのは「ナイショdeクラリ」ですね。一番、座った雰囲気でできたと言うか。歌詞としては帰りたくないような帰りたいような不思議な歌詞ですけど。「セーヌの風に...（Adieu）」は男の人に対してちょっと緊張感のある関係なので……スツールぐらいですかね？ 座り方としては（笑）。