音響監督が追いつかないほどに作曲する大野雄二

──同時発売でインストゥルメンタル楽曲を中心とした2枚組アルバム「THE OTHER SIDE OF LUPIN THE THIRD PART V～FRENCH」もリリースされます。今回、大野先生は「PART5」用におよそ180曲書き下ろされたそうですね。

大野　実際に頼まれたのは35曲だけど、自分なりにこういうのもあったほうがいいだろうと思ってメロディ1個に対して曲を3パターンぐらい作るわけ。テンポ違いとかね。「こういう感じの曲をお願いします」っていう1個の要望に対して、「これしか書かない」なんてことは自分じゃ嫌なの。ただ、それやり出すとキリがないんだよ。いくらでもできちゃうから。

沢城　音響監督の清水洋史さんが「聴くの間に合わない」っておっしゃってました。「こないだは250曲も書いちゃったよー」って言われて全然聴き終わらないって（笑）。

大野先生のようなジャズマン魂を

──最後にレコーディングを終えて、お互いの印象を伺わせてください。

沢城　私は音楽のことは専門ではないので「すごく素敵だと思います」とか「カッコいいと思います」みたいなコメントしか出てこないんですけど「私も大野先生のようにジャズマンの魂を持ってアフレコできたら」といつも思います。役者も限られた時間の中で集まってシーンを作らないといけないということは、つまり1人ひとりが一流のジャズマンじゃないといけない。よく清水さんもおっしゃるんですけど、一流同士が集まっていれば相手から何が来ても返していけるんですよね。アフレコってクラシックみたいに「間違えないようにやる」ということではなく、ジャズ的にセッションのように作っていくものなんです。私の一番そばにいるジャズマンがこんなすごい方で恐縮してしまうんですけど、大野先生のように何が来ても返していける能力が自分にもあればなあって思います。

大野　そういう意味で言うと……僕が今やってるYuji Ohno ＆ Lupintic Sixというバンドでハモンドオルガンを担当している宮川純くんという若いミュージシャンがいるんだけど、彼は年のわりにイヤと言うほどうまいの。そのうまさも技術的なだけじゃなく、若い人だから当然新しい音楽をやっているんだけど、昔のことも大好きなの。沢城さんはある種そういう感じがする。さっきも言った通り、増山さんから不二子役を変わったとき、増山さんとほとんど同じように聞こえたわけ。ものすごくリスペクトがあるから、ちゃんと引き継いでファンの人にショックを与えない感じでスッとやってて。

沢城　超リスペクトです……。

大野　もちろんちょっとは違うんだけど。で、今はもう完璧に沢城アバウトイコール。

沢城　本当にちょっとずつですけどね。今まで、本当に増山さんへの憧れだけで来ました。「ああいうふうにできたらいいのにな」と思っているのにできないなって。でもどこか開き直れたのは「みんないろいろ文句はあると思うけれども、私が世界で一番、不二子ちゃんが増山さんじゃなくなることが悲しいから」って思ったんです。だからいいかなって。私、増山さんの不二子さんが大好きなんです！

大野　孫がいるくらいの年齢で不二子やってた人はいないから。あの人はいまだに気持ち的には不二子なんだよね。たぶん自分では気が付いていないけど。キャラクターっていうのはきっと声優と一緒に育っていって、いつの間にか合体していっちゃう。そういうものなんだよね。

沢城　そうかもしれないですね。私も不二子さんでいると明るくかわいくいることが現場でどうして求められるんです。私もいつか合体できるように、目標を高く持ちます。